ミュージカル 今昔物語|映画スクラップブック


ミュージカル 今昔物語(10本)

2020/03/20

パリの恋人

パリの恋人|soe006 映画スクラップブック
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FUNNY FACE
1957年(日本公開:1957年09月)
スタンリー・ドーネン フレッド・アステア オードリー・ヘプバーン ケイ・トンプソン ミシェル・オークレール スージー・パーカー

古本屋に勤める野暮ったい娘が、ファッション誌のカメラマンに見初められ、モデルとして磨かれ喝采を浴びるまでを描く。シンデレラ&ピグマリオン物語。
ブロードウェイ・ミュージカル「ファニー・フェイス」から主題曲を流用しただけのタイトル、ストーリーは映画オリジナルの別物。ガーシュウィン・ミュージックを使った、オードリー・ヘプバーン&ユベール・ド・ジバンシィのカラフル・ファッション・アイドル映画。パリの名所を背景に網羅して観光ガイドの趣あり。さらに、盛りを過ぎたフレッド・アステアのおまけ付き。

ヘプバーンのダンスはいい。頑張ってる。バレエのレッスンを受けていただけあって、スラリと伸びた脚の動きはきれい。表情を作っていないときに、生真面目そうな素顔がチラリとうかがえて可愛らしい。彼女のファン以外には無用の映画かも。

60

2020/04/17

ウエスト・サイド物語

ウエスト・サイド物語|soe006 映画スクラップブック
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WEST SIDE STORY
1961年(日本公開:1961年12月)
ロバート・ワイズ ジェローム・ロビンス ナタリー・ウッド リチャード・ベイマー ラス・タンブリン ジョージ・チャキリス リタ・モレノ

上映時間と比例するくらい、いろいろ、盛りだくさんに書こうと思っていたのだが。
いざ書こうとしたら……いまさら何を?

主役の二人(リチャード・ベイマー&ナタリー・ウッド)が瑕瑾で、特にナタリー・ウッド。歌の吹替えは(マーニ・ニクソンが素晴らしいので)、それはそれでいいんだけど、「アイ・フィール・プリティ」のダンスが、(他のダンスナンバーがとても素晴らしいので)はなはだしく見劣りする。部屋の中を走り回っているだけだもんなあ。何回観ても、このシーンを観るたびに彼女じゃなかったら、とため息ついてしまう。

細かいところでは色々あるけど……口笛とニューヨークの俯瞰ショットが重なって、ラス・タンブリンたち不良グループが指を鳴らして立ち上がり、対立しているプエルトリコ移民のグループがストリートを滑るように踊りだす、と……もうたまらん!
まず音楽! そしてダンス! それを捉えるキャメラ! 映像とリズムをシンクロさせた躍動感ある編集! リアルかつ機能的な美術セット!

1961年12月の日本公開から(家庭用ビデオが普及した)80年代半ばまで、映画館に「ウエスト・サイド」がかかると客席はいつも満杯になった。名画座の切り札的看板番組。

本作が大ヒットしたあと、ただひたすらに楽しいだけのMGMミュージカルが(その数年前から興行不振ではあったものの)完全に埋葬された。
以降、「サウンド・オブ・ミュージック」、「マイ・フェア・レディ」、「ラ・マンチャの男」、「屋根の上のバイオリン弾き」。ドラマ重視のブロードウェイ・ヒットの映画化ばかり。

文芸的要素など不要。ただただ面白く愉快、明朗で洒落ていて素敵な、ゴキゲン気分にさせてくれる、その一点にのみにスタッフ&出演者が奉仕しているMGMミュージカルこそ、ミュージカル映画の王道だと断言しているおれだけど……

