殺人者は口笛を吹きながらやって来る。
まるでスポーツしてるかのように機敏に颯爽と抜け目なく殺しまくり、強引に縄張りを広げ、ボスの情婦を寝取り、妹を病的に溺愛し、相棒まで殺してしまう。ひたすらバイオレンスに徹したギャング映画。
ポール・ムニと言えばギャング映画、ギャング映画と言えば「暗黒街の顔役」。
ポール・ムニの代表作でありギャング映画の代名詞、それが「暗黒街の顔役」。
「世界は君のものだ」
最初に「民衆の敵」と同じようなタイトルが出る。似ているがちょっと違う。
映画で描かれるような悪党を輩出したのはアメリカ社会に責任があると、あからさまに、その原因の矛先を政治(禁酒法)に向けている。
ハワード・ヒューズ(製作)、ベン・ヘクト(脚本)、ハワード・ホークス(監督)のただならぬ気概が感じられる。
ハリウッドは 1930年から一斉に暗黒街映画の製作を始める。「犯罪王リコ」「市街」「民衆の敵」など。密造酒の製造販売によって肥大する犯罪組織、抗争事件が新聞を賑わし毎日のニュースになっていたことも背景にあるが、1920年から続いている悪法に一般大衆のストレスが鬱積していたことは容易に想像できる。
主人公はラストで哀れな死にざまを見せるものの、禁酒法が彼らを誕生させ増長させた原因だったという指摘は、どのギャング映画でも共通していた。
禁酒法(アメリカ合衆国憲法修正第18条)は映画が公開された翌年(1933年12月5日)に廃止された。
本作はブライアン・デ・パルマによって1983年にリメイクされる。
「スカーフェイス」のギャングたちが扱っているのは密造酒に代わって麻薬。
オリヴァー・ストーンは麻薬合法化を訴えたくて脚本を書いたのだろうか。
麻薬密輸の現行犯逮捕でトルコの刑務所に収監される「ミッドナイト・エクスプレス」もオリヴァー・ストーンだったし、何度も麻薬で逮捕されているストーンだから、「スカーフェイス」のシナリオにそんな願いが込められていてもおかしくない(憶測)。
「雨に唄えば」や「お熱いのがお好き」でパロられていたコイン遊び。
ジョージ・ラフトはスコセッシ映画でお馴染みのマンハッタン、ヘルズ・キッチンの出身。実際にマフィアとも友好関係があり、「犯罪王リコ」でダグラス・フェアバンクス・Jrが演じたジョー(ギャングから足を洗いナイトクラブのダンサーになる)のモデルとなった俳優。
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