ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 作品19
プロコフィエフの「ヴァイオリン協奏曲第1番」は、1915年に着手され、しばらく放置されていたが、1917年(26歳のとき)にオーケストレーションが完成。同じ年に「交響曲第1番:古典」や「ピアノ協奏曲第3番」も書いており、アメリカからヨーロッパに渡って才気煥発な時期だったことがうかがえる。
「ヴァイオリン協奏曲第1番」は、それまでの尖った作風が良い意味でこなれてきており、的確で見通しのよい整った構造になっている。3つの楽章は通常のテンポ配置とは逆に、緩-急-緩の順に構成され、第2楽章のスケルツォには、バレエ音楽「ロメオとジュリエット」でもみられた乾いたユーモア性も出ている。第1楽章の主題が第3楽章で再現されるプロセスは、フランクなどの循環形式を踏襲した20世紀スタイルか。抒情的な側面と野性味が混在したプロコフィエフらしい協奏曲。
作曲年代:1915年に着手 1917年 ペトログラードで完成
初演:1923年10月18日 パリにて
クーセヴィツキー指揮 マルセル・ダリューのヴァイオリン独奏
楽器編成:独奏ヴァイオリン、ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、チューバ、ティンパニ、小太鼓、タンバリン、ハープ、弦5部
楽曲構成:
第1楽章 アンダンテ
第2楽章 スケルツォ
第3楽章 モデラートのフィナーレ
演奏時間:約22分
プロコフィエフ&ストラヴィンスキー:ヴァイオリン協奏曲
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
1. プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 1975年 ステレオ録音 (Decca) 輸入盤 |
研ぎ澄まされたクールな音色のチョン・キョンファ。切れ味鋭いテクニックで20世紀初頭のモダンな感覚を再現。全力投球で情熱をほとばしらせるキョンファが最大の魅力だが、チャイコフスキー&シベリウスでも共演していたプレヴィンの気心知れたサポートも、彼女の方向性にジャスト・マッチしていて素晴らしい。
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲
イツァーク・パールマン(ヴァイオリン) ピンカス・ズーカーマン(ヴァイオリン)-3
1. ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 op.19 1980年 デジタル録音 (EMI) 輸入盤 |
ゆとりのテクニックと陽性の音色、若々しく瑞々しいパールマンのプロコフィエフ。エキセントリックになることを避け、率直に演奏することでロマンティックな美しさが出た。作曲当時のプロコフィエフが20代の青年であったことを思い出させる、爽やかな演奏。
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲&ソナタ
ヨゼフ・シゲティ(ヴァイオリン) アルトゥール・バルサム(ピアノ)-2,3
1. ヴァイオリン協奏曲第1番二長調 op.19 1960年(1)、1959年 ステレオ録音 (Philips) |
ヨゼフ・シゲティは、フーバイに師事し、ブゾーニやヨアヒムからも強い影響を受けたハンガリー出身のヴァイオリニスト。初演の翌年1924年に協奏曲第1番をプラハで演奏。その後も機会あるごとに世界各地で演奏し続け、プロコフィエフの第一人者となった。第1番の録音はSP時代から何度も行っているが、今回は1960年のステレオ盤を紹介。すでに技巧に衰えが感じられるものの、妥協のない厳格なアーティキュレーションは健在。この演奏に興味を持たれた方は、最盛期にビーチャム指揮ロンドン交響楽団と共演した1935年SP録音盤も聴いてみてください。