個人的に、オールタイム映画ベストテン候補の1本。

音楽は、映画のサントラ盤ほか、ブロードウェイ・キャスト版、オスカー・ピーターソン(Verve)、アンドレ・プレヴィン(Contemporary)、スタン・ケントン楽団(Capitol)、デイヴ・ブルーベック(Columbia)、リッチー・コール(Venus)などなど録音盤が沢山出ている。
普段よく聴くのは、バーンスタイン自身がロサンゼルス・フィルハーモニックを指揮したグラモフォンの「シンフォニック・ダンス」(これ書きながら今も聴いている)。バーンスタインの自作自演では、キリ・テ・カナワやホセ・カレーラスなど豪華キャストの録音盤も出ているが、オペラ風で立派すぎて、映画の(下町で不良どもが喧嘩している猥雑な)雰囲気が消えちゃってるのが残念。

スティーヴン・スピルバーグ監督初のミュージカル映画となるリメイク版(2020年12月公開予定)は、はたしてどうなりますことやら。

80

2020/03/06

スイート・チャリティ

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SWEET CHARITY
1968年(日本公開:1969年05月)
ボブ・フォッシー シャーリー・マクレーン ジョン・マクマーティン チタ・リベラ リカルド・モンタルバン サミー・デイビス・ジュニア

オーバーチュアとインターミッション付きで2時間20分。元ネタの「カビリアの夜」はフェリーニ映画のなかでは「道」と並んで好きな作品だし、シャーリー・マクレーンは大好きな女優ではあるけど、映画の出来はどうにも野暮ったい。
ストーリーは先刻承知なうえに、ヒロインを取り巻く男優陣に華がないので恋愛話にときめきがない。シャーリー嬢(当時34歳)はまだ可愛い。10年前に作られていたらもっと可愛かったろう。
ボブ・フォッシーの独特な振り付けがいちばんの魅力で、ダンス・シーンは一見の価値あり。ニューヨークの名所をロケしたダンス場面も趣向があっておもしろい。サミー・デイビスも元気だ。
DVDはシネスコをトリミングしたビスタサイズ。歌の場面で音声がモノラルからステレオに切り替わるので吹き替えみたいな違和感がある。

DVD特典にハッピーエンド・バージョンのエンディングが付いていたが、野暮の極み。公開版のほうが断然いい。

60

2020/03/06

オール・ザット・ジャズ

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ALL THAT JAZZ
1979年(日本公開:1980年08月)
ボブ・フォッシー ロイ・シャイダー ジェシカ・ラング アン・ラインキング リーランド・パーパー エリザベート・フォルディ ベン・ヴェリーン クリフ・ゴーマン ジョン・リスゴー

この映画について、何か書くのは難しい。
というか、めんどくさい。
文字に起こして説明したいタイプの映画じゃないからね。

主人公は、ボブ・フォッシー自身をモデルにしたブロードウェイの演出家ジョー・ギデオン(ロイ・シャイダー)。熱いシャワーを浴び、充血した眼に目薬をさし、アルカセルツァー(鎮痛薬)とデキセドリン(覚醒剤)を服用して気合をいれる。

「イッツ・ショータイム、フォークス!」

酒と煙草とクスリとセックスと仕事に依存し、かろうじて日々の生活を維持してきたギデオンだったが、新作ミュージカルのリハーサル中に過労で倒れ心臓の手術をうける。
麻酔を打たれたギデオンは昏睡のなか、花嫁衣装をまとった死の女神アンジェリーク(ジェシカ・ラング)に誘われ、現実と創造が混濁する意識のなかを彷徨い、迫りくる死と戯れ、死体袋に収容される。

こういった私小説的な映画は作家の独りよがりに陥ってしまいがちだが、緻密な脚本と絶妙な編集を得て、奇跡的に傑作になった。
本編でギデオンが何度もしつこく「レニー・ブルース」の編集をやり直していたように、この映画も編集にかなり時間をかけたんじゃないかと思う。

