イスタンブールの駅に続々とスターがやってくる場面に鳥肌がたつ。
それぞれの衣装がまた素晴らしい。千両役者の揃い踏み。
ゴージャス&グラマラス!
ポワロ役のアルバート・フィニーが見得切りまくりのオーバーアクト。だが、それがいい。ローレン・バコールはじめ、みなさん楽しんで芝居している。
アンソニー・パーキンスは「サイコ」のセルフパロディ演ってるし、自ら地味な役を希望して選んだイングリット・バーグマンの計算高さ。執事役のジョン・ギールグッドは余裕綽々。配役は百点満点。
超有名な原作(ゆえに結末=謎解きは誰もが知っている)だけに、ミステリーのテリングよりも、華麗で豪華なエンタテイメントに仕立てたところが大成功。
よくよく考えれば、敵(リチャード・ウィドマーク)の側近に2人も潜入しているのだから、いつでも殺せたところを12(+1)人揃って、しかもオリエント急行列車という格別な舞台に、ほとんど全員が身分を偽って一堂に会する。
劇場型犯罪というより演じるための犯罪劇。
まさに西洋花形歌舞伎。
シャンパングラスを交わすお洒落なカーテンコール。シドニー・ルメットは、きっちり役者の為所(しどころ)を押さえ、つくづく舞台の人だなあ、と。
貧乏くさいニューシネマ時代の末期に製作(1974年)された、贅沢を楽しむ映画。
劇伴音楽にシビアなルメットが、如何にもな映画音楽(リチャード・ロドニー・ベネット)を使ったのも珍しい。壮麗なメインタイトルはもちろん、イスタンブール駅発車場面のワルツが黄金時代のハリウッド流儀でいい。
点