soe006 明るい表通りで On the Sunny Side of the Street

明るい表通りで On the Sunny Side of the Street

January 8, 2007

私事で恐縮ですが、年末から年始にかけて暗い出来事が続いて、まあそんなゴタゴタをいつまで続けていても埒があかないので、ここいらで気分一新、明るいサウンドで憂さ晴らししましょう……ってことで、本日より「明るい表通りで On the Sunny Side of the Street」の聴き比べスタート!

この曲は、ドロシー・フィールズが作詞しジミー・マクフューが作曲した、1930年の『インターナショナル・レヴュー』からのナンバー。

さあコートを持って、帽子をかぶり、心配事は玄関に置き去りに、
明るい表通りに出ていこう。
足音も軽やかなリズム、明るい表通りで人生も愉快になるさ。
日陰ばかりを歩いてきたけど、そろそろ気分転換しようぜ。
無一文でも、大金持ちロックフェラーの気分を味わえる。
足元には金粉が舞ってるよ!

大不況の憂鬱を歌で吹き飛ばそう、ってことで大ヒットしました。
似たような曲に「苦しみを夢に隠して Wrap Your Troubles in Dreams And Dream Your Troubles Away」というのもあり、こちらも1931年にビング・クロスビーが歌ってヒットしています。

聴き比べ1発目は、先日からのスウィング・バンドつながりでトミー・ドーシー楽団。ミリオンセラーとなった1945年の録音。唄っているのはクラーク・シンガーズです。

サッチモの明るい表通りで

January 9, 2007

明るい表通りで On the Sunny Side of the Street」の2日目は、ルイ・アームストロングによる、同曲の決定的名演。まだトランペットの音に張りがあった1956年12月16日の録音。
少年時代のサッチモは素行が悪く、感化院に収容され、そこで教官にコルネットを教わって音楽の扉を開けます。出所後は食堂の床磨きなどの下働きをしながら、キング・オリバーらと親しくなり、1923年3月31日に初めてのレコーディング。1924年からフレッチャー・ヘンダーソン楽団に1年間在籍したのち、1925年に自身のバンド、ルイ・アームストロング&ホット・ファイヴを立ち上げ、ジャズ・トランペッターのトップに躍り出ました。
ヴォーカル・ジャズに付きもののスキャットも、創始者はサッチモです。

大衆(白人)に迎合した黒人ミュージシャンは、黒人仲間に受けが悪いんですけど、サッチモだけは特別だったんですね。
流行のポピュラーソングも積極的にレパートリーに加え、シャンソン(「セ・シ・ボン」や「バラ色の人生」)やタンゴ(「キッス・オブ・ファイヤー」)までも吸収消化。サッチモの音楽にしてしまいました。

建前上は、1863年1月1日にリンカーン大統領が奴隷開放宣言を布告したものの、黒人差別は1960年代まで根強く残り(いや、いまも残っているんでしょうけど)、そんな中でエンタテインメントの最前線で活躍していたサッチモの苦労は、想像を絶するものだったに違いありません。露出が多く目立つぶん、矢面に立たされますからね。

話は横道に逸れますけど……
シドニー・ルメットの映画『十二人の怒れる男』は、偏見による冤罪事件を扱っているのに12人の陪審員が全員白人なのはけしからん、と鼻息を荒くした人がいたんですね。
映画が製作された1957年に、黒人の選挙権確保のため委員会が設置されているんですよ。公民権法が制定されたのが1964年。
それまでは、食堂やバスなどの公衆の場でも白人と黒人は別。映画館だって、黒人が入場できるのは黒人向けに作られた映画を上映している黒人専用館でした。
古いハリウッド映画をご覧になれば分かります。特定の酒場などを除き、社交の場に黒人は1人もいません。
政府要人に黒人が登用されているのが当たり前みたいな昨今じゃ、ピンとこないかも知れませんけど。

サッチモが活躍していた時代のアメリカは、そんな社会だったってことは重要です。

『五つの銅貨』や『上流社会』などの映画で見るサッチモは、苦労なんて微塵も感じさせない朗らかさなのですが……この人ほど「明るい表通りで」を唄って似合う人はいないと思います。

ジョー・スタッフォードの明るい表通りで

January 10, 2007

明るい表通りで On the Sunny Side of the Street」の3日目は、ジョー・スタッフォードです。

ジョー・スタッフォードは、1920年11月、カリフォルニア州コウリンガ生まれの女性シンガー。トミー・ドーシー楽団の専属コーラス・グループ「パイド・パイパーズ」の紅一点として、フランク・シナトラのバック・コーラスを勤めていました。1944年に同楽団のアレンジャー、ポール・ウェストンと結婚、ソロ歌手として独立。

ドリス・デイ(レス・ブラウン楽団専属)やペギー・リー(ベニー・グッドマン楽団専属)などもそうなんですが、こういったタイプの白人シンガーは黒いフィーリングが稀薄なせいか、いまではジャズ歌手とは認識されていないようですね。
バンド出身歌手はジャズのもう一つの要素、スウィングするリズムに乗って唄うことができるんだから、ジャズ・シンガーの仲間に入れてやってもよさそうなものですが。
しかし、ブルースやゴスペルのフィーリングを持たないヴォーカルをジャズと認めちゃったら、美空ひばりや雪村いづみだってジャズ歌手ってことになっちゃいますし。