全般的にシーンのつなぎがシャープ&ドライ。
例えば、恋人(アン・ラインキング)と娘(エリザベート・フォルディ)による微笑ましいダンスの場面でも(平凡な監督だったら)ギデオンの感涙リアクションを入れて(もっと凡庸な監督だったら)ギデオンの感謝のセリフも入れて、心温まるお涙頂戴にしてしまうところを、非情にもバチッと断ち切って翌朝のシャワー・シーンにつなげる。
ストーリーがウェットになるのを恐れているようにも感じられる。
倒れたギデオンが病院に運ばれる場面を省略し、女神が白いベールをめくる短いインサート・カットで説明してしまう手際の良さ、見事なものだ。

成功のもうひとつの要因は、(死を扱っている映画なのに)全体にシニカルなユーモアに満ちていること。くわえタバコで咳き込みながら診察する医者の場面は狙いすぎな感じもするが。公演中止の際に支払われる保険金の計算をしている場面に、グロテスクな開胸手術のカットをインサートするアイディアは強烈。

余談:初日でコケて公演打ち切りになると利益がでるという、メル・ブルックス「プロデューサーズ」の理屈はよく分からなかったが、本作の、公演中止になると保険金が支払われ、利益がでるという仕組みはよく分かった。それと公演の準備で支払われる製作費の内訳も、たぶん実際の数字を使っているみたいで、とても興味深かった。

この映画が好きな理由は、(上記余談にあるような)本物のショービジネス、ブロードウェイの舞台裏を誠実に克明に、赤裸々に描いていることと、主演のロイ・シャイダーはもちろんのこと、出演している役者・ダンサーに実在感があること。
例えば、入院したギデオンの代理演出を依頼されるジョン・リスゴー。短い出演の小さな役なのに、実に巧い芝居を見せる。女の子にサイン求められたときのペンの筆使いが絶妙だ(見逃すなかれ!)。
スタンダップコメディアンを演じるクリフ・ゴーマンも、レニー・ブルースのアイロニックな雰囲気をよく再現していた。

この映画はミュージカルではないが、新作公演の準備が進むにつれて幾つかのダンスシーンが披露される。ジョージ・ベンソンのBGMを使った巻頭のオーディション場面もいいが、プロデューサーやスポンサーの前でリハーサルされる「エア・ロティカ」は、振付師ボブ・フォッシーの本領発揮。子どもには見せられない。元妻で本公演の主役オードリー(リーランド・パーパー)のリアクションがいい。

死体袋のジッパーが閉じられて映画は終わり、エセル・マーマンが歌う「ショーほど素敵な商売はない」がエンドクレジットに流れる。これはボブ・フォッシーの皮肉か本音か?
おそらく両方だろう。

70

2021/09/15

リトルショップ・オブ・ホラーズ

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LITTLE SHOP OF HORRORS
1986年(日本公開:1987年04月)
フランク・オズ リック・モラニス エレン・グリーン スティーヴ・マーティン ヴィンセント・ガーディニア ジェームズ・ベルーシ ジョン・キャンディ クリストファー・ゲスト ビル・マーレイ ティシャ・キャンベル

個人的にミュージカル映画ベストテンの1本。

気が滅入っているときの特効薬。娯楽映画はかくあるべし。

リトルショップ・オブ・ホラーズ

ギリシャ劇の合唱隊みたいに進行役として各場面に登場する黒人三人娘が最高。
凄いおっぱいと凄い歌唱のエレン・グリーンが最高。
リック・モラリスの情けない笑顔が最高。
アクが強くて好きになれないスティーヴ・マーチンも本作の歯医者は適役の怪演。
侵略宇宙生物グリーンなワルの造形と操演が凄い、声も凄い。

1950年代アメリカの美術がよろしく、再現したパインウッド・スタジオの贅沢なセットが素晴らしい。この世界を構築したフランク・オズのセンスが素晴らしい。
すべてはハワード・アシュマン&アラン・メンケンの歌曲があってのもの。
「リトル・マーメイド」や「美女と野獣」よりも断然こっち。プロローグからエンディングまで全部のナンバーが素晴らしい。

