ペシミスティックな皮肉屋ジョン・シュレシンジャーが、イギリス自然主義作家トーマス・ハーディの大河ロマンス小説を映画化。70mmパナビジョン、170分の文芸大作。
撮影は「アラビアのロレンス」のニコラス・ローグ。パノラマ風に撮影された田園風景が荒涼として美しい。主演は「ダーリング」に続いてジュリー・クリスティ。
19世紀、イングランド東部エセックス地方。
叔父の遺産で農園を引き継いだヒロイン(クリスティ)が、仕事熱心で実直な働き者(アラン・ベイツ)の求婚を「嫌いじゃないけど、愛していないから」と断り、裕福で教養ありそうな農場経営者(ピーター・フィンチ)に求婚されるものの返事を引き延ばし、女中(プルネラ・ランサム)と関係していた優柔不断な軍曹(テレンス・スタンプ)に一目惚れして結婚。
新婚生活はうまくいかず、軍曹は酒と博打で放蕩三昧。妊娠していた女中は嬰児とともに死に、そのショックで軍曹は入水自殺に見せかけて失踪。初老の農場経営者が再び言い寄ってくるが、なまくら返事しているうちに結婚の約束をさせられてしまう。
その婚約披露の夜に死んだはずの軍曹が戻ってきて、錯乱した農場経営者は軍曹を射殺。
英国の農場暮らしに見切りをつけ、アメリカに渡ろうとしていた農夫を引き止め、彼と再婚しておしまい。
サーカス小屋で正体を隠しながらの道化芝居は面白かったが、軍曹が剣の腕前を女に披露する場面のあまりの陳腐さに呆れた。ジョン・シュレシンジャーって、こんなにヘタだったっけ? むかし(40年以上前に)観たときはそこそこ感銘した記憶があったのだが、いま見返すと無駄に長ったらしい。
未熟なくせに自立心だけは強いヒロインに共感するところはなく、ありきたりなステレオタイプに振り分けられた男たちも魅力に乏しい。無邪気に恋して死んでしまった薄幸の女中がひたすら可哀想だった。
点