ジョニーは戦場へ行った|映画スクラップブック


2021/02/18

ジョニーは戦場へ行った

ジョニーは戦場へ行った|soe006 映画スクラップブック
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JOHNNY GOT HIS GUN
1971年(日本公開:1973年04月)
ダルトン・トランボ  ティモシー・ボトムズ キャシー・フィールズ ジェイソン・ロバーズ マーシャ・ハント ドナルド・サザーランド ダイアン・ヴァーシ デヴィッド・ソウル モーリス・ダリモア ドナルド・バリー エリック・クリスマス エドュアルド・フランツ ケリー・マクレーン チャールズ・マックグロー バイロン・モロー サンディ・ブラウン・ワイエス

第一次大戦に志願出兵し、独軍の砲弾により前線で両手両足と顔を失った(まだ少年のようにあどけない)青年(ティモシー・ボトムズ)。視覚聴覚嗅覚味覚はないが、触覚と意識だけは残っている。

人工的に生命維持を施され、研究のため軍の医療機関に極秘で移送される。追憶と幻想が混濁した主人公のイメージが淡いトーンの色彩で、これ以上はない究極の絶望ともいえる病室場面がモノクロで交互に描かれる。

ジョニーは戦場へ行った

原作はダルトン・トランボが1939年に発表した小説。長い間(赤狩り騒動もあって)映画化は実現せず、原作本も(第二次大戦、朝鮮戦争と)アメリカが戦争するたびに絶版・復刊を繰り返す。ベトナム戦争が泥沼化し反戦運動で国内政情が混乱していた1971年に、トランボ自身が初めてメガホンをとって製作。カンヌで審査員特別グランプリを受賞。

アメリカ公開は71年8月だったが、(暗い映画があたりまえの当時であっても)内容が暗すぎるために興行は不振。
日本では一年以上遅れて73年4月に公開。佐賀では中学一年の夏休みに佐賀平劇で公開され、(「文部省特選」ということもあって)学校で割引券が配布された。だぶん日教組がゴリ押ししたのだろう。いまならレーティングで15歳以下は保護者同伴になってもおかしくないダークな内容で、子どもには刺激が強すぎる。

タイトルバックに記録フィルムを入れたのは上手い。背景が明確に提示されている。これが無かったら、本編のリアリティが薄くなって、寓話っぽくなってしまっていただろう。
父親自慢の釣り竿を無くしたエピソード、恋人との別れ(彼女の父親がいい奴だ)、キリストと呼ばれている男、子供を米国の寄宿学校に通わせている娼婦、色彩パートには虚実いろいろなエピソードが出てくる。

ジョニーは戦場へ行った

主人公のジョーがパン屋で働いていた設定から、トランボ自身の青年時代も幾らか取り入れているのだろう。どれもが印象に残る。
特に父親(ジェーソン・ロバーズ)との関係が濃ゆい。

ジョニーは戦場へ行った

残念なのは、それらのひとつひとつの説明が省略されているので、明確なストーリーとしてうまく理解できないこと。暗黒の混濁のなかで主人公が意識した色彩場面なので、細切れは細切れのままで成立しているとも言えるが、ハリウッドの脚本家なのだから、もう少し分かりやすく構成することもできたのじゃなかろうか。
例えば、キリストと呼ばれる男(ドナルド・サザーランド!)と、看護婦(ダイアン・バーシー)が胸に書く「メリー・クリスマス」と、パン工場社長が執拗に連呼する「おれは社長、これはシャンパン、メリー・クリスマス」、それぞれ関連しているのだろうが、説明がないから、それらが何を示唆しているのかまとめられない。安っぽいアート映画だ。

とはいえ、反戦の訴えと自死の自由をテーマに、ここまで強烈かつ徹底的にやられると、映画としての出来不出来はどうでもよくなってしまう。トランボが自ら資金を調達し、65歳の高齢で初監督した、執念の事実にノックアウトされる。

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