リトルショップ・オブ・ホラーズ

DVDに収録された監督の音声解説やメイキングも最高に素晴らしい。やっぱり映画は手工芸品(マニュファクチュア)だ。コンピュータ(オートメーション)ではこうは作れない。追加撮影となった黒人三人娘のラストショット裏話とか、嬉しくなってしまう。

70

2020/04/19

世界中がアイ・ラヴ・ユー

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EVERYONE SAYS I LOVE YOU
1996年(日本公開:1997年10月)
ウディ・アレン アラン・アルダ ゴールディ・ホーン ドリュー・バリモア ジュリア・ロバーツ ティム・ロス ナターシャ・リオン

ホーム・パーティの余興にイツァーク・パールマンがバイオリンを弾いてるくらい裕福な家族。その一家の一年間の出来事を、(それぞれの恋愛事情を主軸に)次女ナターシャ・リオンのナレーションでスケッチしたウディ・アレンのミュージカル・コメディ。

配役が超豪華。お父さん(弁護士・民主党支持)アラン・アルダ、お母さん(資産家の娘)ゴールディ・ホーン、腹違いの姉ドリュー・バリモア、その婚約者にエドワード・ノートン、双子の妹にナタリー・ポートマンとギャビー・ホフマン、義理の弟(共和党支持)ルーカス・ハース、お母さんの元夫でナターシャ・リオンの実の父親(フランス在住の作家)ウディ・アレン、その父親が恋心を寄せる美女にジュリア・ロバーツ、仮出所の与太者にティム・ロス。おじいちゃんパトリック・クランショー、(なぜかドイツ人の)家政婦トルード・クライン、宝石店のエドワード・ヒバート他、小さな役でも個性が面白い出演者たち。
バリモアの婚約破棄をめぐって親子で言い争ってるとき、家政婦さんと妹たちが玄関ロビーでホッケーやってたりとか、デティールが妙に面白い。

ロケーションがまた豪華。ニューヨークの春夏秋冬、夏のヴェニス、パリのクリスマス(ノエルって書いたほうがいい?)。観光名所をこれでもか、ってくらいカラフルに美しく撮ってある。写真集にまとめてもいいくらい綺麗。撮影監督はアレン映画常連のカルロ・ディ・パルマ。

音楽は、ウディ・アレンがこれまで自作のBGMで使ってきたような、1920-50年代に作られたスタンダード・ナンバーばかり。
これを出演者が吹替えなしで歌っているのが嬉しい(ドリュー・バリモアだけは吹替えだったらしい、残念)。ジュリア・ロバーツなんか、わざと下手に歌わせているのではと疑いたくなるほどだが、それがかえって微笑ましく、カワイイ。意外だったのがティム・ロスの美声。この汚れ役は演じていて楽しかったろうなあ。

ダンスも出演者本人が頑張ってる。しかも「フラッシュダンス」みたいに編集で誤魔化さないで、かつてのMGMみたいなカット割りで撮影されている。これってとても重要。
このあと製作されたバズ・ラーマンの「ムーラン・ルージュ」やロブ・マーシャルの「NINE」のような、MTV感覚のミュージカル映画には違和感があって、カッコイイとは感じても好きにはなれないんだ。

映画が始まるといきなり「ジャスト・ユー、ジャスト・ミー」をエドワード・ノートンが歌う。お世辞にも上手とは言えないが、頑張ってるなあ、と。
頑張ってる人を見ると応援したくなるじゃない。演技者と観客がグッと近づくんだよね。
歌はニューヨークの住人たちにリレーされ、リラックスした雰囲気が作られる。観ている人に幸福感をもたらす。この映画がどんな映画か、このファースト・シークェンスに提示されているわけで、それは成功している。

