真昼の決闘|映画スクラップブック


2020/04/27

真昼の決闘

真昼の決闘|soe006 映画スクラップブック
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HIGH NOON
1952年(日本公開:1952年09月)
フレッド・ジンネマン ゲイリー・クーパー グレイス・ケリー トーマス・ミッチェル ロイド・ブリッジス ケティ・フラド リー・ヴァン・クリーフ

西部の小さな町に釈放された無法者が帰ってくる。駅で待っている仲間。彼らの狙いは、結婚式を挙げたばかりの保安官(ゲイリー・クーパー)への復讐。住民の応援を得られず孤立無援の保安官は、4対1の不利な状況で決闘に臨む。
ハリウッドの赤狩り騒動とともに語られることが多い、スタンリー・クレーマー&フレッド・ジンネマンの異色西部劇。

ジョン・W・カニンガムの「ブリキの星章」(わずか2ページの雑誌掲載の小説)が原作だが、カール・フォアマンの脚色が抜群に良かった。マッカーシーの公聴会で鍛えられた、フォアマンの不屈の精神がよく反映されていると思う。本作のあとに彼が書いた「戦場にかける橋」などと合わせてみるに、頑固で屈強な侠気のある人なんだろう。
いちばん最初に町を逃げ出すのが判事(オット・クルーガー)だったというところに、公聴会で虐められたフォアマンの皮肉がある。

町民たちの思惑が、テンポよく簡潔に説明されている。演じる役者たちも、町長(トーマス・ミッチェル)以下、それぞれに適役好演。特に保安官助手(ロイド・ブリッジス)が複雑な感情変化をみせて巧い。

保安官が応援要請に町を歩き回る過程で、彼がそれほど町民に好かれていなかったこと、女性関係にだらしない男であったことが分かってくる。
無法者(アイアン・マクドナルド)の復讐心は、逮捕・監獄されたことへの恨みだが、その裏には女絡みの因縁もある。そのことは酒場のオーナー(ケティ・フラド)が店を売って、町を逃げようとしていることから分かる。
無法者を刑務所送りにしたあとケティ・フラドとくっついた保安官が、結婚相手に選んだのは白人のグレース・ケリー。これは人種差別か職業差別か。

4対1の決闘場面を売り物にしているような邦題だが、この映画のほんとうの見所は、決闘が始まる前までにある。

そもそも今回の決闘は、町の治安を守るためとか、どうにも許せない悪を断罪すべし、というような正義感が動機ではないからね。まず、刑務所送りになった男の私怨(たぶん女絡み)の復讐があり、その災難から逃れる手段として、保安官は決闘を選択している。
この場を逃がれても、奴らは執念深く追ってくるだろう。どこへ逃げても、いつ襲ってくるかわからない恐怖に怯えて生きていくのはごめんだ。いまここでハッキリと決着(カタ)をつけてやろう。幸いなことに胸には保安官のバッヂがある。「正義」とか「町の治安」とか言って呼びかければ、町民たちは応援に駆けつけてくれる。みんなが私を味方してくれる(はずだ)。町民が一致団結すれば、荒くれ者の4人くらい、あっさり片付けられる。奴らを皆殺しにして、後腐れなくサッパリしたら、綺麗な花嫁と気持ちよく新婚旅行に行こうぞ。とか、甘い考えで決闘を選択しちゃったんだよね。

苦渋の表情に現実味があると言えるものの、主演のクーパー(当時51歳くらい)が、やけに老け顔で。ひたすら助けを求めて町を歩き回り、断られて絶望し、死の恐怖に怯え、机に突っ伏して泣く。いざ決闘となると、建物の陰から忍び寄り、相手の背後から銃を撃ったりと卑怯千万。ヒーローにあるまじき行為が西部劇ファンの顰蹙をかった。
だからこそ、それまでの娯楽西部劇を凌駕したリアリズム・ドラマとして高く評価されている面もあるのだけど。

これを観たハワード・ホークスが頭にきて、痛快西部劇の傑作「リオ・ブラボー」を撮ったという逸話も残っている。ホークスがほんとうに憤慨していたかどうか、分からんのだけど。

上映時間と劇の経過時間をシンクロさせた構成・編集(それほど正確にシンクロしているわけではないし、さほど緊迫感も感じられない)、テックス・リッターの主題歌、若妻を演じたグレース・ケリーの美貌など、話題に事欠かない映画ではあります。

映画の最初の場面に出てくるガンマンはリー・ヴァン・クリーフ。鋭い眼差しの精悍なルックス、スラリと伸びた長い脚、悪役ながら格好いい。のちにセルジオ・レオーネ監督の「夕陽のガンマン」でマカロニ西部劇のスターとなる。そのときの相棒役のクリント・イーストウッドがハリウッドに戻って主演したのが「ダーティハリー」。ラストでキャラハン刑事が投げ捨てるバッヂは、本作のモノマネかオマージュか。

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