2021年02月|映画スクラップブック


2021年 02月(7本)

2021/02/14

西部戦線異状なし

西部戦線異状なし|soe006 映画スクラップブック
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ALL QUIET ON THE WESTERN FRONT
1930年(日本公開:1930年10月)
ルイス・マイルストン リュー・エアーズ ウィリアム・ベイクウェル ラッセル・グリーソン ルイス・ウォルハイム スリム・サマーヴィル ジョン・レイ ウォルター・ブラウン・ロジャース レイモンド・グリフィス ベリル・マーサー

製作から90年を経て、いまだ戦争映画の代表作として挙げられる不朽の名作。
キューブリック(「フルメタル・ジャケット」)やスピルバーグ(「プライベート・ライアン」)も多分見ているであろう、戦争映画の古典。

西部戦線異状なし

昨今のCGデジタル合成で感覚が馬鹿になっている眼で見ても、この映画の凄まじい戦闘場面は衝撃だ。いくぶんコマ抜きされているとはいえ、兵士たちの動きはスピーディ。
敵弾を掻い潜りながら走る姿は、全員が「突撃隊」のマックィーン。機関銃はすごい皆殺しマシーンだ。
民家だろうと墓地だろうと構いなく炸裂する砲弾。山と積まれた棺桶だって木っ端微塵。画面いっぱいに広がる硝煙。ドリーで撮られた泥水まみれの塹壕、鉄条網にぶら下がる切断された腕。爆音と銃声の緊張感。「今日は4人撃った」と日常茶飯事のように話す狙撃兵。非情で過酷な戦場がリアルに再現されている。
撮影に動員された兵隊役のエキストラは、第一次大戦に従軍し戦った(そして生き残った)戦争当事者だったとのこと。

西部戦線異状なし

トーキー初期の製作ゆえ、人物のアップにサイレントの技法が散見される。学生たちが志願して前線に送られるまでの編集が混乱しているように感じられた。
前半、誰が主人公なのか掴めない。
それはそれで良いのかも知れない。いつ誰が殺されるのか分からない、死の恐怖は平等に与えられている。

敵のフランス兵を刺殺したあたりから、この若者(リュー・エアーズ)にカメラが注目し、主人公だと分かってくる。

西部戦線異状なし

豚をまるごと調達してくる古参兵(ルイス・ウォルハイム)が頼もしい。

西部戦線異状なし

愛国精神を説いて学生たちを扇動する教師や、教育班長の元郵便配達は、小津安二郎「秋刀魚の味」での笠智衆と加東大介のやりとり(日本が戦争に負けたので「下らない連中が威張り散らすことがなくなって良かった」)を思い出させる。

食堂で地図を拡げ、戦略談義する老人たち(町の有力者)がおぞましい。

負傷休暇でいったん故郷に戻った主人公に、世間との乖離、精神的苦悩が示唆され、後のベトナム帰還兵後遺症映画を連想させられた。

塹壕の場面は、セットや人物の配置が舞台演劇的。レマルクの原作は戯曲としても書かれ、日本では築地小劇場の舞台公演が評判だったとのこと。

西部戦線異状なし

サイレント版とトーキー版があるらしい。日本では東京第一の配給で1930年(昭和5年)10月24日にトーキー版が封切りになっているが、時局がら反戦思想を強く匂わせる場面が検閲でカットされて、上映時間は100分。
今回見たのはユニバーサル・ジャパンが発売した「完全オリジナル版」で131分。
ところが、野口久光「想い出の名画」(文藝春秋)には、「十七巻二時間五十分の大作」との記述がある! もし現行のDVDよりも長尺のヴァージョンが存在するのなら、ぜひ見てみたい。

70

2021/02/15

プラトーン

プラトーン|soe006 映画スクラップブック
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PLATOON
1986年(日本公開:1987年04月)
オリヴァー・ストーン チャーリー・シーン トム・ベレンジャー ウィレム・デフォー ケヴィン・ディロン フォレスト・ウィテカー フランチェスコ・クイン ジョン・C・マッギンレー キース・デヴィッド デイル・ダイ ジョニー・デップ リチャード・エドソン ポール・サンチェス