エドワード・ノートンは「宝石店のダンス」でも頑張ってる。ダンサーたちの群舞の背後でせっせとタップ踏んでる姿が健気だ。
「病院のダンス(メイキン・ウーピー!)」、拘束衣を脱ぎ捨てた精神病患者がモーリス・ベジャール風にジャンプして踊りだすのが面白かった。
「葬儀場のダンス」、死んだらおしまい、生きているうちに人生を愉しめ、というウディ・アレン哲学。ダンスにトリック撮影を用いているのは、フレッド・アステアのオマージュなんだろうな。
「ハロウィン・シークェンス」、こんな可愛いハロウィン見たことなかった。「月光のいたずら」、「チャイナタウン、マイ・チャイナタウン」、「チキータ・バナナ」、ちっちゃい子供たちがこんな古い歌よく知ってたなあ。家政婦さんに締め出し食らったダンディな男の子も可愛い。彼が歌おうとしていた曲は「プリテンド」か。
「マルクス・パーティ」、ダンスにマルクス兄弟の仕草が取り入れられていて楽しい。メル・ブルックス「プロデューサーズ」のヒトラー・オーディションも面白かったが、パーティ出席者全員がマルクス兄弟の仮装だなんて、このアイディア面白すぎる。
そして、アレンとゴールディ・ホーンによるファンタスティックな「セーヌ河畔のダンス」。タイミングを合わせようと必死になっているアレンの緊張感が、その表情にあらわれていて微笑ましい。

ダンスの振付けは、前作「誘惑のアフロディーテ」でもコロスのエンディング場面を担当していたグラシアーレ・ダニエーレ。振り返れば、アレン監督はあのころからミュージカルを撮りたくて、準備してたのだろうか。
また、のちのことに思いをめぐらせれば、これをきっかけに「ローマでアモーレ」や「ミッドナイト・イン・パリ」などの海外ロケへと向かったのであろうか。

ウディ・アレンがヴェニスでまさかのジョギング! と驚いたけど、「マンハッタン」のクライマックスでも彼は恋人のマンションまで走ってた。「アニー・ホール」でもアニーとの出会いはテニスコートだったし。運動とは無縁の人と勝手に思い込んでたけど、実生活ではエクササイズとか、身体に気を使ってるんじゃないのかな。でないと高齢で映画監督なんか続けられないもんな。

ミュージカル映画といえばとディズニー・アニメばかりだった不毛の1990年代に、突如として(ウディ・アレンという)思いも寄らないところから新作が出てきた。公開当時は、その新鮮な驚きに拍手を贈ったのだが。
あれからビデオで繰り返し観るたびに、どんどん好きになる。ほんとうに微笑ましいチャーミングな映画。死ぬまでにあと10回くらいは楽しみたい。

70

2020/03/01

ムーラン・ルージュ

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MOULIN ROUGE!
2001年(日本公開:2001年11月)
バズ・ラーマン ニコール・キッドマン ユアン・マクレガー ジョン・レグイザモ ジム・ブロードベント リチャード・ロクスバーグ ケリー・ウォーカー マシュー・ウィテット

1900年のパリ、名物キャバレー「赤い風車」を舞台に、薄幸の踊り子と戯作者の悲恋を描いた、製作費5000万ドルの絢爛たる超豪華スペクタクル・ミュージカル。
豪華な上に豪華を重ねた超豪華な美術とデラックスな衣装、ヒット・ポップスで全編を賑やかに囃し立て、仕上げにデジタル合成のCGでゴテゴテ飾りつけた、これでもかっ!ってほど贅沢を尽くした、徹頭徹尾、まじで圧倒される悪趣味映画の決定版。

アレクサンドル・デュマの「椿姫」とプッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」をこねくり回してでっちあげた、古典的かつ安っぽいストーリー。エリック・サティやロートレックなど実在の人物も登場する。

以前、NHK-BSで放送されたとき、冒頭の20分くらいで(クラクラして)観るのをやめた。太閤秀吉の黄金の茶室なぞ鼻で笑う。吉原全部を貸し切って豪遊したという紀伊国屋文左衛門でさえ、もう少し分別のあるお金の使い方をしたのではあるまいか。
すべてにおいて過剰なあまり、世紀末のデカタンスなパリの香りも、薄幸美女の悲劇も、パーッと吹っ飛んじゃって、なにがなんだか分からんままに2時間が過ぎてゆく。

