1970年代の犯罪映画|映画スクラップブック


1970年代の犯罪映画(8本)

2022/02/10

ゲッタウェイ

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THE GETAWAY
1972年(日本公開:1973年03月)
サム・ペキンパー スティーヴ・マックィーン アリ・マッグロー ベン・ジョンソン アル・レッティエリ サリー・ストラザース スリム・ピケンズ ボー・ホプキンス リチャード・ブライト ジャック・ドッドソン ダブ・テイラー ロイ・ジェンソン ジョン・ブリソン

刑期の短縮と交換に銀行を襲う取引をしたスティーヴ・マックィーンが、仲間の裏切りにあいながら、奪った50万ドルを持って妻アリ・マッグローと一緒にメキシコへ逃げる。

ゲッタウェイ

ショットガン、どっかんどっかん、マシンガン、だだだだだ!
マックィーン・オン・ステージ! かっこいいぞ!

ゲッタウェイ

逃避行する主人公がラストで死なない犯罪映画。 これまでの犯罪映画は犯人のどちらかは死んで(または奪った大金が消えて)悲劇的結末になるのがお約束だったのに。
(喜劇でもないのに)これって反則じゃない?

ゲッタウェイ

脚本家(ウォルター・ヒル)と監督(サム・ペキンパー)と主役(スティーヴ・マックイーン)にゴチャゴチャあって、音楽もジェリー・フィールディングからクインシー・ジョーンズに差し替えられて、原作者(ジム・トンプソン)は映画に不満たらたらだったらしいけど。面白い映画に仕上がってるし、田舎の中学生も映画館でウヒャーって喜んで見てたよ。

70

2022/02/09

明日に処刑を…

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BOXCAR BERTHA
1972年(日本公開:1976年11月)
マーティン・スコセッシ バーバラ・ハーシー デヴィッド・キャラダイン バーニー・ケイシー バリー・プリマス ジョン・キャラダイン ヴィクター・アルゴ デヴィッド・R・オスターハウト ハリー・ノーサップ

飛行機乗りの父親を事故で失い天涯孤独となった少女バーバラ・ハーシーは、列車をタダ乗りしながら町から町へと放浪生活をおくっているうち、労働組合の活動家デヴィッド・キャラダインや、北部から流れてきたいかさま師バリー・プリマス、黒人バーニー・ケイシーとギャング団を結成、鉄道会社を襲撃する。

明日に処刑を

1970年代に低予算ギャング映画を量産していたロジャー・コーマンのAIP映画。
お蔵入りしていたが、カンヌでグランプリをとった「タクシー・ドライバー」がヒットしたことで 1976年11月に急遽公開された。
マーティン・スコセッシの商業映画デビュー作。

スコセッシのいきなり暴力描写が強烈。
デヴィッド・キャラダインが貨車に磔になるラスト。
聖書からの引用も入っている。スコセッシの映画はキリスト教のイメージがつきまとう。

明日に処刑を

バーバラ・ハーシーがすごくいい。撮影当時は22歳くらいだったろうか、少女の面影を残し自然な演技、純情、素朴、自然な裸体。どんな境遇にあっても明るい性格がかえって少女の哀れを誘う。
ギャングの首領と報道されるのを嫌って盗んだ金を組合に寄付する(「オペラハット」のゲイリー・クーパーみたいに)世間知らずで真面目なデヴィッド・キャラダインもいい。

明日に処刑を

70

2022/04/12

スティング

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THE STING
1973年(日本公開:1974年06月)
ジョージ・ロイ・ヒル ロバート・レッドフォード ポール・ニューマン ロバート・ショウ チャールズ・ダーニング アイリーン・ブレナン レイ・ウォルストン サリー・カークランド チャールズ・ディアコップ ダナ・エルカー ディミトラ・アーリス ロバート・アール・ジョーンズ エイヴォン・ロング ハロルド・グールド ジョン・ヘファーナン ジャック・キーホー ジェームズ・スローヤン アーチ・ジョンソン

師匠を殺された若い詐欺師がベテラン詐欺師と組んでマフィアのボス相手に大仕掛けのペテンを計画。執念深い刑事と殺し屋とFBIと食堂のお姉さんが絡んで二転三転の騙し合い。最後まで騙されていたのは俺だったりする面白映画。

ストーリーに直接関係しないけど、本番前に雨を降らせるのがじんわり効いている。FBIの登場と土砂降りの雨。雲行きが怪しくなってきたぞというメタファー効果。

スティング

本番前夜、レッドフォードとニューマンの静かな佇まいを交互にインサートして巧い。

スティング

このあたりで観客は主人公たちの心情に(騙されているとも知らずに)完全に同化している。BGMはスコット・ジョプリン「ソラス」のピアノ・ソロ。編曲はマーヴィン・ハムリッシュ。

