海の牙|映画スクラップブック


2020/06/13

海の牙

海の牙
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LES MAUDITS
1946年(日本公開:1948年11月)
ルネ・クレマン アンリ・ヴィダル ポール・ベルナール ヨー・デスト ミシェル・オークレール クローネ・フォルト フォスコ・ジャケッティ フロランス・マリーン アンヌ・カンピオン

1945年春。ドイツ軍がフランスから撤退。疎開していた市民が非占領区から戻ってきたころ。オスロ基地から南米目指してドイツの潜水艦が出港した。

乗艦しているのは、
ドイツ国防省のフォン・ハウザー将軍(クローネ・フォルト)
国家秘密警察幹部のフォルスター(ヨー・デスト)
その部下で恋人のウイリー(ミシェル・オークレール)
イタリア人の実業家ガローシ(フォスコ・ジャケッティ)
その妻で将軍の愛人ヒルデ(フロランス・マリーン)
ナチ党員のフランス人記者クーテュリェ(ポール・ベルナール)
ノルウェーの学者エリックセン(ルシアン・ヘクター)
その娘イングリット(アンヌ・カンピオン)
艦長(ジャン・ディディエ)とその部下たち

彼らの目的は、崩落の一途をたどるナチスドイツを、南米のどこかで再興させること。彼らはその先発隊、準備工作要員だった。
潜水艦は出港してすぐに連合国軍駆逐艦の攻撃を受ける。ヒルデは昏倒し意識不明。軍医が乗っていなかったので、潜水艦をロワイヤン沖に停泊させ、街の医師ギベール(アンリ・ヴィダル)を拉致して乗艦させる。ヒルデの治療が終わると口封じに殺される危険を察知したギベールは、乗務員の伝染病など虚偽の診断をして延命をはかり、脱出の機をうかがう。

ラジオからベルリン陥落、ヒトラー死亡が報じられると艦内に不穏な空気が漂い始める。妻に愛情がないと知った実業家ガローシは甲板から投身自殺。
燃料が残り少なくなったところで将軍とゲシュタポが反目、艦長は色恋沙汰で判断が鈍った将軍を見限り、主導権はフォルスターに移る。
艦は燃料等の補給物資を求めて協力工作員がいる街の海岸に停泊。補給要請の使者としてウイリーたちが上陸。
現地工作員のラルガ(マルセル・ダリオ)と接触するが、ヒトラー死亡でナチス再興の夢が絶たれたいま、ラルガはのらりくらりと協力を拒み、ウイリーに殺される。

燃料不足のまま潜水艦は出港。隠してあったボートで脱走を試みたフランス人記者は、フォルスターに見つかって射殺される。運良く付近にいた輸送船から給油を受けるが、その際に乗組員たちは終戦の事実を知らされる。

終戦で軍の命令が無効となり、潜水艦の乗組員たちは我先にと輸送船へと乗り移る。その中にはハウザー将軍もいた。将軍を慕ってあとを追ったヒルデは、縄梯子を滑り落ち、潜水艦と輸送船の船体に挟まれて死ぬ。
ナチ狂信者のフォルスターと艦長は潜水艦に残り、離れていく輸送船を魚雷で撃沈。沈没する船から逃れボートに避難する自軍の兵隊たちを、機関銃で皆殺しにする。潜水艦に残っていたウイリーは愛憎の楔を外してフォルスターを殺し、イングリットたちと救命ボートで脱出。

燃料のない潜水艦に独り残されたギベールは、南大西洋を漂流、十二日後に英国の船に発見され救出される。ギベールは漂流中に事の顛末をノートに記録していた。
その表紙につけられたタイトルは「呪われた者たち(原題:LES MAUDITS)」。

冷徹なリアリズム、強烈なサスペンス。
拉致された医師と学者の娘にロマンスがあるかと予想したが、キッパリ裏切られた。甘い感傷は一切ない。ハードボイルドな映画だった。

戦闘場面などに記録映像を流用しているが、潜水艦はホンモノを使って撮影している。
拉致された医師がハッチから降りて怪我人がいる船室に向かうまでを、ドリーで追随してワンカット撮影。これは後年ウォルフガング・ペーターゼンが監督した「U・ボート」の先駆けだろう。
ゲシュタポが仲間を機関銃で皆殺しにするクライマックスは、オリヴァー・ストーンの「プラトーン」。艦内での愛憎、主導権争い、反目、抜け駆け、疑心暗鬼、裏切りなど、人間関係がもたらす緊迫感はクエンティン・タランティーノの世界だ。だから、いま観てもスリリングで面白い。
「太陽がいっぱい」(1960年)の成功によってスリラー映画に傾倒したのだと(勝手に)思い込んでいたが、とんでもない、ルネ・クレマンはデビュー間もないときからサスペンスの達人だった。

アラ探しってわけじゃないけど、気になるのでメモしておく。
タイトルバックは事件の一部始終を誰かが執筆している映像で、それは医師ギベールの回想であったことがラストで分かるのだが……それだったら拉致される以前、オスロを出港するところから描かれているのはおかしい。誰か別の生存者による手記かと、見ていて混乱してしまった。
南米の現地工作員を殺害するくだりも、彼は艦に残っていて事件を目撃していない。ヒロイックな活躍をするでもなし、こうなると、回想形式にした意味がない。
ギベールが非占領区から戦災でボロボロになった我が家に帰ってくるファーストシーンは、必要なかったと思う。

もうひとつ気がかりなのは、艦で飼われていた、あの可愛い子猫の行方。

70

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