1990年代のロマンチック・コメディ|映画スクラップブック


1990年代のロマンチック・コメディ(8本)

2022/02/14

恋のためらい フランキーとジョニー

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FRANKIE AND JOHNNY
1991年(日本公開:1992年01月)
ゲイリー・マーシャル アル・パチーノ ミシェル・ファイファー ヘクター・エリゾンド ネイサン・レイン ケイト・ネリガン ジェーン・モリス グレッグ・ルイス K・カラン ティム・ホッパー

刑期を終えて出所したばかりのジョニー(アル・パチーノ)は、ニューヨークの大衆食堂でコックの職を得て働き始める。同じ職場でウェイトレスをやっているフランキー(ミシェル・ファイファー)を口説くが、彼女は過去を隠し、頑なに心を開こうとしない。

恋のためらい フランキーとジョニー

おっさんとおばさんの下町人情ロマンス。

都会生活の臭いがする前半がいい。東京で独り暮らししていた頃を思い出す。

恋のためらい フランキーとジョニー

ジョニーは「ロミオとジュリエット」を持ち歩いている。
中古ビデオデッキも買えない貧乏人にとって、読書はいちばんリーズナブルな娯楽だ。

恋のためらい フランキーとジョニー

低所得者の普段着(衣装:ロザンナ・ノートン)に現実感があっていい。
ミシェル・ファイファーも前半のすっぴんに魅力がある。
後半はふたりの過去語りがもたつくものの、ドビュッシー「月の光」で一気に逆転。
フッ素入り歯磨きで爽やかなラストをむかえる。

食堂の店長役は、ゲイリー・マーシャルの常連俳優ヘクター・エリゾンド。

シナリオがハリウッドに売れたと狂喜する同僚のコック(グレン・プラマー)に幸あれ!

65

2022/02/15

デーヴ

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DAVE
1993年(日本公開:1993年08月)
アイヴァン・ライトマン ケヴィン・クライン シガーニー・ウィーヴァー フランク・ランジェラ ケヴィン・ダン ベン・キングズレー チャールズ・グローディン ヴィング・レイムス ボニー・ハント ローラ・リニー

浮気のアリバイ工作のため替え玉を探していた米国大統領ケヴィン・クラインは、そっくりさんの男(ケヴィン・クライン二役)を見つけた日の夜、脳卒中で倒れ意識不明の重体。この機に乗じて大統領の椅子を狙う補佐官の陰謀により、そっくり男は当分のあいだ大統領を演じることになる。周囲の目を嬉々として欺きながら、正直者の替え玉男はちゃっかり大統領夫人のハートを掴み、政治の方もよろしくやっちゃう。

デーヴ

楽天的で行動派の主人公。フランク・キャプラ映画のような政治喜劇。

人材派遣の仕事をしていた男が大統領に成りすまして、失業者雇用政策を推進させるアイディアがいい。交通違反で警官に停められたときの物真似ショーとか、奇をてらうことの無い定番エピソードの積み重ねでラストまで引っ張る、ゲーリー・ロスのオリジナル脚本が抜群に上手い。「ビッグ」で脚本家デビューしたゲーリー・ロスは、後に「カラー・オブ・ハート」や「シービスケット」を監督。

デーヴ

場面の大半を占めるホワイトハウスは撮影許可が出なかったので、(一般公開されていないプライベートルームを含めて)スタジオにセットを組み、外観はLAにオープン・セットを建てたとのこと。プロダクション・デザイナーはJ・マイケル・リバ。

二役で主演のケヴィン・クラインはもとより、大統領補佐官フランク・ランジェラ、広報担当ケヴィン・ダン、護衛官のヴィング・レイムス、大統領夫人シガーニー・ウィーヴァー、副大統領ベン・キングズレー、それぞれ適役好演。キャスティングの勝利。
大統領秘書で愛人のローラ・リーニーは本作あたりから売れっ子になった。

実在の国会議員やテレビのリポーター、司会者、解説者も本人役で実名出演。ライトマン映画のスター俳優アーノルド・シュワルツェネッガーもワンショットのみ特別出演。テレビ番組でインタビューに応じるオリヴァー・ストーンの陰謀云々発言がギャグになっていて大爆笑、ここがいちばん笑った。

