「犯罪王リコ」のマーヴィン・ルロイ監督、「暗黒街の顔役」のポール・ムニ主演のワーナーブラザース配給だからギャング映画だと思いこんでたが、「暴力脱獄」や「パピヨン」のような刑務所脱獄ものだった。
世界大戦からの復員。お仕着せの管理生活を嫌い、建設現場で仕事がしたいと家族の反対を押し切って家出したものの、ときは大恐慌の真っ只中。希望する仕事にありつけないままボストン、ニューオリンズ、ウィネベーゴ、セントルイス、アトランタと放浪の旅が続き、挙句の果てに強盗の片棒を担がされて逮捕。理不尽な判決により10年の懲役をくらう。脱獄囚ロバート・E・バーンズの手記をベースにした実録映画。
朝4時20分に起床し、不味い朝食を摂ったら14時間におよぶ過酷な肉体労働。額の汗を拭うにも看守の許可が必要。非人道的な扱いに堪えかねて脱獄。大都会シカゴで偽名を使って建設会社に就職、トントン拍子に出世するが女性関係のもつれから放蕩の妻に正体を密告され、再び悪夢の強制労働。弁護士に大金を払い、州検察官と交わした恩赦の約束も反故にされ、仲間とともに二度目の脱獄。
アメリカ地図、カレンダー、給与明細のオーバーラップで時間経過と状況の変化を説明する、無駄のない脚本構成。刑務所の実態を克明に描き、二度の脱獄サスペンスも上出来。
ラスト、夜の闇に姿を消すポール・ムニ。フェードアウトする絶望の表情。
マーロン・ブランドはポール・ムニの演技に心酔し参考にしていたそうだが、同じくアクターズ・スタジオ出身のポール・ニューマンやスティーヴ・マックイーンも「暴力脱獄」や「パピヨン」に出演するにあたって、本作を強く意識していたに違いない。
刑務所脱獄映画の名作。
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