soe006 特別企画 小ネタ三題

この日記のようなものは、すべてフィクションです。
登場する人物、団体、裏の組織等はすべて架空のものです。ご了承ください。

連続更新10日目達成記念特別企画 小ネタ三題

March 10, 2006

ドアを軽くノックした。コンコン……
すると、中から声が聞こえてきた。
「鍵は掛かっていません。どうぞ、ご自由にお入りください」

気味が悪いので、おれは別のトイレを探した。

デパートの文房具売り場で、初老の紳士が店員を呼んだ。
「鉛筆削りのいいのがあったら欲しいのだが」
「はい、それでしたらこちらをどうぞ。1本わずか2秒、1分間で2ダースも削れます」
「おお、それは便利だ。これをいただこう」
紳士は、鉛筆削りを買って帰った。

翌日、憤慨した紳士が、ふたたび文房具売り場を訪れた。
紳士は昨日の店員を呼び、
「なにが1本わずか2秒だ、この大嘘つきめ。1ダース削るのに1時間以上かかったぞ。しかも指先は痛くなるし、ほら、これを見ろ」
紳士は、包帯を巻いた右手を店員に突き出した。
「治りかけていた腱鞘炎がまた悪化したではないか。こんなもの返品じゃ。別途、治療費を請求する」
「不良品でしたか、それは申し訳ありません。ちょっとチェックさせてください」
店員は鉛筆削りを受け取り、コンセントを差してスイッチを入れた。
ゆっくり鉛筆を入れてみる。
ぎゅーん。2秒足らずで綺麗に削れた。

その様子を見て、紳士が呟いた。

「なんだ電動だったのか」

「犯人から電話があったら、なるべく話を延ばしてください」
「でも、どんなことを話したらいいか……」
「なんでもいいんです。犯人の興味を惹きそうなことなら、なんでもいいから、とにかく話を引き延ばしてください」
「え、ええ、分かりました」
3分後、電話が鳴った。
「奥さん」と、刑事が促す。
私は勇気を奮い起こして、受話器を取った。

「もしもし……」
「金は用意できたか?」
「はい、用意できました」
「よし、また連絡する」
「あ、あの、ちょっと待ってください」
「なんだ?」
刑事が横で、うんうんと頷いている。
ここで私が頑張らないと、子供は戻ってこない。
「あ、あのぅ……」
「おい、近くに誰かいるのか? まさか警察に連絡したんじゃないだろうな?」
いけない、いけない。逆探知を犯人に悟られたら、子供は戻らない。
「いえ、そんなことありません、絶対に。あの、そうじゃなくって、あの、あの……」
「なんだ? 早く言え!」
「あの、あの、あの……」
刑事が声に出さず、「が・ん・ばっ・て」と口を動かした。
別の刑事が、こちらも声には出さず、「きょーみ、きょーみ」と、しきりに口を動かしている。
どうしよう、頭の中が空っぽだ。
犯人の興味を惹きそうなことって、なんだろう?
極度の焦りとプレッシャー! 私は犯人に話しかけた。

「あの、犯人さんは休みの日なんか何してます? 私、32歳の人妻なんですけど、そういうのって興味あります?」

部屋にいた刑事たち全員がずっこけた。

しまった、部屋に誰かいるのを気付かれたかも知れない。
しかし、犯人は意外な反応をしめした。

「ばかにすんな、おれはまだ18だ。32のババアなんかに興味ねえよ」

この会話が手掛かりとなって、犯人は逮捕、子供は無事に戻った。
奥さんは事件がそうとうショックだったらしく、しばらくは茫然自失状態だったが、今は立ち直って、熱心にエステ通いしているという。

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