デーヴ

アイヴァン・ライトマンは、映画監督、映像作家というより「ハリウッド業界人」の印象が強い。ゲスト・カメオ含め数多くの著名タレントが集まったのも、プロデューサー・監督のアイヴァン・ライトマンの人柄、人望の篤さゆえのことだろう。

キャリアの初期はバイオレンス・サスペンス「ウィークエンド」やクローネンバーグの「ラビット」の製作も担当していたが、監督作品のほとんどが刺激のないファミリー向けコメディだったため、1980年代、デヴィッド・リンチやテリー・ギリアムに夢中になってた映画ファンはまったく相手にしてなかった。「ゴーストバスターズ」「ツインズ」「キンダーガートン・コップ」「刑事ジョー ママにお手あげ」など、テレビ向けのヌルいコメディが洋画劇場で頻繁に放送されていたので、一般の知名度は高い。

デーヴ

「デーヴ」はフランク・キャプラ・オマージュの秀作。

70

2021/12/11

フォー・ウェディング

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FOUR WEDDINGS AND A FUNERAL
1994年(日本公開:1994年10月)
マイク・ニューウェル ヒュー・グラント アンディ・マクダウェル クリスティン・スコット・トーマス サイモン・キャロウ ジェームズ・フリート ジョン・ハナー シャーロット・コールマン コリン・レッドグレーヴ アンナ・チャンセラー デヴィッド・バウアー ローワン・アトキンソン ジェレミー・ケンプ

4つの結婚式と1つの葬式で構成された、その着眼点に優れたロマンチック・コメディ。

主演はヒュー・グラントとアンディ・マクダウェルだけど、ヒューを取り巻く家族・友人・元彼女たちと、多彩な登場人物が入り乱れての賑やかな仕掛けは、後年「ラブ・アクチュアリー」を監督したリチャード・カーティスの脚本らしい。

フォー・ウェディング

ひとつひとつのエピソードは呆れるほどありきたりなものだけど、ポップスBGMを多用したお洒落な場面作りで飽きさせない。セリフも面白いものが散りばめられている。
強引というか、安易な流れも多々見受けられるものの、この脚本家が作る人物は繊細かつ素直なので好感がもてる。

男のマリッジ・ブルーを描いているのが当時は珍しかった。男視点でみると主人公はどうしようもなく駄目な奴なのだけど、ヒュー・グラントが演じると、まぁ許せるというか、こいつならしようがない、みたいな。憎めないダメ男を演じたら天下一品。

フォー・ウェディング

最初っから「FUCK」が(故意に)連発されるのは嫌だったが、教会で(周囲に意味を悟られないよう日本語で)「バカ」を連発するギャグには笑ってしまった。

葬式のエピソードからラストに至る流れがグダグダ。結婚式と葬式でしか会っていない、つまり4、5回しか会っていない相手、アンディ・マクダウェルのキャラがきちんと描けてないので、ラストで二人がキスする場面にカタルシスがない。というか無理やりな予定調和でダサい。
司祭(Mrビーン=ローワン・アトキンソン)の言い間違えギャグも泥臭くしつこい。

60

2021/12/26

誘惑のアフロディーテ

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MIGHTY APHRODITE
1995年(日本公開:1996年12月)
ウディ・アレン ヘレナ・ボナム・カーター ミラ・ソルヴィノ マイケル・ラパポート ピーター・ウェラー クレア・ブルーム オリンピア・デュカキス ジャック・ウォーデン F・マーレイ・エイブラハム

「アニー・ホール」以降のウディ・アレンはどれもこれも全部好き。
とりわけ本作は、ウディ・アレンのベスト5に入れたい。

誘惑のアフロディーテ

まったく人生とは皮肉なもの。
信じがたく、奇想天外で、悲しくて、素晴らしい。

どれも真実。

だからこう言おう、あなたがニッコリ微笑めば、世界中が微笑み返す。
忘れないで、あなたがニッコリ笑えば、太陽はいつも明るく輝く。

誘惑のアフロディーテ

だから、いつも微笑みを。

70

2022/02/15

素晴らしき日

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ONE FINE DAY
1996年(日本公開:1997年07月)
マイケル・ホフマン ミシェル・ファイファー ジョージ・クルーニー メイ・ホイットマン アレックス・D・リンツ チャールズ・ダーニング エレン・グリーン シーラ・ケリー アマンダ・ピート マイケル・マッシー ジョン・ロビン・ベイツ バリー・キヴェル ホーランド・テイラー ジョー・グリファシ ピート・ハミル

