「ファム・ファタール」
September 10, 2003
おかえりなさい、ブライアン・デ・パルマ!
気の抜けたサイダーみたいな『ミッション・トゥ・マーズ』まで手掛けるに及んで、自ら墓穴を掘っちまった、「おいおい、どうしちゃったのよデ・パルマさん」だったけど、ようやく自分を取り戻したみたい。『アンタッチャブル』や『ミッション:インポッシブル』に不満たらたらのデ・パルマ・フェチには、たまらないご馳走であります。
『悪魔のシスター』『愛のメモリー』『キャリー』『殺しのドレス』『ミッドナイト・クロス』『ボディ・ダブル』『レイジング・ケイン』……過去の映像記憶が、走馬燈のように駆けめぐる。誰からも後ろ指を指されない(いや、映画ごときに「公序良俗」なんぞを持ち出す無粋な輩からは後ろ指を指されること間違いなしの)、これぞ正調デ・パルマ節!
一部の映画ライターがデ・パルマを「華麗なる映像魔術師」なんて呼んでるけど、まったく的外れな表現だと思いますね。
同じような題材を扱ったら、コーエン兄弟のほうが1枚も2枚も上をいってます。<しかも、デ・パルマみたく破綻してないし、語り口は鮮やかだし。
「華麗なる映像魔術師だったヒッチコックの物真似が好きな、学生映画のテイストをいつまでも忘れない、スケベな親爺」
これがデ・パルマの正体ですぜ。
スケベのないデ・パルマなんて、見どころないもんね。
歪(いびつ)な異常心理、猥雑なスケベ心、B級丸出し、むちゃくちゃ無理のあるどんでん返し。
親爺、快調にトバしてます。
変態ではあるが、ワン・アンド・オンリーな(類い希なる)映画作家であることは間違いない。
しかし、今回の1作で坂本龍一は3流作曲家にランクを落としちゃったね。
監督からの強い要望があったのかも知らんけど、意にそぐわない注文だったら断固はねつけなさいよ。
この仕事外されたら食っていけないような駆け出しぢゃないでしょう?
アカデミー賞だってもらってるでしょう?
銭の心配しないで仕事できる立場なんでしょう?
……って言うか、なんでピノ・ドナジオじゃないの?