スティング:チャールズ・ディアコップ&ロバート・レッドフォード&ロバート・ショウ

この時代のネクタイはナプキンのように幅が広い。衣装はイーディス・ヘッド。

高架を通過する電車の音など(デヴィッド・リンチみたいに)けっこうな音量で録られていたことに気づいた。アカデミー賞でも音響賞を受賞している。なるほど。
観るたび毎回違ったところに発見がある。

最後の競馬にロネガンが賭けた50万ドルは現在価値で950万ドル(日本円換算で約10億円)。

ラスト・ショットで主役のふたりがアイリス・アウトしたあとのエンドクレジットが気持ち良い。追い出し音楽は「ラグタイム・ダンス」。
あー愉しかった、面白かったという気分を満喫させてくれる素晴らしい選曲。
ロイ・ヒルは音楽の扱いがとても上手い。イェール大学で音楽を専攻、ヒンデミットに師事していたそうだ。なるほど。

登場人物を絵入りで紹介するメインタイトルは、1930年代ワーナー・ブラザース製作のギャング映画のスタイル。

スティング:ポール・ニューマン

スティング:ロバート・レッドフォード

スティング:ロバート・ショウ

スティング:チャールズ・ダーニング&レイ・ウォルストン

スティング:アイリーン・ブレナン&ハロルド・グールド

スティング:ジョン・ヘファーナン&ダナ・エルカー

スティング:ジャック・キーホー&ディミトラ・アーリス

75

2022/01/16

サブウェイ・パニック

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THE TAKING OF PELHAM ONE TWO THREE
1974年(日本公開:1975年02月)
ジョセフ・サージェント ウォルター・マッソー ロバート・ショウ マーティン・バルサム ヘクター・エリゾンド アール・ヒンドマン ディック・オニール ジェリー・スティラー トニー・ロバーツ リー・ウォレス

ニューヨークの地下鉄がジャックされ、犯人たちは乗客を人質に100万ドルの身代金を市に要求してくる。タイムリミット1時間。4人の犯人たちが地下鉄に乗り込む序盤から、ウォルター・マッソーのとぼけたアップで終わるラストまで、快速テンポで面白い。犯罪サスペンス映画の傑作。

サブウェイ・パニック

最初に登場したときからマーティン・バルサムはクシャミしている。クシャミで始まりクシャミに終わる映画。ロバート・ショウの最期も、感電するから危ないよって、ちゃんと前フリしてある。脚本の仕込みは用意周到。
身代金を運ぶパトカーが事故って転倒したり、咄嗟の機転で時間稼ぎしたり、あの手この手でサスペンスを盛り上げる。

地下鉄運行に携わる人たちと警察、働くおじさん(おばさんもいる)をしっかり描いているのが良い。脅迫されたニューヨーク市長の狼狽など、絶妙なタイミングでユーモラスな場面を入れて緩急の変化があるもの良い。
硬のロバート・ショウと柔のウォルター・マッソー、キャスティングが上手い。

サブウェイ・パニック

「レザボア・ドッグス」でタランティーノがギャングたちの呼び名を色名にしていたのは、本作を真似たのか。チームワークを乱す奴を混ぜてサスペンスを作っているのも、きっとそうだ。

ロバート・ショウ(Mr.ブルー)
マーティン・バルサム(Mr.グリーン)
ヘクター・エリゾンド(Mr.グレイ)
アール・ヒンドマン(Mr.ブラウン)

音楽がかっこいい。「夜の大捜査線」「バンク・ジャック」のクインシー・ジョーンズ、「ブリット」「ダーティハリー」のラロ・シフリン、「フレンチ・コネクション」のドン・エリス、そして本作のデヴィッド・シャイア。70年代サスペンス映画の音楽はジャズのビートがかっこいい。

東京の地下鉄の経営者が、制御室に視察に来ている。

サブウェイ・パニック

左側の男性は戸浦六宏さんに似ているが別人。
「ティファニーで朝食を」のミスター・ユニオシとか、「ファール・プレイ」の「コジャック、バン、バン」のタクシー客とか、「ブレードランナー」の屋台の親父とか、アメリカ映画に出てくる日本人は面白い人が多い。

70

2022/02/11

ダーティ・メリー クレイジー・ラリー

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DIRTY MARY, CRAZY LARRY
1974年(日本公開:1974年10月)
ジョン・ハフ ピーター・フォンダ スーザン・ジョージ アダム・ロアーク ヴィク・モロー ケネス・トビー ユージン・ダニエルズ リン・ボーデン ロディ・マクドウォール