まあ、そういうのを厳密に考えていたら、ますますハゲが進行しそうなのでやめておきます。
ジョー・スタッフォードはポピュラー・ソングのアルバムも多いので、そっち系とされているようなところもありますし。

ホリー・コールの明るい表通りで

January 11, 2007

本日の「明るい表通りで On the Sunny Side of the Street」は、ホリー・コール。

ジャズは、アメリカ南部の歓楽街に発祥し、シカゴ、ニューヨークと北上する過程で、より白人向けの音楽に変化してゆきました。伝統的なヨーロッパ音楽の書法に沿うことを「洗練」と呼ぶのなら、確かにそのとおり。やがてティン・パン・アレイの白人ソングライターが作曲したポピュラー・ソングと合体し、ジャズが内包していた泥臭さは、昨今の煙草や酒のようにマイルド化(薄味)されてしまいます。
1940年代になると、黒人のなかにも音楽学校に通い楽譜の読み書きが出来る人たちが増え、自分たちの音楽にあったはずのスピリッツを、呼び戻すという動きが始まります。
その後もいろいろと変遷はあるのですが……面倒臭いので以下割愛。

ひとつだけ書いておきます。
日本のある新進ピアニストがNHK-FMのジャズ番組のインタビューで、「ジャズの伝統や技法になかった、新しい時代のジャズを作っていきたい」と喋っていました。
それって、ジャズじゃないでしょう?

ホリー・コールは、1963年、カナダの東海岸ノヴァスコシア生まれ。両親ともに音楽家の一家で育つ。1986年にトロントでホリー・コール・トリオを結成。デビュー直前に交通事故でアゴの骨を粉砕し活動は一時停止するが、やがて復帰。自分でポスターを作りそれを貼って、ステージのブッキングもすべて自前の手作りで地道に活動再開。1990年のデビューアルバム『Girl Talk』で注目され、1992年の『Blame It On My Youth』に収録された、映画『バグダッド・カフェ』の主題歌「Calling You」が大ヒットしていきなりトップ・シンガーの仲間入り。
以後、ポップス寄りの唱法でスタンダードソングのアルバムなどをコンスタントにリリース。好評を得ています。

ホリー・コールの唄とピアノをジャズと呼べるかどうか、議論は分かれるでしょう……世間の風は、スイング・ジャーナル誌の「ゴールドディスク大賞」も受賞しているんだからジャズでいいんじゃないの、ってところかな。
個人的には、CD屋のジャズ・コーナーにこの人のディスクが並べてあると、違和感ありまくりですけどね。

まあ、ジャンル分けなんて一般凡人リスナーには関係ないし、なんといってもホリー自身がそんな枠を意識してアルバム作っているとは思えないから、どうでもいいことでしょう。

「On the Sunny Side of the Street」は、2003年リリースの『Shade』に収録されていますが、この曲は国内プレス盤のみのボーナス・トラックなので、購入の際にはご注意を。

ホリー・コール:シェイド
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ホリー・コール:シェイド
Holly Cole: Shade

Alert Music(東芝EMI)
ホリー・コール(vo,p)
2003年録音

ジョン・ピザレリの明るい表通りで

January 18, 2007

本日の「明るい表通りで On the Sunny Side of the Street」は、ギター弾き語りのホープ、ジョン・ピザレリです。

ジョン・ピザレリ:ディア・ミスター・コール
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ジョン・ピザレリ:ディア・ミスター・コール
John Pizzarelli: Dear Mr. Cole

Novus/RCA
ジョン・ピザレリ(g,vo)
ベニー・グリーン(p)、クリスチャン・マクブライド(b)
1994年録音

アルバムタイトルからも分かるように、ジョンが敬愛してやまないナット・キング・コールのレパートリー・ナンバーを集めた1枚。好評だったので続編『P.S. Mr. Cole』(RCA)もリリースされました。

ビーバップ革命以前の、古き佳き時代を現代に再現したスタイルは、粋で洒落ています。
ハリー・コニックJr.とかハリー・アレンとか、若手にこういったタイプのプレイヤーがいてくれるのは、古風なジャズ・ファンには嬉しいですね。(若手といっても3人とも40代になっちゃってますが)

「明るい表通り」は、中間部の、ギターとハミングのユニゾンが気持ちよいですね。
ピアノのベニー・グリーンも、軽妙洒脱なソロを聴かせてくれます。

ジョン・ピザレリのレギュラー・グループは、ギター、ベース、ピアノのトリオ。ドラムレスなのでリズムが重くならないし、胃にもたれません。
かと言って流行のダイエット食品みたいにスカスカしてないので、BGMでタレ流しするのは勿体ない。
小粋で古風なジャズが好きで、でも古い録音はノイズがあるからイヤンって人に最適な1枚でしょう。

ジャズに不案内な方には、ビートルズ・ナンバーを集めた『Meet the Beatles』(BMG JAPAN)がオススメです。こちらはドン・セベスキー編曲・指揮のビッグバンドによる洒落た伴奏がついてます。
本家ビートルズは聞き飽きた人でも、新鮮に聴けるスウィング・ビートルズ・ナンバー。歌も、ジョン・レノンよりピザレリのほうが数段上手いですしね。

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