子連れシングルのミシェル・ファイファーと、同じく子連れシングルのジョージ・クルーニーが、仕事に追われ子供に振り回され、インディ・ジョーンズよりも慌ただしく忙しくスピーディに、雨のニューヨークを駆けめぐる。

素晴らしき日

ジョージ・クルーニーのやんちゃぶりが中途半端でスッキリしない。
災難に遭う度に崩れてゆくミシェル・ファイファーの服装とメイクが面白かった。

素晴らしき日

もっとスマートに出来ただろうに、同じ言い争いが何度も繰り返されて芸がない。
いっそのことサッカー場からの帰りで終わった方がスッキリしていたのじゃないのか。

登場人物の個性も、取ってつけたようなステレオタイプで工夫がない。
脚本の構成がヘタ。ヤマになる要素を押してないから盛り上がらないしカタルシスがない。テーマの詰めが甘い。

素晴らしき日

お疲れさまでした、おやすみなさい。

60

2022/01/06

ユー・ガット・メール

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YOU'VE GOT MAIL
1998年(日本公開:1999年02月)
ノーラ・エフロン トム・ハンクス メグ・ライアン  グレッグ・キニア パーカー・ポージー ジーン・ステイプルトン スティーヴ・ザーン ダブニー・コールマン ジョン・ランドルフ

「桃色の店」の舞台をブダペストからニューヨークへ、文通からEメールに変えて、トム・ハンクスとメグ・ライアン、監督ノーラ・エフロンの「めぐり逢えたら」トリオが手堅くリメイク。
メグとトムは一緒の店で働いているのではなく、老舗の小さな児童書専門店の店主とディスカウントで荒稼ぎしてる大手チェーン書店のオーナーという設定に変更されている。

ユー・ガット・メール

脚本もノーラ・エフロン(妹のデリア・エフロンとの共作)だけど、この人の古い映画へのオマージュは好感が持てる。選曲のセンスもいい。ラストの「虹の彼方に」は反則級。
メグの店で働いている店員さんのサブストーリーが薄い。

ユー・ガット・メール

モデムを使って電話回線でパソコンをネットにつないでる。ピポパポ、ピィーギュルギュル、懐かしい音が聞ける。タイトルに(すごく素朴な)3Dコンピューターグラフィックスが使われているのもレトロチック。
1990年代ニューヨーク(アッパー・ウエストサイド)の風景が随所に見られ観光映画の趣も備えている。映像記録として貴重。

男たちがみんな「ゴッドファーザー」のセリフを(当たり前のように)暗記しているのが面白い。スターバックスは決断力を試される場所だそうな。

60

2022/02/16

ストーリー・オブ・ラブ

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THE STORY OF US
1999年(日本公開:2000年02月)
ロブ・ライナー ブルース・ウィリス ミシェル・ファイファー リタ・ウィルソン ジュリー・ハガティ ポール・ライザー ティム・マシスン コリーン・レニソン ジェイク・サンドヴィグ レッド・バトンズ アルバート・ヘイグ ヴィクター・レイダー=ウェクスラー

お互いの不満が蓄積している結婚15年目の中年夫婦(ミシェル・ファイファーとブルース・ウィリス)は、子供たちがサマーキャンプに行ってるあいだ別居することに決定。たまに会っても同じ口論を蒸し返してばかりで離婚を考えるが、これまでの結婚生活を思い出し和解する。

どこにでもいる夫婦のよくある話。夫婦喧嘩は犬も食わない。

ストーリー・オブ・ラブ

作者の実体験をベースにロブ・ライナーが「恋人たちの予感」の後日談として企画。

登場人物たちがカメラに向かって語るのは「恋人たちの予感」からのロブ・ライナーの手法だが(ウディ・アレン「アニー・ホール」の真似でもあるし)無くてもよかったように思う。別れましょう、いやだ別れないの繰り返しで展開が膠着しているからすぐに飽きる。変化をつけようとして入れたベネチア・ロケもこれといってストーリーを動かさない。

