ロンドンの下町で小さな本屋を営むヒュー・グラントと、ハリウッドのスター女優ジュリア・ロバーツが出会って、恋して、ギクシャクが何度かあって、ラストで結ばれる。
脚本は「フォー・ウェディング」のリチャード・カーティス。
「フォー・ウェディング」でもそうだったけど、女が男に惚れる理由がサッパリ欠落していて、おとぎ話のままで終わってる。主役ふたりを取り巻く奇抜な脇キャラと、面白いセリフ(「007は道に迷わない」とか)が散りばめられているので辛うじて持っている感じ。故人を偲ぶ遺族が思い出の場所に寄贈した公園のベンチとか、素敵なエピソードがたくさん入っているけど、入れてるだけ。ストーリーにほとんど機能してない。
選曲にあわせて場面を作っているのだろう。ヒュー・グラントが市場の通りを歩いている長回しのワンカットで季節の変化をみせた場面も、なんだか取って付けた感じ。頑張って作ったのは分かるけど、そんなことして何の意味があるの。かえってシラケてしまう。
お洒落なポップスBGMの雰囲気で誤魔化してるから、見ているあいだは心地よい。
アレック・ボールドウィンが、ジュリア・ロバーツの元恋人役でカメオ出演。ジュリア・ロバーツは役名ジュリア・ロバーツでも良かったんじゃない? ワイルダー「ねえ!キスしてよ」のディーン・マーチンみたいに。「ゴースト」のデミ・ムーアとかメル・ギブソンの尻とか、整形やボディダブルとか楽屋落ちのギャグやるのなら、実名使って自分自身を演じるキャラにしたほうが、ストーリー的にも宣伝でも絶対強いのに。
外国映画に出てくるホテルマンって、粋なはからいのおじさんキャラが多い。「一日だけの淑女」(1933年)の頃からの伝統になってるんだな。
玄関に着物姿の等身大のディスプレイが置いてある。リチャード・カーティス(脚本と製作)は日本贔屓なのか? CX「月9」に影響されているのか、「月9」が影響を受けてるのか? 日本のテレビドラマみたいな、安っぽい寓話。
「男はつらいよ」の車寅次郎は、木の実ナナ(松竹歌劇団の花形ダンサー「寅次郎わが道をゆく」)や都はるみ(演歌の女王「旅と女と寅次郎」)に恋をする。身分格差、生活環境の違いで恋愛劇の枷を作りたい脚本家は、とりあえず「男はつらいよ」を観ましょう。
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