マーティン・ブレスト(4本)
2022/05/31
ビバリーヒルズ・コップ
BEVERLY HILLS COP
1984年(日本公開:1985年04月)
マーティン・ブレスト エディ・マーフィ リサ・アイルバッハー ジャッジ・ラインホルド ジョン・アシュトン ロニー・コックス スティーヴン・バーコフ ジェームズ・ルッソ ジョナサン・バンクス スティーヴン・エリオット ポール・ライザー ブロンソン・ピンチョット ギルバート・R・ヒル デイモン・ウェイアンズ
ヒットメイカー、ドン・シンプソン&ジェリー・ブラッカイマー製作。
軽快ポップスをBGMに饒舌黒人刑事エディ・マーフィが軽妙洒脱に大活躍。単純明快なストーリーがサクサクとコミカルにテンポ良く、堅物白人刑事たちとの友情で締めるエンディングも後味スッキリの爽快アクション篇。
労働者の街デトロイトの犯罪を扱う刑事と、金持ちの生命財産を守るために働くビバリーヒルズ警察の対比が上手い。黒人と白人の対立(「夜の大捜査線」)ではなく、貧富格差で対比させたところがスマート。センスが良い。
クライマックスの銃撃戦を明るい昼間にしたのが良かった。
暗い画面のアクションは好きじゃないし、笑いが多いこの映画にマッチしない。壁を乗り越えようとする白人刑事コンビのドタバタも、敵の自動小銃の弾が(奇跡的に)刑事たちに当たらない偶然も、夜間撮影だと笑いになりにくい。
陽光に照らされてこそのビバリーヒルズ。悪事は夜に、善行は昼に。
あとDVDの音声解説でも監督が語っていたが、倉庫にダークスーツの男たちが集まっていたら、そいつらは悪党だ。
それを逆手に取って観客を騙したのが「スティング」のFBI。
エディ・マーフィにアテ書きされたようなシナリオだが、音声解説によるとクランクインの1ヶ月前まではシルベスター・スタローン主演で準備されていたとのこと。
スライが降板したので急遽エディ・マーフィに合わせて脚本を直したそうだが、結果としてエディの代表作になってしまった。
スタローン版の脚本はスタローンが持ち帰り、ポーラ・ゴズリング原作「逃げるアヒル」に主人公のキャラクターを移植。メナハム・ゴーラン&ヨーラン・グローブスのキャノンが「コブラ」のタイトルで製作するも、興行振るわずハズレな結果に。「ランボー 怒りの脱出」「ロッキー4/炎の友情」でマネーメイキング・スターのトップを走っていたスライは、このあと急速に凋落してゆく。皮肉なものです。
ちなみに製作者ジェリー・ブラッカイマーの出身地はミシガン州デトロイト。
65点
#マーティン・ブレスト
2022/06/02
ミッドナイト・ラン
MIDNIGHT RUN
1988年(日本公開:1988年12月)
マーティン・ブレスト ロバート・デ・ニーロ チャールズ・グローディン ヤフェット・コットー ジョン・アシュトン デニス・ファリナ ジョー・パントリアーノ ロイス・スミス リチャード・フォロンジー ロバート・ミランダ ジャック・キーホー ウェンディ・フィリップス ダニエル・デュクロス フィリップ・ベイカー・ホール
ヤクザの裏金を横領した会計士と賞金稼ぎの刑事くずれが、ニューヨークからロサンゼルスを旅する大陸横断道中記。
行く手を阻む罠が次から次へと繰り出される豊富なアイデア。
個性豊かな登場人物たち。
臭過ぎず甘過ぎない友情。最高だね!
75点
#マーティン・ブレスト
2022/06/05
セント・オブ・ウーマン/夢の香り
SCENT OF A WOMAN
1992年(日本公開:1993年04月)
マーティン・ブレスト アル・パチーノ クリス・オドネル ジェームズ・レブホーン ガブリエル・アンウォー フィリップ・S・ホフマン リチャード・ヴェンチャー サリー・マーフィ
我儘かつ見苦しい退役将校を演じた、アル・パチーノに圧倒される2時間30分。
「ビバリーヒルズ・コップ」のエディ・マーフィ、「ミッドナイト・ラン」のロバート・デニーロ、本作のアル・パチーノ。スター俳優にたっぷりな芝居をさせて、良いところを引き出す術に長けているマーティン・ブレスト。上手い監督だと思う。
寡作な理由がわからない。
パチーノの自殺をクリス・オドネルが説得するホテルの場面と懲罰委員会での演説シーンは(想像だけど)脚本家はめちゃくちゃ書き直したんじゃなかろうか。一歩間違えば紋切り型の陳腐なドラマになりかねない重要な場面。セリフがよく吟味されている。
ガブリエル・アンウォーとタンゴを踊る場面。
若い女の匂いを身近にしたパチーノに、愉悦の感情が溢れている。
懲罰委員会の後で、パチーノを称賛する女性教師(フランセス・コンロイ)に羞じらう仕草もいい。
タンゴ「ポル・ウナ・カベサ」と、花売り娘のテーマ「ラ・ヴィオレテラ」の使い方もうまい。
「女の香り SCENT OF A WOMAN」を「夢の香り」と意訳した副題はセンスがない。
なんか他に上手い邦題なかったものかと思う。
絶望の淵で自殺を計画する退役軍人、女好きで匂いフェチな盲人。
売りにくいタイプで映画ではある。
ダウンタウンのフェラーリ暴走はやり過ぎで嘘っぽくなってる。感心しない。
映画は、かつてニューヨークにこのビルがあったことを記録している。
70点
#マーティン・ブレスト
2022/06/07
ジョー・ブラックをよろしく
MEET JOE BLACK
1998年(日本公開:1998年12月)
マーティン・ブレスト ブラッド・ピット アンソニー・ホプキンス クレア・フォーラニ マーシャ・ゲイ・ハーデン ジェフリー・タンバー
65歳の誕生日を控えた大富豪アンソニー・ホプキンスを、お迎えにきた死神ブラッド・ピットが富豪の娘(クレア・フォーラニ)に一目惚れする恋愛喜劇。
西洋人は昔から、幽霊だとか悪魔だとか天使だとか、ファンタジーな人物を使ってロマンチックな恋物語を作るのがうまい。
初めて出会った食堂を出たあとの別れで、お互い何度も振り返るがタイミングが悪く、振り返ったときは交互に相手は背中を見せているクロス・ショット、味があってよかった。
いつか使ってやろう。
その直後の事故シーンはすごいショック演出。
あらすじだけで結末は読めているのに見入ってしまう。感動させられてしまう。
3時間は長くない。ラストのオチは無理矢理な感じもあるけど。
イケメン好みの女子でなくても、本作の死神ブラッド・ピットのナイーブな表情には惚れちまう。
さらに格好良いのが大富豪アンソニー・ホプキンスの貫禄と余裕の演技。
マーティン・ブレストは役者の芝居を繊細にたっぷり見せるのが巧い。
食堂でコーヒーに砂糖とミルクを入れる動作をシンクロさせて(小津安二郎か!)若い二人の親和性を、映像であっさり説明する手際の良さ。
好きなものを、ただ奪うことは愛とは言わない。
愛の本質は、生涯を懸けて相手への信頼と責任を全うすること
そして、愛する相手を傷つけないこと。
70点
#マーティン・ブレスト