ワーテルローの戦いでナポレオンが破れた1815年直後のパルム公国(イタリア北部)を舞台に、男女の愛と嫉妬が交錯するロマンス劇。
衣装、美術、撮影に贅沢を尽くした2時間47分の超大作で、たいへん見応えがある。クリスチャン・ジャックの監督作品でいちばんの力作だと思う。
自由気儘な主人公ファブリスを演じるのはジェラール・フィリップ。適役ではあるが「花咲ける騎士道」や「夜ごとの美女」でみせた陽気な笑顔は控えめ。彼の叔母でもある伯爵夫人を演じるマリア・カザレスが圧倒的で、ジャン・コクトー「オルフェ」と並ぶ名演。将軍家の娘クレリア役のルネ・フォールも、負けず劣らず可憐な眼差しが印象に残る。
このふたりの演技が素晴らしいので、出世欲と保身に忙しいカリカチュアライズされた男優陣は損な役回りになっているものの、それぞれに熱演。自由主義を謳い革命の引き金となるアッチリオ・ドッテジオは儲け役。愚帝エルネスト四世を演じたルイ・サルーは髪型といい表情といいマイケル・ケインによく似ている。
スタンダール原作なのでセリフに文芸風の言い回しがあり、ジェラール・フィリップの軽やかさとマッチしていないところもある。
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