第一次大戦の従軍体験を元にエリッヒ・マリア・レマルクが書いた小説「西部戦線異状なし」が映画化されたのは1930年。それから56年後、オリヴァー・ストーンがベトナム戦争体験を元に脚本を書き監督したのが「プラトーン」。
両作に共通しているのは、誰ひとりとして「自国の勝利」とか「栄誉の勲章」などではなく、「とにかく戦場で生き残るため」に戦っていた、ということ。前線で戦っている兵士たちの思いは、半世紀の時間を経ても、何ひとつ変わっていなかった。

プラトーン

戦争映画としては低予算(600万ドル)だが、オール現地ロケ(フィリピン)で、服装や装備にしても、手抜かりない迫真性が感じられる。映像は即物的なカットの積み重ねで、無理に面白くしようと作為的にしていない。ドキュメンタリー性に重きをおいて無骨に撮る。こうした映画作りがオリヴァー・ストーンの真骨頂。一遍のユーモアもなく、娯楽性に乏しいので見ていてすごく疲れる映画。名作ではある。

アカデミー賞というのはハリウッド業界人がでっちあげた茶番だと思っているのだが、「アカデミー作品賞」として記録に残ることで、若い世代がこの映画を観る機会になるのであれば、結果として「プラトーン」の受賞は意義があったと思う。
なぜなら、そんな映画今更見たって意味ないよ、見る価値ないよ、みたいな政治的工作が(やんわりと密かに)今後、あるかも知れないから。

出演者全員が兵隊になりきった演技をみせている。ベトナム戦争の退役軍人をアドヴァイザーに迎え、撮影前に現地で2週間の訓練を受けた成果だろう。

プラトーン

トム・ベレンジャー、ウィレム・デフォー、チャーリー・シーン、フォレスト・ウィテカー、ジョニー・デップなど、このあと名をあげたスターもいる。
ケヴィン・ディロン(マット・ディロンの弟)、フランチェスコ・クイン(アンソニー・クインの息子)、ジョン・C・マッギンレー、キース・デヴィッドあたりは、脇役で地味に俳優を続けている。

終盤、敵の総攻撃を受ける駐屯地の場面では監督も特別出演。
司令部の壕ごとふっ飛ばされている。

プラトーン

いちばん強く印象に残ったのは、部隊が焼き払う農村の人々。片脚を失っている男を機関銃で脅して踊らせる場面は、目を背けたくなる。

70

2021/02/17

フルメタル・ジャケット

フルメタル・ジャケット|soe006 映画スクラップブック
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FULL METAL JACKET
1987年(日本公開:1988年03月)
スタンリー・キューブリック マシュー・モディーン アダム・ボールドウィン ヴィンセント・ドノフリオ R・リー・アーメイ ドリアン・ヘアウッド アーリス・ハワード ケヴィン・メイジャー・ハワード エド・オロス ジョン・テリー キーロン・ジェッキニス カーク・テイラー ティム・コルチェリ ブルース・ボア サル・ロペス

スタンリー・キューブリックの映画はどれも冷たい。観客に感情移入できないよう、意図して作っているのだろう。説明を極力省いているので、テーマも製作動機も見えてこない。
海兵隊の新兵訓練の前半と、フエ奪還作戦を描いた後半の、2部構成とした理由も分からない。画面に映っているものがすべてであり、スピーカーから聞こえてくる音がすべて。
長髪の若者たちがバリカンで坊主頭に刈られていくファースト・シーンから、ミッキーマウス・マーチを歌いながら行軍するラスト・シーンまで、映像は強烈な印象を残している。

