このタイプの音楽にまったく疎いけど、ザ・ビートルズは知ってるぜ! メンバーの名前だって全員言える、ジョンとポールとジョージとリンゴだ。終わりの方で主人公が会いにゆく老人が、1980年12月に暴漢に射殺されたジョン・レノンだってことも説明不要。映画で使われていた曲も半分以上知っていた。やっぱビートルズは凄いな!
そんな、おれだって知ってるザ・ビートルズを、誰も知らないパラレルワールド設定で描いたファンタジー・コメディ。監督は「スラムドッグ$ミリオネア」でぞっこんファンになったダニー・ボイル。
アイデア一発勝負の映画だけど、これが実に巧く作ってあり、最後まで退屈しない。脚本は「ラブ・アクチュアリー」のリチャード・カーティス。この脚本家はキャラを立たせるのが本当にうまい。主人公にインド系移民のダサい男(ヒメーシュ・パテル=歌も本人の歌唱)を置いたところなんか見事と言うしかない。
スターになってもドラッグやセックスに溺れることなく、最後まで盗作の後ろめたさを抱いているのがいいし、「エリナー・リグビー」の歌詞を思い出せず試行錯誤する場面もいい。主人公の他にもビートルズを記憶していた人物がいた設定をぶち込んでおきながら、それを深追いしない。このさじ加減が絶妙。音楽ギョーカイの皮肉もたっぷり。
脇の描き方がまたうまい。中学校の教師でマネージャー役のリリー・ジェームズは可愛いし、ツアーに同行する腐れ縁の友人ジョエル・フライも面白すぎる。最高なのは女性プロモーター(ケイト・マッキノン)のゲスっぷり。主人公の両親(サンジーヴ・バスカー&ミーラ・サイアル)もばっちり笑わせてくれる。
学校教師に復職した主人公が、心の底から楽しそうに子供たちと歌う「オブラディ・オブラダ」はマジで感動した。音楽のちからって凄いな!
やっぱビートルズは凄いな!
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