レース・ドライバーのラリー(ピーター・フォンダ)は相棒の整備士(アダム・ロアーク)と組んでスーパーマーケットの金庫から大金を強奪。逃走するシボレー・インパラにあばずれ娘スーザン・ジョージが乗り込んできたことから計画に狂いがでて、警察の執拗な追跡が始まる。

ダーティ・メリー クレイジー・ラリー

ピーター・フォンダもアダム・ロアークも、自己中心的でレースのことしか頭にない。道徳心・公共心が欠落している。バザールで盗んだ黄色いダッジ・チャージャーに大金を置いたまま時間稼ぎにプール・バーに入ったりして、金に執着している様子もない。逃げ回ることを楽しんでいて焦りは感じられない。刹那的な悲壮感は皆無。単純にアホなだけなのか。

ダーティ・メリー クレイジー・ラリー

万引事件で仮保釈中のスーザン・ジョージも、これといって目的があるわけでもなく、(面白そうだからという理由だけで)成り行きで同乗している。スーザン・ジョージに(「明日に処刑を…」のバーバラ・ハーシーみたいな)愛嬌があったら、彼女のキャラはぐっと興味深いものになっていただろう。

ダーティ・メリー クレイジー・ラリー

事件を担当するフランクリン部長(ヴィック・モロー)が、上司の声に耳を貸さず制服とバッヂを嫌ってるあたり、ベトナム戦争時代の反体制思考が匂う。

スーパーのマネージャー(ロディ・マクドウォール:なぜかタイトルにクレジットされていない)の妻と娘を人質に、銃やナイフを使わず大金を奪う手口は面白い。
そのあとのストーリーは、警察無線を盗聴して捜査網の裏をかき、ひたすら逃げるのみ。

全編オール・ロケのカーチェイスが最大の見どころ。

排ガス規制前の恐竜みたいなアメ車が走るたびに砂煙あげてドリフト。バリケートの壁を突き破り、加速して跳ね橋をジャンプ。次々とクラッシュするパトカー。ヴィック・モローのヘリコプターとダッジ・チャージャーのチェイスがユニークかつスリリング。
スタントマンの命がけの本気仕事に感動。追いかけるカメラも大変だったと思います。

あっけないラストは、「バニシング・ポイント」(あるいは「あの胸にもう一度」)の真似かどうかは分からないけど、当時の映画にはありがちな結末。

タイトルバックに流れるフォークソングも 70年代風で懐かしいサウンド。

60

2022/02/10

続・激突! カージャック

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THE SUGARLAND EXPRESS
1974年(日本公開:1974年06月)
スティーヴン・スピルバーグ ゴールディ・ホーン ウィリアム・アザートン ベン・ジョンソン マイケル・サックス グレゴリー・ウォルコット スティーヴ・カナリー

裁判所命令で養育権を取り上げられた若い母親ゴールディ・ホーンは、テキサス州の矯正施設に収容されていた夫ウィリアム・アザートンを脱獄させ、逃走中にパトカーをジャック。警官を人質に幼い息子のもとへと向かう。1969年に実際に起きた事件を題材にしたマシュー・ロビンス&ハル・バーウッドのオリジナル脚本。

続・激突! カージャック

ジャックされたパトカーの後を 200台のパトカーがぞろぞろ付いて行く流れが滑稽。

続・激突! カージャック

2名の狙撃手が派遣されてきたあたりから、悲劇的な結末が予感される。
長閑な逃亡劇が一転して一触即発のパニックに発展しそうなサスペンス。

続・激突! カージャック

無邪気でおバカで可愛いキャラはゴールディ・ホーンに誂えたかのような適役。
気が弱く優柔不断なウィリアム・アザートン、真面目で優しい人質警官マイケル・サックスも好演。

続・激突! カージャック

なんといってもパトロール隊を指揮する警部ベン・ジョンソンがいい。流血を避けて事件の解決を模索する苦渋の姿は「テルマ&ルイーズ」のハーヴェイ・カイテルも良かった。

ビジュアル面で語られることが多いスピルバーグだけど、役者の使い方が抜群に上手い。キャラの立て方が(これが商業映画デビューというのに)黄金時代のハリウッド職人監督なみの腕前。

目的地が「シュガーランド」というのもいい。

強いていえば野次馬と法律が悪役。
犯人を撃ち殺して名声を得ようとするバカは「ジョーズ」で賞金目当てに鮫狩りに出る奴らと同類。沿道で激励の言葉をかけプレゼントを投げ込む群衆はその裏返し。

