偽装された葬儀のファーストシーンで、これは007だなと思った。
死亡報道された主人公(ジョン・ギールグッド)が執務室に現れ、しかも上司がR。新しい名前と経歴とパスポートを渡され、極秘任務でスイスのホテルへ。そこには金髪美人のボンドガール(マデリーン・キャロル)もいて、ふたりのラブラブを適宜挟みながら調査開始。カジノの場面があり、潜入したチョコレート工場からの脱出があり、クライマックスは軍用列車脱線転覆のスペクタクル。やっぱり007だ! BGMをジョン・バリーに差し替えて編集したくなっちゃった。(原案はサマセット・モームの短編小説)
不気味に鳴り止まない教会のオルガン、教会の鐘、主人の危険を予知する犬の啼き声、会話が聞き取れないほどの工場の機械音、機関車の汽笛と轟音。
過剰な音響効果による演出。これもヒッチ・タッチ。
王立演劇アカデミー出身のシェークスピア俳優だったジョン・ギールグッドは、これがスクリーン・デビュー作。当時32歳くらい。007のダニエル・クレイグっぽい感じもある。
禿頭のメキシコ人「将軍」を演じるピーター・ローレが面白い。愛嬌があって残酷で気味悪く、こんなユニークな悪役って他にいないだろう。
と書いたあとで、我が国には石橋蓮司という素晴らしい役者さんがいたのを思い出した。
点