田舎町の食堂に怪しげな二人組が現れ、ガソリンスタンドに勤めていた元ボクサーの男を射殺する。ここまでがヘミングウェイの短編小説。
その後に展開する、殺された元ボクサーの身元を保険調査員が捜査していくうちに、数年前にあった工場の給料強盗事件が絡んでいたことが分かり、殺された男を色香で操っていた悪女の存在など、事件の真相を暴くという流れは、脚本家アンソニー・ヴェイラーのオリジナル。
1964年にリメイクされたドン・シーゲルの「殺人者たち」では、殺される男が元レーサーで、事件の真相を追うのは殺し屋(リー・マーヴィン)だった。
主人公は回想シーンで描かれるボクサー崩れの男(バート・ランカスター)だが、狂言回しの保険調査員(エドモンド・オブライエン)のほうが出演場面は多い。殺し屋やギャングの男たちも個性が出ていて悪くないが、この映画で最も輝いているのは、悪女役のエヴァ・ガードナー!
デビュー間もないころの出演だが、彼女のファム・ファタールぶりが見られただけで満足。ピアノの前で歌う彼女に、ぼーっと見とれてしまうランカスターの気持ち、わかる分かる。ラストの自己保身丸出しのアップはすごいぞ。
殺し屋が食堂に入っていくとき、ひとりは表から、もうひとりは裏口からと、冒頭シーンからゾクゾクさせる。
クレーンを使った工場強盗の長回しもいい。ロバート・シオドマクの職人芸。
ストーリーも人物設定もフィルム・ノワールの典型。
入り組んだ回想場面に誤魔化された感じもあり、よくよく考えると小さな穴も散見されるだろうが、スピーディな展開で最後まで飽きない。
タランティーノがリメイクしたら3時間くらいになるんじゃなかろうか。
点