チック・コリアの代表作
超オススメ! チック・コリアを聴くなら、まずこの1枚から。
My Spanish Heart Chick CoreaChick Corea:Piano Keyboards 1. Love Castle Recorded October 1976 |
RTF(リターン・トゥ・フォーエバー)の大成功でノリノリだった1976年10月に録音された、スペイン風味フュージョン・アルバム。
この当時のチック・コリアは、ソロ・ピアノや前衛っぽいコンセプトの録音はECM、ハードロック色が濃くなったレギュラーコンボRTFはCBSコロムビア、ジャンル関係なしでオリジナルなチック・サウンドを縦横無尽に発揮した企画録音はポリドールと、3つのレーベルを巧みに渡って新作を発表していました。
CBSとポリドールは似たようなサウンドの作品で、多分RTFメンバー(スタン・クラークやアル・ディメオラ)のレーベル契約関係から行ったり来たりしてたと思います。
1970年代、ECMには、前衛ジャズの「サークル」、大ヒット作の「リターン・トゥ・フォーエバー」、第2のドビュッシーを狙ってたのかどうか知らないけどそれっぽいアコースティック・ソロ・ピアノ、ヴィブラフォン奏者とのデュオ・コラボレーションと、シリアス路線の録音盤があり、ポリドールにはRTF第2弾の「ライト・アズ・ア・フェザー」、ギターにアル・ディメオラが参加したハードロック路線のRTF、オリジナル・コンセプトの「妖精」、「マイ・スパニッシュ・ハート」、「マッド・ハッター」など。CBSコロンビアからは新RTFでの「異邦の騎士」と「ミュージック・マジック」……なんかよく分からんけど、グチャグチャな状況のなかでチックは年に何枚もの新作を出して、ジャズ雑誌を賑わせておりました。
いずれもジャズじゃないですけど。
当時のジャズシーンからフュージョンやそれらしき類のマガイモノを省いてしまったら、なにも残らんのです。
フォービート好きな日本人プロデューサーがでっち上げたGJT(グレート・ジャズ・トリオ)や、往年の(というより、すでに化石化していた)ビッグネームを大量招聘したオーレックス・ジャズ・フェスティバルとかありましたけど、モダンジャズが主流ではなくなっていた時代ですね。
そんな状況のなかで新作を連発していたチック・コリアの、最大最強の超大作が今回の「マイ・スパニッシュ・ハート」。
ジョー・ファレル(fl、sax)、スタンリー・クラーク(b)など馴染みのメンバーに、ブラス・セクションとストリングス・セクションを追加。更に、ジャン=リュック・ポンティ(ヴァイオリン)、ハービー・ハンコック(p)やハービー・メイソン(ds)など有名ゲスト・プレイヤーを贅沢に配置し、もちろんゲイル・モラン(チックの嫁さん)のヴォーカルもフィーチャー。
フラメンコのリズムを全編に散りばめた、壮大な音楽絵巻であります。
金管で強化したビッグなサウンドがお気に召したチックは、RTF解散直前ツアーも12人編成の大所帯でやって来ました。
田園コロシアムで開催された「ライヴ・アンダー・ザ・スカイ」でのステージは、凄い熱気で、当時19歳のぼんくらアタマが一段と白痴化促進、大興奮しましたですよー。
LPレコードは見開き2枚組で、持っていることの歓びを満足させる豪華な装丁でしたが、リマスターされて、音質チョイ軽めのCD化。
未発表2曲が追加されてるし、レコードひっくり返したり取っ替えたりしないでイッキに聴けるから、まあいいか。
このアルバムで聴けるスパニッシュの乾いた風情やロマンティシズムが気に入った人は、ミンガスの「メキシコの思い出」(RCA)やマイルスの「スケッチ・オブ・スペイン」(CBS)もけっこうイケると思います。