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ジャッキー・チェン

May 20, 2003

「オオサカ・ムービー・ドット・トム」のTOMさんから戴いたジャッキー・チェン・ソング集のCDRを聴いていたら、無性にジャッキーの映画が観たくなった。
『プロジェクトA』と『奇蹟 ミラクル』をビデオで観る。

プロジェクトA』(83)は次から次ぎへと趣向を凝らした見せ場を繰り出し、何度観ても飽きない。
酒場の乱闘場面にジョン・フォード、イザベラ・ウォンと一緒に逃げ回る場面ではバスター・キートン、時計塔の場面はハロルド・ロイド、海賊の襲撃はワーナー・ブラザーズなど、ハリウッド映画へのオマージュもたっぷり。
それまで杜撰な脚本で製作されていた香港映画に、首尾一貫したストーリーテリングを持ち込んだ画期的な作品。
激しいアクションとテンポの良いストーリー展開の割に、のどかな時代の雰囲気が味わえるのが素晴らしいですね。

奇蹟 ミラクル』(89)は、ご存知『一日だけの淑女』(33)のパクリだけど、田舎から出てきた純朴な青年がひょんなことからギャングの親分を襲名するという前半の状況設定が秀逸。これでジャッキーが演じても違和感のないキャラクターになりました。敵対しているボスの懐の深さなど、オリジナルに追加されたキャラクター設定は好感が持てます。
よく考えると、レストランで食事中に銃撃されたり、車に爆弾を仕掛けられたり、お互い命を狙い狙われている関係なんだけど、そのへんの憎悪感情を深追いしないバランス感覚がジャッキー映画らしくて良好。
この作品、もし伊藤大輔が観ていたら嫉妬したくなるんじゃないかと思わせるくらい、移動撮影に凝っているところが最大のポイント。
クレーン、ドリー、ステディカムを縦横無尽に駆使して、溜息が出るほど段取りの良い移動場面を見せてくれます。ナイト・クラブや港の群衆(モッブ)場面、花売りのおばさんが住むアパートの場面、豪華なホテルの部屋を歩き回りベランダへ出るアニタ・ムイの場面などは絶品で、まるで移動テクニックの教科書のよう。
アニタ・ムイのミュージカル場面に時間経過が挿入されるシークエンスは何度見ても愉しい。自慢のスタイルを活かしたステージ衣装を取っ替え引っ替えして、アニタ・ムイも愉しそうに唄っている。
こんなに華やかで洗練された編集場面が香港映画で見られるなんて思いもよらなかったので、公開当時は本当にビックリしたものです。
ジャッキー作品は、これの前作『九龍の眼 クーロンズ・アイ』(88)からヒッチコックばりのサスペンス編集を見せてくれたりして、テクニックがグンと洗練されましたね。

ジャッキー・チェンの映画は椅子の扱いだけ採り上げても、舞台装置が限られている小劇場演劇の関係者は、勉強になりまっせ!

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