スタン・ゲッツの代表作
超オススメ! スタン・ゲッツを聴くなら、まずこの1枚から。
Stan Getz PlaysStan Getz Quintet 01 Stella by Starlight スタン・ゲッツ(ts)、ジミー・レイニー(g)、デューク・ジョーダン(p)、ビル・クロウ(b)、フランク・イソラ(ds) Recording Date(01-08): Dec 5, 1952 |
スタン・ゲッツが、最もゲッツらしい、知的で軽やかなクール・サウンドを聴かせてくれたのは、ウディ・ハーマンのセカンドハード(47年9月加入)時代から、『スタン・ゲッツ・プレイズ』が録音された 52年ごろまでだったと思う。その後、ゲッツのテナーは太く逞しい音色を加え、男性的なブロウアーへと変化していく。それもまたゲッツの魅力のひとつではあるが、1枚だけとなると、どうしても52年までのワンホーン・アルバムから選ぶことになる。
Verve盤を選んだ理由は録音状態と収録曲の好みによるもので、『スタン・ゲッツ・カルテット』(49-50年/Prestige)と、現在2枚のCDに分散して売られている『ルースト・セッション』(50-52年/Roost)も内容は甲乙つけがたく、これらの中からどれを選んでも、繊細でリリカルな、ゲッツにしか成し得なかったクールな演奏を堪能できると思う。
『スタン・ゲッツ・プレイズ』は 11曲中、1曲目と2曲目をミディアム・バウンスで、4曲目と5曲目とジジ・グライスのオリジナル「東洋への賛歌」(10曲目)をアップ・テンポで、残り6曲をスローなバラッドで演奏しており、ミディアム、アップ・テンポの4曲には、このあとの変貌が垣間見えている。熟した果実が枝から落ちる直前のような、甘美な香りがする名盤。
CD化に際して、オリジナルLP未収録だった12月29日セッションの「ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン」(12曲目)が追加されている。
おすすめの1曲
『スタン・ゲッツ・プレイズ』に収められたスタンダード・ナンバーは、どれもゲッツのオリジナルなイマジネーションに彩られた演奏ばかりで、1曲を選ぶのは難しい。
とりあえず今日は2曲目の「タイム・オン・マイ・ハンズ」にしておこう。
水曜日の夕方に NHK-FM がオンエアしていた、大橋美加司会のジャズ番組でオープニング・テーマとして使われていた曲で、毎週聴かされていたがぜんぜん厭きない。
強盗未遂事件で服役した後、ゲッツはホットでファンキーなプレイをするようになり、『スタン・ゲッツ&J.J.ジョンソン・アット・オペラ・ハウス』(57年/Verve)では、熱いブローイングでトロンボーンのJ.J.ジョンソンと白熱のバトルを展開。
62年録音の『ジャズ・サンバ』(Verve)でボサノヴァ・ブームに火をつけ、『ゲッツ/ジルベルト』(63年/Verve)はグラミー賞4部門を独占して大ヒット。
新進気鋭のピアニスト、チック・コリアをメンバーに迎えた『スイート・レイン』(67年/Verve)も人気盤だが、『キャプテン・マーベル』(72年/Verve)では「ラ・フェスタ」や「500マイルズ・ハイ」などチックのオリジナルが中心となり、内容もリターン・トゥ・フォーエバー with スタン・ゲッツみたいな、軒を貸して母屋を取られた感じになっている。
鬼才エディ・ソーター編曲指揮のストリングスを相手にフリー・インプロヴィゼーションの極(きわみ)を聴かせる『焦点 フォーカス』(61年/Verve)は、ゲッツ・ファンならずとも一聴しておきたい異色の名盤。