バド・パウエルのバラッド・プレイ
December 28, 2006
1940年代に、突如始まったビバップ革命。
このムーブメントについては、饒舌な音の配列や、スピーディなテンポについてはよく語られているんですけど……私はバラッド・プレイに関しても、大きな変化をもたらしたように感じられるんですね。
本日の1曲、バド・パウエルの「You Go to My Head ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド」(ヘブン・ガレスピー&ジェイ・フレッド・コーツ)なんか聴きますと、それまでの、スウィング時代にはなかった表現方法がなされているように思えるのです。
まあ、演奏から50年以上を経て、誰もが真似しちゃって手垢まみれの奏法だから、今更ピンとこないかも知れませんが。20年代から順を追ってジャズのバラッド・プレイを聴いていくと、40年代以降は明らかに違うんですね。
美しいメロディを流麗に流しているだけでなく、独特な節回しを混ぜ込んである。メロディの甘いムードに流されない硬質な翳りのようなものが感じられます。パウエルよりも前の時代のピアニスト、例えばアート・テイタムとかテディ・ウイルソンのバラッド・プレイとはひと味違うんです。
そういった側面からみると、モード奏法でエポックメイキング扱いされているマイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」なんかより、バド・パウエルのバラッド奏法は、もっと広範囲に、大きな影響を後世に与えているんじゃないかと思えるんです。
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アメイジング・バド・パウエル Vol.2
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「You Go to My Head」でのパウエルは、メインのメロディを直接演奏せず、終始アドリブで気怠くノスタルジックな雰囲気を表現。こうなると完全にオリジナルな作曲みたいですが、原メロディに忠実なヴォーカルなどの演奏をじっくり聴き込んだあとで、改めてパウエルの演奏を聴き直してみると、「You Go to My Head」が潜在的に持っていたメロディの魅力が、いっそう引き立ってきます。
これもまた、ジャズの醍醐味なんですね。