フルメタル・ジャケット

現地ロケはなく、前半後半ともに、すべてイギリスで撮影されている。
「プラトーン」の5倍の製作費(3000万ドル)をかけているだけあって、「プラトーン」よりもしっかりした「映画」になっている。出演者も手伝ってジャングルの草刈りをして撮った「プラトーン」のドリーよりも、スムーズでしっかり撮られた横移動(背後には本物の戦車だって走ってるんだぜ!)に、瓦礫が散らばるフエ市街のオープンセットに、映画の贅沢を感じる。
しかし、「プラトーン」にあった東南アジアの不快な熱気や湿気は、(たとえテト攻勢=旧正月の時期だとしても)この映画からは感じることはできない。スタンリー・キューブリックの映画はいつも冷たい。

キューブリックが「なにを見せたかったのか」分からないまま、マシュー・モディーンは狙撃手を撃ち殺し、映画は終わった。30年前の公開時とおなじく、評価は保留。(評価するために映画を見ているわけじゃないし)

印象に残ったキャラクターをメモしておく。

微笑みデブ(ヴィンセント・ドノフリオ)

フルメタル・ジャケット

ハートマン軍曹(R・リー・アーメイ)

フルメタル・ジャケット

ジョーカー(マシュー・モディーン)

フルメタル・ジャケット

北ベトナムの狙撃手(ニョック・リ)

フルメタル・ジャケット

「よく女子供が殺せるな」
「簡単さ、動きがのろいからな。ホント、戦争は地獄だぜ!」

フルメタル・ジャケット

「逃げる奴は皆ベトコンだ、逃げない奴はよく訓練されたベトコンだ」

あたりまえのことだけど、
戦時下の敵国人であっても、理由なく民間人を殺したら殺人罪です。(空襲や原爆で日本の民間人を大量殺戮したアメリカが無罪なわけないだろ!)

70

2021/02/18

ジョニーは戦場へ行った

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JOHNNY GOT HIS GUN
1971年(日本公開:1973年04月)
ダルトン・トランボ  ティモシー・ボトムズ キャシー・フィールズ ジェイソン・ロバーズ マーシャ・ハント ドナルド・サザーランド ダイアン・ヴァーシ デヴィッド・ソウル モーリス・ダリモア ドナルド・バリー エリック・クリスマス エドュアルド・フランツ ケリー・マクレーン チャールズ・マックグロー バイロン・モロー サンディ・ブラウン・ワイエス

第一次大戦に志願出兵し、独軍の砲弾により前線で両手両足と顔を失った(まだ少年のようにあどけない)青年(ティモシー・ボトムズ)。視覚聴覚嗅覚味覚はないが、触覚と意識だけは残っている。

人工的に生命維持を施され、研究のため軍の医療機関に極秘で移送される。追憶と幻想が混濁した主人公のイメージが淡いトーンの色彩で、これ以上はない究極の絶望ともいえる病室場面がモノクロで交互に描かれる。

ジョニーは戦場へ行った

原作はダルトン・トランボが1939年に発表した小説。長い間(赤狩り騒動もあって)映画化は実現せず、原作本も(第二次大戦、朝鮮戦争と)アメリカが戦争するたびに絶版・復刊を繰り返す。ベトナム戦争が泥沼化し反戦運動で国内政情が混乱していた1971年に、トランボ自身が初めてメガホンをとって製作。カンヌで審査員特別グランプリを受賞。

アメリカ公開は71年8月だったが、(暗い映画があたりまえの当時であっても)内容が暗すぎるために興行は不振。
日本では一年以上遅れて73年4月に公開。佐賀では中学一年の夏休みに佐賀平劇で公開され、(「文部省特選」ということもあって)学校で割引券が配布された。だぶん日教組がゴリ押ししたのだろう。いまならレーティングで15歳以下は保護者同伴になってもおかしくないダークな内容で、子どもには刺激が強すぎる。

タイトルバックに記録フィルムを入れたのは上手い。背景が明確に提示されている。これが無かったら、本編のリアリティが薄くなって、寓話っぽくなってしまっていただろう。
父親自慢の釣り竿を無くしたエピソード、恋人との別れ(彼女の父親がいい奴だ)、キリストと呼ばれている男、子供を米国の寄宿学校に通わせている娼婦、色彩パートには虚実いろいろなエピソードが出てくる。

