soe006 とっぴん・ざ・中華でじあん

TOPPING TP-10 Mark3

February 10 2011

オーディオ関連

ここ1、2年で音楽の嗜好がガラリと変わってしまった。
大編成のオーケストラ曲をピタリと聴かなくなり、かわって室内楽曲、ピアノやチェロの独奏曲、ボーカル・ジャズなどをよく聴いています。
きっかけは中華デジアン(格安!)。

ずぅーっと前から、いつかオーディオ・アンプを自作しようと考えていました。
実際、設計図も用意しておりまして、(銭と時間にゆとりができたら)すぐにでも取り掛かれる状態のまま幾歳月。
銭といっても、そんなにかからないシンプル設計。
市販の商品みたいな、バス・ブーストとか、イコライザとか、バランスつまみも入力切替もつけない。
LPレコードを聴かないから、フォノ・アンプも不要。
インプット(ステレオ)1系、アウトプット(ステレオ)1系。100ボルト交流を直流に降圧整流して、入力信号を増幅、出力する。その間にボリューム・コントロールを挟むだけ。

スーパー・ロー・コスト、かつ、シンプル・イズ・ベスト。

そもそも市販の商品がゴテゴテ過ぎるんですよ。
アンプの設計で重要なのは、家庭用100ボルト交流をきれいな直流に整流すること。外部からノイズを拾わないように、内部でノイズを発生させないように、部品やリード線、接続箇所を最小限に抑えること。湿気やゴミ・ホコリの侵入・付着を防ぎ、自衛隊の防爆型無線機に使われているような、温度変化に左右されない頑丈なパーツを用いること。
これだけ。
まことに簡単明瞭単純明快。

ザラッと概算で、ケース込み3万円を予算してたんだけど……数年前に行きつけのパーツ屋が閉店して、それっきりになってたんですよ。

そんなとき、ふとネットで引っかかってきたのが、今回の主役、TOPPING TP-10 だったわけです。

TOPPING TP-10 MARK3

拓品電子 TOPPING TP-10 Mark3
Tripathトライパス社TA2024使用T-AMP
Line 入力端子:RCA 2ch(高純度 OFC 金メッキ仕様)
スピーカー出力端子:2ch(金メッキ仕様・バナナプラグ対応)
対応スピーカー:4-8Ω
パワーアンプ出力-Power Rating:15 Watts/channel @ 4 Ω
100%アルミニウムケース
電源:DC 8.5−13.2V
消費電力:電源ON時 1W、出力時 1W、電源OFF時 0W

私が理想としていたものが、商品となって、売られているではないですか! しかも、メイド・イン・中華!
ゾクゾクッと背筋に電流が走り、こめかみから 1200ガウスの磁気が迸り、眼光に埋め込まれた 300万ルクスの青色LEDが激しく点滅した。
ネットで詳細を調べてみると、すこぶる評判が良い。

それにメチャクチャ安い。
ACアダプタとあわせて、送料込みで約5000円。
これは買わずにいられない!

早速注文、三日後到着、接続迅速、躊躇なく音出し。

一聴してわかるのは、いかにもシンプルな音。
なにも足さない、なにも引かない。
入力信号を増幅して出力する、ただそれだけ。
無色透明。

これがデジタル・アンプの音か!
ただただ驚くばかり。
使っていた ONKYOのインテグラ君が、どんだけ音を細工してたのか、よーく分かりました。
電源部込みとはいえ総重量 18キロ。消費電力 245ワット。熱だって湯たんぽ並に出してますから、何もしないのでは購入者に気の毒だと思ってるんでしょう。それはそれでひとつのポリシーではあります。

かたやトッピンは小さくて可愛い。だれが名付けたか、手乗りデジアン。
掌にのせてチュウしたいくらいキュート。
それでいてフロントパネルは 7.3mm厚のアルミ板を使っていて、ぜんぜん安っぽくない。ちょいと高級感を持っているところが高得点。

さらに驚くのは、限りなく発熱がゼロ。
慣らしで 72時間連続再生(睡眠中は音量ほぼゼロで再生)したんだけど、シャロン・ストーン、氷の微笑、アイスノン。
インテグラ君が暑っ苦しいエラ・フィッツジェラルドのマシンガン・スキャットだとしたら、トッピンはスーパー・クールなチェット・ベイカー。

このアンプに使われているチップは、トライパス社(米国カリフォルニア州)がカー・ステレオ用に設計した「TA2024」1個のみ。

ここが Toppingの面白いところなんだけど。
このトライパスって会社、数年前に倒産してるんですね。それで中国のメーカーが在庫処分されたチップを安く買い叩いて、アンプを製作しているのだと思っていたんです。それだと近い将来チップの在庫がなくなって生産停止になるのは必至。買えるときに買っておかないと、幻の銘機として伝説化し、買い逃した悔しさで滂沱の涙が流され揚子江が氾濫、中国大陸に伝染病が蔓延するのではないかと。
ところがこのメーカー、私が購入した TP10-Mark3の後継機として Mark4を発売。その後もトライパス社のチップを使った格安デジアンを、ヘッドホン端子付のタイプやら、入力2系のタイプやら、電源部内蔵タイプやら、続々と新製品を世におくり出している!
さらに、ZERO とか LIHAO とか、別のメーカーも同じトライパス社のチップを使った類似デジアンを製造販売している!

じつに面妖奇天烈。
この得体のしれないところが、メイド・イン・チャイナの素晴らしさ。
よく分からないから断言しないけど、これが中国四千年のマジックなのでしょう。

そのあたりの摩訶不思議な事情をご理解いただけない方は、手を出さないほうが賢明。素直に有名メーカーの高級アンプを使ったほうが、精神衛生上よろしい。

オーディオなんてものは超個人的趣味の世界。
投資金額と見た目で音の90パーセント以上が決まる。
嘘だと思うなら、高級オーディオのパンフレットを見ればいい。
絶対、Toppingより良質の音が聞こえてくるはずだ。

それはさておき……
掌サイズのアンプで、愚鈍な 12インチ・ウーファーの DIATONEが駆動してしまうのには、素直に感動しました。
最初は(インテグラ君との比較で)低域が出てないように感じましたが、よく耳をすますと、低域は出てる。かなり低い周波数の音がバフッと出てくる瞬間があるんですね。
どーゆーことかと言うと、低域の量感が足りないように感じたのは、インテグラ君が低域を膨らませて味付けしてたのじゃないのか、という疑惑。
ネットに載ってるユーザーさんの感想でも、TP10は低域の量感が不足してる、とっぴんで12インチのスピーカーは鳴らせないって意見は多いし。実際のところ、そのあたりに不満をもつ人がいてもおかしくないけど、私は Toppingのタイトな低域再生が嫌いじゃないです。

ところで、シンプル増幅のとっぴんならば、インプットもアウトプットも素の音が入出力されているわけで。ソース音源はもちろんのこと、スピーカーの特性もこれで聴き比べできるのではないかと突発的に思いたち、好機到来、でかい重い古い愚鈍な DIATONEをジャンクして、以前から気になっていた小型スピーカー導入を実行に移したのですが……

長くなったので今夜はこれでおしまい。
続きはまた今度。

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