第3逃亡者|映画スクラップブック


2021/05/29

第3逃亡者

第3逃亡者|soe006 映画スクラップブック
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YOUNG AND INNOCENT
1937年(日本公開:1977年01月)
アルフレッド・ヒッチコック デリック・デ・マーニイ ノヴァ・ピルブーム パーシー・マーモント エドワード・リグビー メアリー・クレア ジョン・ロングデン ジョージ・カーズン ベイジル・ラドフォード

長いあいだ「若くて無邪気な」のタイトルで知られていた戦前の作品。水野晴郎のIP配給で、「海外特派員」「バルカン超特急」に続いて、1977年1月にようやく日本でも公開された。
前作「サボタージュ」が暗い内容だったのに対し、今度はぐっとユーモアたっぷりな巻き込まれ型サスペンス。「暗殺者の家」で誘拐された少女を演じていたノヴァ・ピルビームが、殺人犯に間違えられた青年(デリック・ド・マーニー)と、警察に追われながら真犯人を探し回る。

第3逃亡者

サスペンスといってもハラハラドキドキの緊迫感は希薄で、ヒッチコックが喜劇として撮っていることは、青年が裁判所を脱走する場面でも顕著。弁護士や二人組の警官などは明らかにコメディリリーフとして配役されている。若くて無邪気なカップルのロードムービーといったところだろうか。後半、犯人探しの協力者となる浮浪者役のエドワード・リグビーが味のある好演。

タイトル音楽にチャールストン。このときすでにヒッチはアメリカ行きを決めていたのかも知れない。「暗殺者の家」から「サボタージュ」までの4作品で製作を担当していたマイクル・バルコンとアイヴァ・モンタジュが会社(ゴーモン・プロ)を離れ、それでもあと2本の契約が残っていたヒッチコックの、いわば消化試合だったのかも。

しかし、発見されるのを恐れた殺人犯が緊張のあまり失神してしまう結末では、なんとも情けない。こんな小心者に女を絞殺して海に投棄できたのだろうか、と思ってしまう。
主人公の青年も取調室で失神してたし、二人ともピルビームに介抱されるというのも芸がない。

第3逃亡者

それでも、ヒッチ・タッチは随所に見受けられる。海岸で青年に濡衣が着せられる場面にカモメが舞っているカットを一瞬インサートしたり(「鳥」みたいだ)、逃げ込んだ廃坑の地崩れで自動車ごと地下に呑み込まれそうになったり(「インディ・ジョーンズ」みたいだ)、ホテルのボールルーム全景をロングでとらえたあと舞台で演奏するドラム奏者(犯人)のズームアップまでクレーン移動の長回しで見せたり(デ・パルマみたいだ)。

公開が後先になったために、後年製作された「鳥」や「北北西に進路を取れ」や「汚名」を連想し、ヒッチコック・パロディを見ているような気分にもなる。スピルバーグやデ・パルマなど後輩たちに、面白い場面はこうやって作るんだぞ、と教えてるような。

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