続・激突! カージャック

車のクラッシュ・シーンやラストの余韻は「激突!」に似ているものの、今後再映されるようなことがあれば「シュガーランド・エクスプレス」に改題されるんだろうな。

65

2022/01/27

狼たちの午後

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DOG DAY AFTERNOON
1976年(日本公開:1976年03月)
シドニー・ルメット アル・パチーノ ジョン・カザール チャールズ・ダーニング ジェームズ・ブロデリック クリス・サランドン ペニー・アレン キャロル・ケイン サリー・ボイヤー ランス・ヘンリクセン

1972年8月22日、14時57分。気温36度。
茹だるように暑いブルックリンの昼下がり。
三番街にあるチェイス・マンハッタン銀行支店の閉店時刻ギリギリに、3人の男が強盗に入る。30分で片付く仕事のはずだったが、男の一人は犯行直後にビビって遁走。防犯カメラに目隠しのスプレーをかけようにも(背が低いから届かず)ぴょんぴょん飛び跳ね、現金は本社に送られた後で金庫に残されていたのは僅か1100ドル。がっかりする間もなく警察から電話が入って自分たちが包囲されていることを知る。

狼たちの午後

ニューヨーク市警とFBI捜査官、狙撃班を含む200人超の警官隊。そのうしろには野次馬の人だかり。上空には市警のパトロール・ヘリとTV局の報道ヘリが飛び交っている。状況を知った素人強盗は人質たちの前で頭を抱えへたり込んでしまう。まことに情けない。アッティカ刑務所暴動事件の直後で、警察の対応も及び腰。

実話を基に作られた犯罪喜劇。

狼たちの午後

説得する市警の刑事、人質たちとの奇妙な連帯感、野次馬の前でヒーロー気取りの犯人、電話で突撃インタビューするテレビ局、ゲイの女房との愛情のすれ違い、機に乗じてアピール・デモを始めるゲイの団体。ニューヨーク市警とFBIの確執、TVメディアと大衆の煽り、無教養で思いやりのない家族、ベトナム戦争後のアメリカ社会、多彩な登場人物たち。テーマはコミュニケーションのリアリズム。
ラストシーンの虚無感、やるせなさは例えようがない。

狼たちの午後

「逃亡先はどこの国に行きたい?」
「ワイオミング」
「ワイオミングは外国じゃないよ」

シドニー・ルメットの演出に隙はない。様々なエピソードを盛り込みながら、室内と屋外の切り替えを巧みに構成、無駄のない素晴らしい脚本。アル・パチーノ、ジョン・カザール、チャールズ・ダーニング、クリス・サランドン、端役にいたるまで、全員が演技賞に値する好演。

狼たちの午後

75

2022/02/12

トランザム7000

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SMOKEY AND THE BANDIT
1977年(日本公開:1977年10月)
ハル・ニーダム バート・レイノルズ サリー・フィールド ジャッキー・グリーソン ポール・ウィリアムズ ジェリー・リード マイク・ヘンリー パット・マコーミック アルフィー・ワイズ

金持ちの道楽親子(パット・マコーミックとポール・ウィリアムス)から 28時間以内に州外持ち出し禁止のビールを密輸する賭けを提案されたトラック野郎(バート・レイノルズ)は報酬8万ドル目がくらみ、相棒(ジェリー・リード)を誘ってハイウェイを爆走。
無事何事もなく荷を積んで戻る途中、結婚式から逃げてきた花嫁(サリー・フィールド)を拾ったことで、テキサスの保安官親子(ジャッキー・グリーソンとマイク・ヘンリー)から執拗に追われる。

トランザム7000

砂煙あげてドリフトするトランザム・ファイアーバード、次々とクラッシュする間抜けなパトカー、トラック仲間の友情援護、ストーリーに関係のない酒場の喧嘩、バート・レイノルズとサリー・フィールドのどうでもいいキス・シーン、軽快なカントリー・ミュージック、ジャッキー・グリーソンのぬるいギャグ。

トランザム7000

スタントマン出身のハル・ニーダムが原案・初監督のドタバタ・コメディ。

21世紀の映画ファンは、なんでこんな映画が全米大ヒットしたのか理解できないだろうな。好評につき続編も製作されたんだぜ。

トランザム7000

60

映画採点基準

80点 オールタイムベストテン候補(2本)
75点 年間ベストワン候補(18本)
70点 年間ベストテン候補(83本)
65点 上出来・個人的嗜好(78本)
60点 水準作(77本)
55点以下 このサイトでは扱いません

個人の備忘録としての感想メモ&採点
オススメ度ではありません