不遇な少年時代を過ごしたリチャード・ギアは、航空士官候補生学校に入学。鬼軍曹ルイス・ゴセット・ジュニア(首の後ろにけっこうな傷跡あり)に鍛えられ、協調性と士官たる者は紳士であれ(原題:AN OFFICER AND A GENTLEMAN)の精神を身につけ訓練期間を終了、少尉となって卒業する。
公開当時、ジョー・コッカー&ジェニファー・ウォーンズの主題歌がヒットした。
中盤、製紙工場で働く女(デブラ・ウィンガー)といちゃつく場面が退屈。
ロマンス映画なのに男と女の出会いがひどい。将校パーティで出会って3分も経たないうちにキスして会場を出ていく。将校漁りの女たちが下品だ。ズルい男と浅ましい女のラブストーリー。
人物が作られていない。リサ・ブロントに騙された友人デヴィッド・キースの悲劇とか、そんなにメンタル弱くて軍人は無理だろう。訓練終了直前に主人公が軍曹と格闘(マーシャルアーツ)で対決する場面も意味不明。取ってつけた感じだ。
ヒット映画のシナリオはこうやって書けみたいなマニュアル本に則して書かれた(ロバート・アルトマンの「ザ・プレイヤー」でさんざん馬鹿にされ茶化されていた)ハリウッド流儀の脚本。
製作はマーティン・エルファンドがクレジットされているが、当時のパラマウント重役はドン・シンプソン。ジェリー・ブラッカイマーも製作に関わっていたとのことで、実質ドン&ブラッカイマーの映画と言っていい。内容もそんな感じだ。浅くて薄い。DVDには監督のコメンタリーも収録されている。
本作をさらにポップにブラッシュアップしたのが 1986年の「トップガン」。
リチャード・ギアのアイドル映画。それ以上でなく、それ以下でもなく。
訓練シーンは興味深くなかなかに面白い。どこにも帰る場所がないと泣いて懇願する場面はリチャード・ギアの芝居にも力が入っていて感動的ではある。全体を構成する「企画の狙い」がブレて失敗している。訓練によるギアの成長物語か、ギアとデブラ・ウィンガーの恋物語か、どちらかをメインに絞り込み、片方はサブに据えとけば良かったのではなかろうか。
ルイス・ゴセットの鬼軍曹がいなかったら、ずいぶんふやけた映画に仕上がっていたんじないかと思う。
点