ラストはミシェル・ファイファーの一人勝ち。女の涙は最終兵器。恋愛のピッチでゴールを決めるのはいつも女性のほうだ。

カフェでの猥談は露悪趣味で見苦しい。原題「THE STORY OF US」というのも下品だ。エリック・クラプトンの主題歌も歌詞がベタで陳腐の極み。
アラン・ツァイベルとジェシー・ネルソンの共同脚本。作り物のセリフが浮きまくり。
ダメ脚本の見本。

ストーリー・オブ・ラブ

レストランで怒りをぶちまけるブルース・ウィリスは、絶対にジャック・ニコルソンを意識して表情を作ってる。

55

2021/12/11

ノッティングヒルの恋人

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NOTTING HILL
1999年(日本公開:1999年09月)
ロジャー・ミッシェル ジュリア・ロバーツ ヒュー・グラント リス・アイファンズ ジーナ・マッキー ティム・マキナニー エマ・チャンバース ヒュー・ボネヴィル ジェームズ・ドレイファス ミーシャ・バートン ヘンリー・グッドマン リチャード・マッケーブ アレック・ボールドウィン

ロンドンの下町で小さな本屋を営むヒュー・グラントと、ハリウッドのスター女優ジュリア・ロバーツが出会って、恋して、ギクシャクが何度かあって、ラストで結ばれる。
脚本は「フォー・ウェディング」のリチャード・カーティス。

ノッティングヒルの恋人

「フォー・ウェディング」でもそうだったけど、女が男に惚れる理由がサッパリ欠落していて、おとぎ話のままで終わってる。主役ふたりを取り巻く奇抜な脇キャラと、面白いセリフ(「007は道に迷わない」とか)が散りばめられているので辛うじて持っている感じ。故人を偲ぶ遺族が思い出の場所に寄贈した公園のベンチとか、素敵なエピソードがたくさん入っているけど、入れてるだけ。ストーリーにほとんど機能してない。

選曲にあわせて場面を作っているのだろう。ヒュー・グラントが市場の通りを歩いている長回しのワンカットで季節の変化をみせた場面も、なんだか取って付けた感じ。頑張って作ったのは分かるけど、そんなことして何の意味があるの。かえってシラケてしまう。
お洒落なポップスBGMの雰囲気で誤魔化してるから、見ているあいだは心地よい。

アレック・ボールドウィンが、ジュリア・ロバーツの元恋人役でカメオ出演。ジュリア・ロバーツは役名ジュリア・ロバーツでも良かったんじゃない? ワイルダー「ねえ!キスしてよ」のディーン・マーチンみたいに。「ゴースト」のデミ・ムーアとかメル・ギブソンの尻とか、整形やボディダブルとか楽屋落ちのギャグやるのなら、実名使って自分自身を演じるキャラにしたほうが、ストーリー的にも宣伝でも絶対強いのに。

ノッティングヒルの恋人

外国映画に出てくるホテルマンって、粋なはからいのおじさんキャラが多い。「一日だけの淑女」(1933年)の頃からの伝統になってるんだな。

玄関に着物姿の等身大のディスプレイが置いてある。リチャード・カーティス(脚本と製作)は日本贔屓なのか? CX「月9」に影響されているのか、「月9」が影響を受けてるのか? 日本のテレビドラマみたいな、安っぽい寓話。

「男はつらいよ」の車寅次郎は、木の実ナナ(松竹歌劇団の花形ダンサー「寅次郎わが道をゆく」)や都はるみ(演歌の女王「旅と女と寅次郎」)に恋をする。身分格差、生活環境の違いで恋愛劇の枷を作りたい脚本家は、とりあえず「男はつらいよ」を観ましょう。

60

映画採点基準

80点 オールタイムベストテン候補(2本)
75点 年間ベストワン候補(18本)
70点 年間ベストテン候補(83本)
65点 上出来・個人的嗜好(78本)
60点 水準作(77本)
55点以下 このサイトでは扱いません

個人の備忘録としての感想メモ&採点
オススメ度ではありません