主演はニコール・キッドマン(踊り子)とユアン・マクレガー(戯作者)。歌は吹き替えでなく、本人歌唱を同時録音で収録したとのこと。ふたりともうまい。
しかし、ダンス場面は細かいカット編集で、さらにポスプロでCGなどの視覚効果を合成している。スピーディでかっこいいし今風なのは認めるが、ミュージカル映画は役者のダンス(芸)を楽しみたいという、昔ながらのファンには嫌われるだろう。
そのあたりはバズ・ラーマンもしっかり自覚したうえで、バッサリ切り捨てている。選曲されているのがMTV以降のヒット曲中心でしょ? 「愛と青春の旅だち」や「ボディガード」を観たことある人たち、その世代をターゲットに作った。MTVの懐メロ特集デラックス版だ。

65

2020/03/04

シカゴ

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CHICAGO
2002年(日本公開:2003年04月)
ロブ・マーシャル レニー・ゼルウィガー キャサリン・ゼタ=ジョーンズ リチャード・ギア クイーン・ラティファ ジョン・C・ライリー ボブ・フォッシー

ボブ・フォッシー作のミュージカル「シカゴ」(初演:1975年)を、ブロードウェイの振付師・演出家のロブ・マーシャルが監督して映画化。
殺人罪で刑務所に収監された二人の女優が、守銭奴弁護士と結託し、スキャンダルでマスコミを煽って世間の同情を集め、無罪放免を勝ち取ってステージに復帰、人気を得て歌い踊る。不道徳極まりないミュージカル喜劇。

スター(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)と駆け出し(レニー・ゼルウィガー)の、二人のキャラクター造形が強烈だ。ショー・ビジネス界でしたたかに生きていく女優魂をみごとに体現している。歌、ダンスともに素晴らしい。
冒頭のゼタ=ジョーンズ「オール・ザット・ジャズ」がカッコいい。ゼルウィガーは記者会見のマリオネットのマイムが、彼女の容貌とマッチして可愛かった。
脇で良いのは、刑務所の看守(クイーン・ラティファ)「ホエン・ユア・グッド。トゥ・ママ」と冴えない亭主(ジョン・C・ライリー)「ミスター・セロファン」。
弁護士(リチャード・ギア)「ラズール・ダズール」も悪くはないけど、もう少し頑張ってほしかったな。タップダンスを足元撮らないでバストで追うのは、ミュージカル映画として如何なものかと思う。

ストーリーがめちゃくちゃ面白いし、明るく楽しい。歌もダンスも(元のステージが、再演につぐ再演でロングランを続けているだけあって)磨きがかかっている。
映画初監督のロブ・マーシャルだが、無駄な場面がなく、展開にスピードがあって良かった。MTV以降のミュージカルなので編集に凝ってる、というか編集で誤魔化してるようなところが映画を安っぽくしてる。舞台演出出身なのにね。
だからこそ舞台でやれない映像ならではの編集に凝ったのかな?

映画の成功は、ボブ・フォッシーによるところが大きいように思う。

70

2020/04/20

プロデューサーズ

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THE PRODUCERS
2005年(日本公開:2006年04月)
スーザン・ストローマン ネイサン・レイン マシュー・ブロデリック ユマ・サーマン ウィル・フェレル ゲイリー・ビーチ ロジャー・バート メル・ブルックス

2005年製作のミュージカル版。
オリジナルは1968年の「プロデューサーズ」。これがメル・ブルックスの映画監督デビューで、アカデミー脚本賞を受賞。それをメル・ブルックス自身の作詞・作曲・脚色で2001年にブロードウェイ・ミュージカル化し、トニー賞12部門受賞。
さらに舞台の演出・振付を手掛けたストローザー・マーティンが、主演のネイサン・レイン、マシュー・ブロデリック、ゲイリー・ビーチ、ロジャー・バートで再映画化したのが本作。製作はメル・ブルックスのブルックスフィルム。

