「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」
September 22, 2003
子供向けアクション・アドベンチャーがズラリ並んだ今年の夏興行で、一際異彩を放っていたのは、今となっては懐かしい「松竹大船撮影所謹製」の人情喜劇『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』でした。
宣伝に騙されて洒落れたラブ・ストーリーを期待していた人、どうだった? 気に入ってくれたかな?
アメリカ独自の移民ギャップなんぞと小難しい文化論など振り回さなくっても、充分判る面白さ。あの陽気なおじさんおばさんたちの行動原理の根底には、移民コミュニティで培われた独自の文化と習慣が云々とか……映画には一切関係ないじゃない。
逆にマイノリティ社会とか言い出すと、個性的なキャラクター・アンサンブルを愉しめないと思う。
現在でも旦那のパンツは別の桶で洗わないと姑から小言を食らうでごわす鹿児島と、ビッグファット・ウエディングじゃこっちも負けていない名古屋のカップルで、パクリ企画やってもそこそこイケると思うよ。
NHKが喜びそうな企画だにゃ〜も。<お前、どこ県人だよ?
同じく結婚をモチーフに移民家族を描いた、ノーマン・ジェイスンの『月の輝く夜に』と比較すると、かなり泥臭く、ベタな笑いが多い。
これは、イタリア移民とギリシャ移民の違い、ではなく、
製作側の洒落っ気とセンスの問題でしょう。
ギリシャの陽気な音楽(とダンス!)やお国の風習なんかも、面白いことは面白いんですけどね。
それだけを売り物にしていないところが高得点。
ギリシャは手段であって、目的ぢゃないからね。
久しぶりに、人生っていいもんだな……、
なんてシミジミと、根拠もなく莫迦なことを感じながら、帰路の自転車を漕いだのでありました。
この、映画館を出てから家に帰り着くまでのほのぼの気分が、映画の醍醐味かもね。
![]() ![]() |
マイ・ビッグ・ファット・ウェディング
|
それと……
しきりにこの映画、製作費のことが話題になるけど、500万ドル(約6億円)ったら、春に公開していたナンチャッテ・チャンバラの『あずみ』と同じですからね。
日本の撮影所で、この製作費を低予算って口にしたら、石が飛んできますぜ。