ジョニーは戦場へ行った

主人公のジョーがパン屋で働いていた設定から、トランボ自身の青年時代も幾らか取り入れているのだろう。どれもが印象に残る。
特に父親(ジェーソン・ロバーズ)との関係が濃ゆい。

ジョニーは戦場へ行った

残念なのは、それらのひとつひとつの説明が省略されているので、明確なストーリーとしてうまく理解できないこと。暗黒の混濁のなかで主人公が意識した色彩場面なので、細切れは細切れのままで成立しているとも言えるが、ハリウッドの脚本家なのだから、もう少し分かりやすく構成することもできたのじゃなかろうか。
例えば、キリストと呼ばれる男(ドナルド・サザーランド!)と、看護婦(ダイアン・バーシー)が胸に書く「メリー・クリスマス」と、パン工場社長が執拗に連呼する「おれは社長、これはシャンパン、メリー・クリスマス」、それぞれ関連しているのだろうが、説明がないから、それらが何を示唆しているのかまとめられない。安っぽいアート映画だ。

とはいえ、反戦の訴えと自死の自由をテーマに、ここまで強烈かつ徹底的にやられると、映画としての出来不出来はどうでもよくなってしまう。トランボが自ら資金を調達し、65歳の高齢で初監督した、執念の事実にノックアウトされる。

70

2021/02/26

美女と野獣

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LA BELLE ET LA BETE
1946年(日本公開:1948年01月)
ジャン・コクトー ジャン・マレー ジョゼット・デイ マルセル・アンドレ ミシェル・オークレール ミラ・パレリ

75年前に製作された特撮ファンタジー。

美女と野獣

詩人コクトーの才気が余すところなく焼き付けられたフィルム。
ジャン・マレーの野獣が何度も「ベル」と呼びかける。声がいい。

美女と野獣

霧がたなびく幻想的な森、燭台を持つ腕が並んだ廊下、生物の如き動きをみせる彫像、野獣の憂いをおびた眼差し、魔法の手袋による瞬間移動、キラキラ輝く宝飾品。
その他いろいろ盛り沢山に贅沢なイメージがてんこ盛り。

天空へと消えてゆく美女と(元)野獣。

美女と野獣

公開当時に観た人を羨ましく思う。

コスミック出版DVDの画質は良好。
但し、音楽(ジョルジュ・オーリック)が音割れしている。残念。

65

2021/02/27

双頭の鷲

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L' AIGLE A DEUX TETES
1947年(日本公開:1953年06月)
ジャン・コクトー エドウィジュ・フィエール ジャン・マレー ジャック・ヴァレーヌ シルヴィア・モンフォール ジャン・ドビュクール イヴォンヌ・ド・ブレー

多彩な芸術分野で活躍した(今風にいえばマルチ・アーティスト)ジャン・コクトーによる恋と陰謀の宮廷劇。
舞台となっているオーストリア風の国家は架空のものと最初にクレジットされるが、モデルはあるらしい。その類の知識に疎いのでよくわからんけど。

10年前に国王が暗殺され未亡人となった王女(エドウィジュ・フィエール)と、彼女を暗殺するべく城に侵入した若きリベラリストの刺客(ジャン・マレー)との恋を、古典劇そのままのロマンチシズムで描いている。
シェークスピアをかなり意識したストーリーで、劇中でも「ハムレット」が朗読される。

双頭の鷲

城内のセット(美術)、衣装が、ことごとく素晴らしい。本場欧州の皇族趣味がこれでもかとばかり絢爛に溢れている。

しかしなんと言っても最大の見ものは、ヒロインを演じたエドウィジュ・フィエール(撮影当時40歳だったらしい)の気品に満ちた美貌! そのウェストの細さ!

