パリ北部。サンマルタン運河に架かった鉄橋を、若い男女が寄り添いながらやって来る。二人は夕暮れの河畔のベンチで何事か囁き、人生の吹き溜まりのような安宿に部屋をとり、心中を図るが失敗。一命をとりとめた女(アナベラ)は病院に運ばれ、男(ジャン=ピエール・オーモン)はいったん逃げたものの、走る列車に身投げしようとしてそれも出来ず、自首して投獄される。
傷が癒えて退院した女は、宿の主人夫婦の温情によりホテルで働くようになり、周辺の人々といろいろあった後、男は釈放されて戻ってくる。
革命記念日(巴里祭)の翌早朝、二人は河畔のベンチで何事か囁き、サンマルタン運河に架かった鉄橋を渡って何処かへと去っていく。
心中ものって好きじゃないんだよ、ウジウジしてて。太宰治も大嫌いだし。
心中用にピストル買う金が残ってたのなら、それで彼女になんか美味いもの食わせてやれよ。死にたいなら誰にも見つからない山奥行って一人で餓死しろ。若くて綺麗な女を道連れにすんな、ほかの男の幸せのために残しとけ、ボケ!
過去に傷を持つヤクザな男(ルイ・ジューヴェ)も情けない。若い女にメロメロになって、身の上話で同情をひき、二人でマルセイユに逃避行しようとするもドタキャンされ、挙げ句の果てに自暴自棄で命を落とす(間接的な自殺だな)。よくまあこんな惨めったらしい男が裏社会で生きてこられたものだ。貢いでくれている情婦(アルレッティ)の顔を痣が残るほど殴ってるし、このクズ野郎が!
以上のように本筋のストーリーは甘っちょろくてまったく気に入らないのだが、映画自体の出来はいい。
運河とホテルのセットは素晴らしく、北ホテルを取り巻く庶民の人物描写、運河を行き来する船、架道橋、河川敷で遊ぶ子供たちなど、マルセル・カルネらしいまろやかな雰囲気を持った映画ではある。
点