レース・ドライバーのラリー(ピーター・フォンダ)は相棒の整備士(アダム・ロアーク)と組んでスーパーマーケットの金庫から大金を強奪。逃走するシボレー・インパラにあばずれ娘スーザン・ジョージが乗り込んできたことから計画に狂いがでて、警察の執拗な追跡が始まる。
ピーター・フォンダもアダム・ロアークも、自己中心的でレースのことしか頭にない。道徳心・公共心が欠落している。バザールで盗んだ黄色いダッジ・チャージャーに大金を置いたまま時間稼ぎにプール・バーに入ったりして、金に執着している様子もない。逃げ回ることを楽しんでいて焦りは感じられない。刹那的な悲壮感は皆無。単純にアホなだけなのか。
万引事件で仮保釈中のスーザン・ジョージも、これといって目的があるわけでもなく、(面白そうだからという理由だけで)成り行きで同乗している。スーザン・ジョージに(「明日に処刑を…」のバーバラ・ハーシーみたいな)愛嬌があったら、彼女のキャラはぐっと興味深いものになっていただろう。
事件を担当するフランクリン部長(ヴィック・モロー)が、上司の声に耳を貸さず制服とバッヂを嫌ってるあたり、ベトナム戦争時代の反体制思考が匂う。
スーパーのマネージャー(ロディ・マクドウォール:なぜかタイトルにクレジットされていない)の妻と娘を人質に、銃やナイフを使わず大金を奪う手口は面白い。
そのあとのストーリーは、警察無線を盗聴して捜査網の裏をかき、ひたすら逃げるのみ。
全編オール・ロケのカーチェイスが最大の見どころ。
排ガス規制前の恐竜みたいなアメ車が走るたびに砂煙あげてドリフト。バリケートの壁を突き破り、加速して跳ね橋をジャンプ。次々とクラッシュするパトカー。ヴィック・モローのヘリコプターとダッジ・チャージャーのチェイスがユニークかつスリリング。
スタントマンの命がけの本気仕事に感動。追いかけるカメラも大変だったと思います。
あっけないラストは、「バニシング・ポイント」(あるいは「あの胸にもう一度」)の真似かどうかは分からないけど、当時の映画にはありがちな結末。
タイトルバックに流れるフォークソングも 70年代風で懐かしいサウンド。
点