ウィリアム・ホールデンをリーダーとする壁の穴ギャング団は、鉄道会社の罠に嵌められ強盗に失敗、追跡を逃れて国境を越える。メキシコ政府軍を指揮する将軍エミリオ・フェルナンデスは、アメリカ軍用列車から武器弾薬を強奪するよう彼らに依頼する。
時代の変化についていけない、取り残されてしまった無法者たちの挽歌。
ウィリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナイン、ロバート・ライアンと、ビッグネームのスター俳優が出演し、大仕掛けの見せ場が多いので、サム・ペキンパーの代表作とされている。
ペキンパーをバイオレンスだけで語るのは嫌で、むしろバイオレンス抜きで語られる部分にペキンパー映画の本質があり魅力だと思っているのだけど。
本作の高速撮影されたスローモーション・ショットの編集は、やっぱり迫力がある。
パイク(ウィリアム・ホールデン)がマパッチ将軍(エミリオ・フェルナンデス)を撃ったあとの僅かな静寂、一触即発の緊張からダッチ(アーネスト・ボーグナイン)が笑い出す。この一連の短いショットに、男たちのストーリーがグッと凝縮している。これだよ、これ、これ! これが映画を観る醍醐味なんだよ。
撮影監督はペキンパーとのコンビで傑作が多いルシアン・バラード。過去にはキューブリックの「現金に体を張れ」も撮っている。編集はこのあと「砂漠の流れ者」でもペキンパーにこき使われるルー・ロンバルド。冒頭の銃撃戦やクライマックスのアクション・シーンなど、編集の妙技、名人芸だ。
ストローザー・マーティン&L・Q・ジョーンズ。
「砂漠の流れ者」でもコンビを組んでいた下劣な悪党二人組。L・Q・ジョーンズは出てくるといつも殺される。本作では殺されるシーンは描かれていないが、ラスト場面のエドモンド・オブライエンのセリフで、やっぱり殺されたことが分かる。
ペキンパー映画の常連俳優、ベン・ジョンソンとウォーレン・オーツ。
あてがわれた女たちと酒樽ではしゃぎ遊ぶ。水浴び場面はペキンパー映画の付きもの。
川で(「荒野のガンマン」「ダンディー少佐」)、池で(「ゲッタウェイ」)、風呂で(「砂漠の流れ者」「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」)。
ペキンパー映画に付きものといえば子供たち。特に「ワイルドバンチ」は印象に残る子供が多い。冒頭のサソリを殺して遊ぶ子供たち。敵を目前にして怯まないマパッチ将軍に憧れの眼差しを向ける少年。パイクに致命傷の銃弾を撃ったのも少年だった。
映画ガイド書などで「ワイルドバンチ」やペキンパー映画について、「汚い衣装や髭面、残酷アクションはマカロニ・ウエスタンからの影響」と書かれているのを見かけるが、これは誤り。
「荒野の用心棒」でマカロニ・ブームが起こる前にペキンパーは「ダンディー少佐」の撮影を開始している。ペキンパーもセルジオ・レオーネも同時代に偶然同じような映画を考えていたのだと思う。
影響というのなら、ふたりとも黒澤明の「七人の侍」や「蜘蛛巣城」「用心棒」からの影響が断然強い。
「ワイルドバンチ」と同じテーマを扱った「明日に向って撃て!」を比較すれば、ジョージ・ロイ・ヒルが黒澤映画にほとんど影響受けてないことが分かっておもしろい。
大虐殺のあと、ハゲタカが集まり、住民たちは町を捨てて出ていく。
行き場を失って放心状態のロバート・ライアン。
この映画、最初はテレビの洋画劇場(90分枠の「土曜映画劇場」で前後2回に分けて放送)で見てぜんぜん面白くなく、その後、池袋文芸坐で観たら(プリントは退色して赤茶けてたけど)凄くて面白くて断然お気に入りになった。テレビの洋画劇場は(吹き替えとか、カットとか、トリミングとか、CMとか)いろいろと糞だったが、田舎の中学生はそれでしか過去の映画に接する機会がなかったのだから仕様がない。
点