「巴里の屋根の下」(1930年)で初めてトーキーに挑んだルネ・クレールのトーキー第2作は、大当たり百万フランの宝くじをめぐるオペレッタ喜劇。幸福感あふれた愉快で楽しい歌が盛りだくさん。
「お金だけが全てではないとインテリは言うけれど、貧乏人にとってはその言葉より、お金の方が嬉しい」
主人公の恋人、バレリーナ役を演じる「巴里祭」のアラベラが可憐でかわいい。
タクシー運転手に「自由を我等に」のレイモン・コルディ。騒動の発端となるギャングの首領チューリップじいさん(このネーミングも素晴らしい)はクレール映画の常連俳優ポール・オリヴィエ。
オープニングは「巴里の屋根の下」同様、ラザール・メールソンの(凄い)オープンセットによるパリの屋根。バルコニーでおやすみの挨拶を交わしている恋人がいて、それからカメラは延々と移動し、あるひとつの天窓から漏れてくる音楽に誘われて部屋を覗き込むと、ストーリーが歌い出す。この導入だけで大満足。あとはニコニコ笑顔で最後まで。
主人公の男ふたりが画家と彫刻家(もちろん貧乏)。ふたりに絡む若い女がバレリーナとモデル。芸術とファッションの都パリの若者。ルネ・クレールはいいなあ。
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