軍事演習を命じられた旧式ディーゼル潜水艦USSスティングレイ号に、変人ぞろいの落ちこぼれ乗組員が集合、最新型原子力潜水艦の追跡をかわし目的地の湾に潜入、囮の戦艦を撃沈、成功を収めるまでを描いた軍隊コメディ。
小学校低学年向けの底の浅いギャグと、ご都合主義的予定調和のストーリー。
潜水艦喜劇としては、ピンクに塗装され女性軍人もわんさか乗艦するブレイク・エドワーズの「ペティコート作戦」(1959年)より数段劣る。はみ出し者の寄せ集め部隊が軍事演習でエリート部隊を出し抜くカタルシスでは、ロバート・アルドリッチの「特攻大作戦」(1967年)のほうが(役者が揃っているだけに)数倍おもしろく痛快だ。
艦長役のケルシー・グラマーは、酔った勢いでちんぽに刺青をいれるバカにみえないし、かといってカリスマ性のある優秀な軍人にもみえない。ライバル艦長のウィリアム・H・メイシーは、いつもの気弱で優柔不断なウィリアム・H・メイシー。機関士のハリー・ディーン・スタントンも、「エイリアン」のときと同じ油染みと無精髭のハリー・ディーン・スタントン。
可哀想なのは敵役のブルース・ダーンで、シリアスに徹して憎まれ役を演じてよいものか、作風にあわせてコミカルに演ったらよいのか分からず終いで、その迷いが表情にもろに出てしまった。これは演出が悪い。
邦題が1957年の「潜望鏡を上げろ」(原題は「UP PERISCOPE」、本作は「DOWN PERISCOPE」)と同じで紛らわしいと思ったのか、公開時にコケた過去を隠蔽したかったのか、ビデオは「イン・ザ・ネイビー」と改題して販売されている。ヴィレッジ・ピープルのビデオクリップをエンドクレジットに使っているからだろう。20年前の懐メロ・ディスコ音楽を使用するくらい時代のセンスが欠落したポンコツ・コメディ。
ソナー係にクジラのマネを要求するジェスチャー・クイズとか、謀反を起こした副官を処罰する海賊ごっことか、幼稚なオチャラケに呆れてしまった。通信士が感電するギャグもしつこい。まるで50年前のザ・ドリフターズだ。
入場料払って観に来たお客が損した気分にならぬよう、老朽ディーゼル潜水艦には予算をかけたみたいで、錆の浮き具合がなかなかよろしい。
誰が言い始めたのか知らないが、「潜水艦映画にハズレなし!」だそうだ。
点