シーズン中のドライバー死亡率20パーセント、フォーミュラ・ワンが「走る棺桶」と呼ばれていた1970年代に活躍したF1レーサー、ニキ・ラウダとジェームス・ハントのプライドと友情を描いた実話ベースの映画化。脚本は「フロスト/ニクソン」のピーター・モーガンのオリジナル。監督は職人肌のロン・ハワード。
ガチガチの理論派ラウダと女好きでやんちゃなハント、禁欲的で地味なラウダと享楽主義のハント。対照的なキャラを活かして、ストーリーはF3会場でふたりが出会った駆け出し時代から、ハントが逆転優勝を果たした1976年のF1シリーズ最終戦(豪雨の富士スピードウェイ!)までを描いている。
ポスターに並んだふたりの写真、ジェームス・ハント(クリス・ヘムズワース)とニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)を見て、無意識にニヤリと笑ってしまった。メイクも多少あるだろうが、表情がまったくもって本人そっくりなので、驚くより先にニヤリしてしまった次第。
ヘムズワースはオーストラリア、ブリュールはドイツ出身。ふたりとも本作を観るまで知らない顔の俳優だったのだが、なかなかの好演。
ヘムズワースはマーベル・コミック原作の映画シリーズで活躍していて、ロン・ハワード「白鯨との闘い」にも出演しているそうだが、どちらも未見。他の役を演じていても、分からないだろうなあ。
ふたりはニキ・ラウダとジェームス・ハントで記憶に固定されてしまった。本当に本物そっくり。
クライマックスの富士スピードウェイのあと、エピローグにしてはちょい長めのラストシーン(自家用ジェット機の飛行場)が置かれていることで分かるように、この映画は、ふたりのF1レーサー(人物)を描いたもので、「グラン・プリ」や「栄光のル・マン」のようなレース(自動車競争)を見せる映画ではない。
レース場面は、ありえないアングルからの映像も(見せたくないのかと疑いたくなるくらい短いカットで)CGを多用して再現。映画というよりテレビゲーム感覚。ハンス・ジマーの煽り音楽も、スタートのフラッグが振られる前からガンガン鳴り響き(まったく記憶に残らないが)絶好調。
レース(自動車競争)を見せる映画ではないので、それはそれで結構。最近はCGだからどうこう思うところはなく、アニメ感覚で見られるようになりました。かつてのカーレース映画のように命懸けで撮影しているわけじゃないので、観ているほうも気楽でのんびりしていられます。
点