「オリエント急行殺人事件」の高評価&好成績で気を良くしたEMI社によるクリスティ原作ミステリー大作第2弾。今回もベティ・デイヴィスを筆頭に欧米のオールドスターをかき集め、異国趣味たっぷりなロケーションで贅沢三昧。
公開時は原作を読んでいなかったこともあり、ミア・ファローの熱演かつ意外な結末もあって、とてもおもしろく見た記憶が残っていた。
「タワーリング・インフェルノ」「キングコング」とスペクタクル大作を連発したジョン・ギラーミンが、特撮抜きで正統派の娯楽作品に手腕をみせたことも高く評価していたのだが……
「オリエント急行」と続けてみたら、テンポがのんびりしているぶん格が落ちる。殺人事件が起こるまでに全体の半分の尺を使ってるし、オールスターキャストも二番煎じな感じが否めない。「オリエント急行」の役者たちのほうがピリピリした緊張感があった。これは監督の違いか、編集の違いだと思う。
ピーター・ユスティノフのポアロがのんびりムードに加担しているのは間違いない。
ポルノ作家のアンジェラ・ランズベリーとベティ・デイヴィスの怪演が目立ちすぎて、名探偵が霞んでしまった。母親が殺されたばかりというのに、ニコニコ笑顔で婚約者と下船するオリビア・ハッセーも変だ。
逆にジョージ・ケネディとデヴィッド・ニーヴンのベテラン男優陣は気が抜けたサイダー(この比喩古すぎ、もっと現代的な例えはないものか)で、「オリエント急行」みたいに役者だけ見ていても楽しい! という気にならない。
そのかわり、雪崩で身動きできなくなった急行列車とは違い、エジプト観光はたっぷり楽しめる。
撮影監督はジャック・カーディフ。
ピラミッド頂上なんかどうやって撮ったんだろう。セットには見えなかったぞ。
ミア・ファローの代表作として、記憶に残る映画ではある。
点