soe006 マッケラス:ベートーヴェン交響曲全集

第3回ベト交チクルス in 僕の部屋

December 31, 2007

毎年12月になると、(日本では)あちらこちらでベートーヴェンの「第9交響曲・合唱付」を演奏していますですね。

ベト交チクルス in 僕の部屋 とは……9番だけなんてしみったれてる、ベートーヴェンの交響曲を全部まとめて聴こうじゃないか! コンサートなんて贅沢だ、家にあるCDで充分愉しめるじゃないか!……という、豪華なのか貧乏くさいのかよく分からん個人行事で、なんとなく年末にやってるうちに、とうとう第3回を数えることになりましたです。御慶。

第1回はバーンスタイン指揮ウィーン・フィル。
第2回はブロムシュテット指揮ドレスデン歌劇場管弦楽団。
この2つのセットは良かったです。大満足。
第1番から第9番まで、退屈せずに、そこそこ感動的な時間を過ごせました。
そして今回登場するのは、初のベーレンライター版、チャールス・マッケラス指揮ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック管弦楽団。

ベートーヴェン:交響曲全集
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ベートーヴェン:交響曲全集

チャールズ・マッケラス指揮
ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団

DISC 1 交響曲第1番・第3番「英雄」
(1994年9月 デジタル録音)
DISC 2 交響曲第2番・第8番
(1997年11月 デジタル録音)
DISC 3 交響曲第4番・第6番「田園」
(1994年11月 デジタル録音)
DISC 4 交響曲第5番「運命」・第7番
(1994年9月 デジタル録音)
DISC 5 交響曲第9番「合唱付」
(1991年1月 デジタル録音)

EMI Cfp(輸入盤)5枚組

ベートーヴェンが指定したメトロノームにほぼ忠実なテンポということで、実にサクサク颯爽としています。古典的奏法でヴィブラートを抑え、すべて2管編成らしく、サウンドも軽快。
ベーレンライター版は、ジンマンやノリントンの古楽器派のものを少々(たしか3番と5番)、アーノンクールの6番とラトルの9番を聴いていましたが、全曲集を買ったのはこれが初めて。
モーツァルトは古楽器派の演奏が好きですが、ことベートーヴェンとなると、むむむ。
やっぱり、スケール感が大きいモダン・オケでないと、らしく感じられないんですね。
いまだにフルトヴェングラーのゴツくて熱っぽい演奏が最高だと思っている20世紀人だし。

でも21世紀の主流は、(オケはモダンでも)ベーレンライター版なんですね。
ワンセットくらい持っていてもいいかな……なんて、軽い気持ちで(格安だったから)購入。
録音年月のデータから察すると、このマッケラス盤がベーレンライター版の先駆者的録音だったみたいですね。(英文だから面倒くさくて全部は読んでないけど)ライナーノートの、ジョナサン・デル・マールの解説に、そんなふうなことが書いてありました。

とにかくテンポが早いです。サクサク進みます。
とくに古典派の流れを踏襲している第1番や第2番は、まるでモーツァルトかハイドンのような印象。初期のベートーヴェンは、他の録音でもそんな感じですが、特に強くそんな感じ。
第3番、第5番、第7番は、やっぱりスケール感が薄いですね。演奏のメリハリは凄くて、ホルンはよく吠えているし、ティンパニの強打も迫力ありますけど。私は音楽に精神性云々とか言うのは好きじゃないのですが、この快速演奏は若干もの足りなさを感じます。カラヤン(70年代・80年代)みたいな、上手い速い安い演奏とはちょっと違いますが、どうものめり込めない。
ヴァイオリンの対向配置で、合奏の面白さはよく出ています。

第9番も、決して悪くはないんですが……それ以上の、興奮とか、熱狂とか、普通に私が9番に求めているものが稀薄なんですね。第4楽章のトルコ風行進曲のところとか、原典に忠実なテンポとはいえ、ここまでパッパカやられると漫画チック。ラトルの9番でも、同じところで笑っちゃったなあ。

チャールズ・マッケラス は、1925年11月17日、ニューヨーク州スケネクタディ生まれ。両親はオーストラリア人で、2歳のときシドニーにお引っ越し。ニュー・サウスウェールズ音楽院でオーボエを学び、1943年からシドニー交響楽団の主席オーボエ奏者を務める。
次第に指揮に興味をおぼえ、1947年から1年間、プラハに留学して指揮法を学ぶ。1948年、英国サドラーズ・ウェルズ・オペラ(後にイングリッシュ・ナショナル・オペラと改称)でJ・シュトラウス2世の「こうもり」を指揮。以後は、ハンブルグ国立歌劇場やウェールズ・ナショナル・オペラなどの主席指揮者、音楽監督を歴任。
レパートリーは広いそうですが、歌劇場での仕事がメインなのかな。あと、ヤナーチェクのエキスパートとしても知られており、1978年にヤナーチェク賞、1979年にナイトの称号を授与されています。

今年のベト交チクルス in 僕の部屋は、失敗、とは言わないけれど、ちょっともの足りなかったです。
歌劇場メインで活躍してきた指揮者だけあって、第9番の合唱・独唱は破綻もなく立派なものだったけど。
来年、もしやるなら、旧来(古いタイプ)の録音盤でやろう。
ベーレンライター版は、俺様には向いてない。

これからブロムシュテット指揮シュターツカペレ・ドレスデンの「第9番」(1985年3月・ゼンパーオーパー再建記念コンサートのライヴ録音)を聴いて、年越しです。

ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調「合唱付」
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ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調「合唱付」

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
シュターツカペレ・ドレスデン

エディット・ヴィーンス(S)
ウテ・ワルター(A)
ライナー・ゴルトベルク(T)
カール・ハインツ・シュトゥリチェク(Bs)
ドレスデン国立歌劇場合唱団、他

ゼンパーオーパー再建記念ライヴ
1985年3月30・31日 ステレオ録音

こういうでっかい第9がやっぱり好きだなあ。歳末っぽくて。

では……みなさま、良いお年をお迎えください。

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