遥か銀河の彼方からやってきた謎の飛行物体がワシントンに着陸。乗務していた宇宙人はいきなり核兵器の廃棄を要求。聞き入れられない場合は地球を滅ぼすと脅迫する。
RKOの編集マンから監督に転身したロバート・ワイズの本格SF映画。
ポリティカル・サスペンスの趣。
宇宙人が威嚇として実行する地球静止の場面では、ロンドンやパリ、モスクワなどがモンタージュされる。日本のシーンはない。
サンフランシスコ講和条約の署名が1951年9月8日(東西冷戦の始まり)。
荒唐無稽な作り話(サイエンス・フィクション)でありながら、こんなところに時代が記録されている。これが映画の面白さ、素晴らしさ。
随時放送局のスタジオからニュースを伝えるアナウンサーを挿入して、セミ・ドキュメンタリーな効果を与えている。アーリントン墓地やリンカーン記念堂など、首都ワシントンの観光映画としての宣伝効果もある。
ダリル・ザナックの20世紀フォックス製作。コミュニスト赤狩り時代に、よくまあこんな反核・反戦映画をつくったものだと感心してしまう。
テルミンの不思議な音色を効果的に用いたバーナード・ハーマンの音楽も素晴らしい。
DVDに収録されたロバート・ワイズとニコラス・メイヤーの音声解説がおもしろい。企画から試写の反響まで、映画製作に興味ある人はとても参考になるとおもう。
バーンハート教授(サム・ジャッフェ)のモデルがアインシュタイン博士であることもバラしていた。
ふたりともバーナード・ハーマンの音楽をベタ褒めしている。
試写のあとで、宇宙人(マイケル・レニー)が復活する場面が、宗教上の問題なったとのこと。製作者側は気にもとめていなかった場面だが、宇宙人の(架空の)倫理にまで自分たちの宗教観を押し付けてくるキリスト教の傲慢さが笑える。
このコメンタリー、ワイズが亡くなる前年ごろ(85歳くらい)に収録されたものだと思うが、半世紀以上前の製作話を正確に記憶、明瞭に解説していて驚かされる。
「クラトゥ・バラダ・ニクト」
後年、宮崎駿も「天空の城ラピュタ」で究極の呪文を使ってた。
便利だよね、究極の呪文って。
点