メル・ブルックスが日本で紹介されたのは、1974年の「ヤング・フランケンシュタイン」(75年10月公開)。古典映画のパロディでモノクロだったにもかかわらずそこそこヒットし、前作の「ブレージングサドル」も続けて76年2月に公開されたものの、「プロデューサーズ」オリジナル版はずっと日本未公開でビデオも出ない。噂ばかり耳にしていたが、NHK-BS2で観ることができた。その後、2000年に日本でも劇場公開されたらしい。オリジナル版の主演は、ゼロ・モステル(マックス・ビアリストック)とジーン・ワイルダー(レオ・ブルーム)。

シモネタ満載の下品なコメディが、アカデミー賞やトニー賞を受賞してしまう現実に、米国ショービジネス界のユダヤ人脈、ナチス嫌いがくっきり浮かび上がる。

ミュージカル版は、「ヒトラーの春」公演が意に反して大成功を収めたあとの展開が、オリジナルと異なる。よりミュージカルらしいエピソードに変更されていて、ネイサン・レインの本作最大の見せ場となる。初見のときは、そのエンタメ精神に感心したものだが。

映画は、特にコメディ映画は、そのときの気分・体調によって評価が上下する。
初見では、70点(年間ベストテン候補)付けるくらい楽しんで観たんだけど、今回は60点(標準作)に近い65点(上出来)。初見のときは、鳩の「ハイル・ヒットラー」にもゲラゲラ大笑いしてたんだけどなあ。

「笑い」って難しいね。

メル・ブルックスは「ヤング・フランケンシュタイン」もブロードウェイで上演(2007年/演出・振付は本作と同じストローザー・マーティン)したそうだが、そっちの評判はどうだったんだろう?

65

2020/03/04

NINE

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NINE
2009年(日本公開:2010年03月)
ロブ・マーシャル ダニエル・デイ=ルイス マリオン・コティヤール ペネロペ・クルス ジュディ・デンチ ケイト・ハドソン ソフィア・ローレン ニコール・キッドマン

周囲からチヤホヤされて勘違いしている無能でマザコンな映画監督が、しかめっ面しながら綺麗な女性たちを行ったり来たりしているだけのストーリー。
「シカゴ」で過大評価されたロブ・マーシャル監督の化けの皮が剥がれた、ミュージカルもどきのプロモーション・ビデオ。

旬なスター女優を(若いのから歳食ったのまで)ズラーリ並べて、見た目カッコいいミュージック・シーンを適当に作り、玄人受けのいいダニエル・デイ=ルイスで糊付けしただけの、本当にそれだけの薄っぺらい映画。
ケイト・ハドソンのダンス場面に、意味なくモノクロのカットを差し込んで、「どうよ、カッコいいでしょ!」と、ひとり悦に入ってるロブ・マーシャルの素顔が透けて見える。
ダニエル・デイ=ルイスの苦悩の表情は、(あまりにも脚本が酷いので)どんな芝居をしたらよいのか分からず悩んでいるようにも見える。

女優陣は超豪華! マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルス、ケイト・ハドソン、ニコール・キッドマン、ファーギー、ジュディ・デンチ。なんと懐かしのソフィア・ローレンまで。
これらスター女優のカタログ・ビデオとしてなら観る価値はある!

と、言い切ったあとで矛盾になるけど……
この映画、歌とダンスの場面を全部カットして、40分の短縮版にしたら、少しは筋が通った「映画」として見られるかも。

60

映画採点基準

80点 オールタイムベストテン候補(2本)
75点 年間ベストワン候補(16本)
70点 年間ベストテン候補(74本)
65点 上出来・個人的嗜好(70本)
60点 水準作(65本)
55点以下 このサイトでは扱いません

個人の備忘録としての感想メモ&採点
オススメ度ではありません