原題に「ウィリアム・シェイクスピアの」とあるように、原作戯曲に忠実な映画化。
中米の架空都市ヴェローナ・ビーチ(メキシコシティでロケしている)を舞台に、人物がアロハシャツを着ていたり、武器が拳銃であったり、現代風を装っているが台詞と役名は原作をそのまま用いている。
このようなやり方は、以前から演劇では普通におこなわれていたが、映画では珍しい。非日常空間が最初から約束されている舞台演劇と、リアルな写実が前提の映画との違いか。
どうせディカプリオ人気に便乗したアイドル映画だろうと軽くみていたのだが、なかなかどうして、立派なシェイクスピア映画に仕上がっていたので感心した。
現代にあわせて原作を妙に改変していないのが良い。現代風の絵づらと古典的なセリフのギャップが新鮮だ。シェイクスピア・ファンからは歓迎されると思う。
レオナルド・ディカプリオ(ロミオ)とクレア・デインズ(ジュリエット)が、初々しくて可愛い。二人が出会う水槽越しの場面は幻想をおびて美しかった。
敵対しているモンタギューとキャピュレットが、縄張り争いをしているマフィア一家というのも面白い設定変更。血の気の多い手下がやたら小競り合いしている状況が自然と出来る。チンピラ同士の喧嘩は、シャープなカット捌きでかっこよく撮ってある。
キャピュレット親分を演じているのはブライアン・デネヒー。ふてぶてしい悪役を期待したが、「ランボー」や「シルバラード」のころに比べるとずいぶん丸くなっていた。
対するモンタギュー親分は「グッドフェローズ」のポール・ソルヴィノ。
マフィアは行政や裁判所と結託している部分があって、警察はアンタッチャブル。ロミオが殺人を犯しても街を出てしまえば管区外、それ以上追ってこない。つまり、16世紀のイタリア貴族と現代のマフィアは同じ穴のムジナなんだね。
原色を強調した映像、ヒップでホップな音楽が新鮮でいい。短いショットの挿入、コマ落としや空撮などのギミックが多少ウザったいものの、古い酒を新しい革袋に入れて成功している。
映画公開時に、音響効果の女性がやたら褒めていたのを思い出した。
いまごろ観たりしてごめんよ。
点