双頭の鷲:エドウィジュ・フィエール

屹立として感情を抑制しつつ、漏らしてなお堕ちない威厳と品位。こんな凄くて美しい女優をいままで知らなかったなんて。
ジョルジュ・ランパン版の「白痴」にも出演しているとのこと。
ドストエフスキーの「白痴」は40年くらい前に黒澤明版を池袋文芸坐のオールナイトで観ているが、あのときの原節子も美しかった。外に威圧的で内に自虐的なナスターシャ役はさぞ素晴らしいと思う。近いうちにDVDを探してぜひ観てみたい。

映画の序盤、王女は王の喪に服していて、顔は黒いベールで隠されている。素顔が現れるのは15分後くらい。さらにジャン・マレーの刺客登場はその後5分くらい経ってから。

双頭の鷲:ジャン・マレーとエドウィジュ・フィエール

それまでの話がなかなか呑み込みづらいのは(先に書いたように)19世紀の欧州事情に疎いから。製作当時の仏蘭西の観客には「ああ、これってあの話ね」ってすんなり理解されたのだろう。

ラストの階段落ちはジャン・マレー自身がスタントなしで演っている。すごい。

65

2021/02/28

オルフェ

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ORPHEE
1949年(日本公開:1951年04月)
ジャン・コクトー ジャン・マレー マリア・カザレス フランソワ・ペリエ エドアール・デルミ ジュリエット・グレコ マリー・デア ジャン=ピエール・メルヴィル

ギリシャ神話の舞台を(当時の)現代パリに置き換え自由に脚色した、ジャン・コクトーによる特撮ファンタジー。

オルフェ

サンジェルマンのカフェに若者たちが集うファーストシーンは、当時の風俗がドキュメントされていて興味深い。この店の前の路上で轢き逃げ事件があって物語は始まるのだけれど……美しき死神(マリア・カザレス)が、大衆に人気のある詩人オルフェ(ジャン・マレー)に恋心を抱いてるのは分かるのだが、彼女の真意が読み取れないままストーリーは現実と死後の世界を往来し、着地点がなかなか見えない。

オルフェ

彼女に仕える運転手(フランソワ・ペリエ)や、死んだ若き詩人(エドゥアール・デルミ)、オートバイの男たち(ケロベロス?)がどのような役割で何のために動いているのか説明がないから、混乱だけが残る。

オルフェ

BGMにグルックの「精霊の踊り」が幾度か流れていて、そればかりに気をとられて困った。クラシック名曲集のCDによく収録されている曲(とくにクライスラー編曲版がヴァイオリン名曲集によく入っている)なので、とても耳に馴染んでいるメロディなんだけど、オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」のなかの楽曲だったんだ。なるほど。
映画全体の音楽を担当しているのはコクトー映画の名コンビ、ジョルジュ・オーリック。

冥界との通信機になっているラジオから聞こえてくる詩の朗読を、主人公が夢中になって盗作する場面は笑いを狙っていたのか? 妻の姿を見てはいけない試練の場面もちょっと喜劇風。
取材に訪れる執拗な新聞記者の場面は必要か? 奥さんのユリティス(マリー・デア)が身重なのもドラマに効いてない。オルフェとユリティスではなく、オルフェと死神の恋愛劇だったのか? と、骨太な一貫したラインが見えないのだが、実は、この映画には第二次大戦中のフランス共産党の地下組織(レジスタンス活動)が裏書きされているのだという。そういえば、地獄の査問委員会(こいつら何者?)は冷徹で刺々しく、旧ソ連の雰囲気が臭っていた。

オルフェ:マリア・カザレス

最大の見ものは、黒い死神を演じたマリア・カザレスの凛とした美貌!

オルフェ:マリア・カザレス

コクトーは女優を綺麗に見せるのが本当にうまい。対して、ユリティス役のマリー・デアは、役柄のせいでもあるだろうけど、意図して地味に撮っているように思えた。

スクリーンプロセスとフィルムの逆回しを組み合わせた冥土の道行き場面が面白い。

オルフェ

トリック撮影に安っぽい感じはなく、真摯な志で撮られている。立派な映画芸術。

70

映画採点基準

80点 オールタイムベストテン候補(2本)
75点 年間ベストワン候補(16本)
70点 年間ベストテン候補(74本)
65点 上出来・個人的嗜好(70本)
60点 水準作(65本)
55点以下 このサイトでは扱いません

個人の備忘録としての感想メモ&採点
オススメ度ではありません