浮気のアリバイ工作のため替え玉を探していた米国大統領ケヴィン・クラインは、そっくりさんの男(ケヴィン・クライン二役)を見つけた日の夜、脳卒中で倒れ意識不明の重体。この機に乗じて大統領の椅子を狙う補佐官の陰謀により、そっくり男は当分のあいだ大統領を演じることになる。周囲の目を嬉々として欺きながら、正直者の替え玉男はちゃっかり大統領夫人のハートを掴み、政治の方もよろしくやっちゃう。
楽天的で行動派の主人公。フランク・キャプラ映画のような政治喜劇。
人材派遣の仕事をしていた男が大統領に成りすまして、失業者雇用政策を推進させるアイディアがいい。交通違反で警官に停められたときの物真似ショーとか、奇をてらうことの無い定番エピソードの積み重ねでラストまで引っ張る、ゲーリー・ロスのオリジナル脚本が抜群に上手い。「ビッグ」で脚本家デビューしたゲーリー・ロスは、後に「カラー・オブ・ハート」や「シービスケット」を監督。
場面の大半を占めるホワイトハウスは撮影許可が出なかったので、(一般公開されていないプライベートルームを含めて)スタジオにセットを組み、外観はLAにオープン・セットを建てたとのこと。プロダクション・デザイナーはJ・マイケル・リバ。
二役で主演のケヴィン・クラインはもとより、大統領補佐官フランク・ランジェラ、広報担当ケヴィン・ダン、護衛官のヴィング・レイムス、大統領夫人シガーニー・ウィーヴァー、副大統領ベン・キングズレー、それぞれ適役好演。キャスティングの勝利。
大統領秘書で愛人のローラ・リーニーは本作あたりから売れっ子になった。
実在の国会議員やテレビのリポーター、司会者、解説者も本人役で実名出演。ライトマン映画のスター俳優アーノルド・シュワルツェネッガーもワンショットのみ特別出演。テレビ番組でインタビューに応じるオリヴァー・ストーンの陰謀云々発言がギャグになっていて大爆笑、ここがいちばん笑った。
アイヴァン・ライトマンは、映画監督、映像作家というより「ハリウッド業界人」の印象が強い。ゲスト・カメオ含め数多くの著名タレントが集まったのも、プロデューサー・監督のアイヴァン・ライトマンの人柄、人望の篤さゆえのことだろう。
キャリアの初期はバイオレンス・サスペンス「ウィークエンド」やクローネンバーグの「ラビット」の製作も担当していたが、監督作品のほとんどが刺激のないファミリー向けコメディだったため、1980年代、デヴィッド・リンチやテリー・ギリアムに夢中になってた映画ファンはまったく相手にしてなかった。「ゴーストバスターズ」「ツインズ」「キンダーガートン・コップ」「刑事ジョー ママにお手あげ」など、テレビ向けのヌルいコメディが洋画劇場で頻繁に放送されていたので、一般の知名度は高い。
「デーヴ」はフランク・キャプラ・オマージュの秀作。
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