眼下の敵|映画スクラップブック


2020/06/14

眼下の敵

眼下の敵
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THE ENEMY BELOW
1957年(日本公開:1958年01月)
ディック・パウエル ロバート・ミッチャム クルト・ユルゲンス アル・ヘディソン セオドア・バイケル ラッセル・コリンズ ビフ・エリオット クルト・クリューガー

イギリス海軍中佐D・A・レイナーが自分の体験にもとづいて書いた小説の映画化。
第二次大戦中の南大西洋。米軍駆逐艦と独軍潜水艦の息詰まる戦いを、ただそれだけを描いて大成功。
歌手から俳優に転職したもののパッとせず、映画監督になっても「或る夜の出来事」のリメイクとか、パッとしない映画しか撮っていないディック・パウエルの、一世一代、ホームラン級傑作戦争映画。

甘いマスクのロバート・ミッチャム(商船の船長をしていた民間出身)と強面(こわもて)のクルト・ユルゲンス(第一次世界大戦からのベテラン軍人)。対照的なキャラクター設定で、どちらにも華を持たせ、対等に描いている。
ユルゲンスをナチス・ヒトラー嫌いにしたのが功を奏した。アメリカ対ナチスドイツのナショナリズム対決の様相は薄れ、駆逐艦対潜水艦の、指揮官対指揮官、男対男。戦闘をスポーツマン精神に則ったゲーム感覚でフェアに描いたのが、いまでも色褪せない要因だと思う。

着任してからずっと艦長室に閉じこもってばかりのマレル艦長(ロバート・ミッチャム)に不満の声をもらす水兵たちのやりとりがあって、序盤こそのんびりムードだが、レーダーが敵潜水艦の影を捉えてからは、丁々発止の心理戦・攻防戦が、最後まで続く。
海底に潜んで防戦に耐えていた潜水艦が、レコードの歌声とともに捨て身の反撃に出るあたりからは一気呵成、両艦の艦長が言葉を交わすラストまで、ダレることなく見入ってしまう。

アメリカ国防省と海軍の全面協力を得て、駆逐艦も潜水艦もホンモノ。一部記録映像も使われているが、シネマスコープいっぱいに炸裂する爆雷の水柱は壮観だ。

この映画、出演者は男ばかり。女性はひとりも出てこない(エキストラでさえも出ない)。女々しい男も出てこない。みんな男。それがいい。余計な添加物は一切入っていない。

戦争映画はかっこいい。戦争映画は面白い。

「ディア・ハンター」や「地獄の黙示録」が出る前は、戦争映画は娯楽だった。男の子は日曜洋画劇場やゴールデン洋画劇場で戦争映画が放送されるのを楽しみに待っていた。
いまの子どもたちは、「戦争映画は面白い!」なんて言ったら、親や先生から怒られるのか? 可哀想だな。
「戦争は悲惨です」なんてことは、バカにだって言える。
そんな悲惨な状況の中で、友情や信頼や責任や勇気を持てる強さ、プライドやリスペクトといった男の子に必要な精神の在り方を教えてくれていたのが戦争映画だったのに。
いまからでも遅くない。かっこいい男になりたいなら(悲惨でない)戦争映画を観なさい。

この翌年(1958年に)ディック・パウエルは同じロバート・ミッチャム主演で「追撃機」を監督。「眼下の敵」の空軍版を狙っていたのかいなかったのか、戦争なのかロマンスなのか、どっちつかずのパッとしない遺作となった。

70

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75点 年間ベストワン候補
70点 年間ベストテン候補
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