2021年 12月(9本)
2021/12/11
フォー・ウェディング
FOUR WEDDINGS AND A FUNERAL
1994年(日本公開:1994年10月)
マイク・ニューウェル ヒュー・グラント アンディ・マクダウェル クリスティン・スコット・トーマス サイモン・キャロウ ジェームズ・フリート ジョン・ハナー シャーロット・コールマン コリン・レッドグレーヴ アンナ・チャンセラー デヴィッド・バウアー ローワン・アトキンソン ジェレミー・ケンプ
4つの結婚式と1つの葬式で構成された、その着眼点に優れたロマンチック・コメディ。
主演はヒュー・グラントとアンディ・マクダウェルだけど、ヒューを取り巻く家族・友人・元彼女たちと、多彩な登場人物が入り乱れての賑やかな仕掛けは、後年「ラブ・アクチュアリー」を監督したリチャード・カーティスの脚本らしい。
ひとつひとつのエピソードは呆れるほどありきたりなものだけど、ポップスBGMを多用したお洒落な場面作りで飽きさせない。セリフも面白いものが散りばめられている。
強引というか、安易な流れも多々見受けられるものの、この脚本家が作る人物は繊細かつ素直なので好感がもてる。
男のマリッジ・ブルーを描いているのが当時は珍しかった。男視点でみると主人公はどうしようもなく駄目な奴なのだけど、ヒュー・グラントが演じると、まぁ許せるというか、こいつならしようがない、みたいな。憎めないダメ男を演じたら天下一品。
最初っから「FUCK」が(故意に)連発されるのは嫌だったが、教会で(周囲に意味を悟られないよう日本語で)「バカ」を連発するギャグには笑ってしまった。
葬式のエピソードからラストに至る流れがグダグダ。結婚式と葬式でしか会っていない、つまり4、5回しか会っていない相手、アンディ・マクダウェルのキャラがきちんと描けてないので、ラストで二人がキスする場面にカタルシスがない。というか無理やりな予定調和でダサい。
司祭(Mrビーン=ローワン・アトキンソン)の言い間違えギャグも泥臭くしつこい。
60点
#1990年代のロマンチック・コメディ
2021/12/11
ノッティングヒルの恋人
NOTTING HILL
1999年(日本公開:1999年09月)
ロジャー・ミッシェル ジュリア・ロバーツ ヒュー・グラント リス・アイファンズ ジーナ・マッキー ティム・マキナニー エマ・チャンバース ヒュー・ボネヴィル ジェームズ・ドレイファス ミーシャ・バートン ヘンリー・グッドマン リチャード・マッケーブ アレック・ボールドウィン
ロンドンの下町で小さな本屋を営むヒュー・グラントと、ハリウッドのスター女優ジュリア・ロバーツが出会って、恋して、ギクシャクが何度かあって、ラストで結ばれる。
脚本は「フォー・ウェディング」のリチャード・カーティス。
「フォー・ウェディング」でもそうだったけど、女が男に惚れる理由がサッパリ欠落していて、おとぎ話のままで終わってる。主役ふたりを取り巻く奇抜な脇キャラと、面白いセリフ(「007は道に迷わない」とか)が散りばめられているので辛うじて持っている感じ。故人を偲ぶ遺族が思い出の場所に寄贈した公園のベンチとか、素敵なエピソードがたくさん入っているけど、入れてるだけ。ストーリーにほとんど機能してない。
選曲にあわせて場面を作っているのだろう。ヒュー・グラントが市場の通りを歩いている長回しのワンカットで季節の変化をみせた場面も、なんだか取って付けた感じ。頑張って作ったのは分かるけど、そんなことして何の意味があるの。かえってシラケてしまう。
お洒落なポップスBGMの雰囲気で誤魔化してるから、見ているあいだは心地よい。
アレック・ボールドウィンが、ジュリア・ロバーツの元恋人役でカメオ出演。ジュリア・ロバーツは役名ジュリア・ロバーツでも良かったんじゃない? ワイルダー「ねえ!キスしてよ」のディーン・マーチンみたいに。「ゴースト」のデミ・ムーアとかメル・ギブソンの尻とか、整形やボディダブルとか楽屋落ちのギャグやるのなら、実名使って自分自身を演じるキャラにしたほうが、ストーリー的にも宣伝でも絶対強いのに。
外国映画に出てくるホテルマンって、粋なはからいのおじさんキャラが多い。「一日だけの淑女」(1933年)の頃からの伝統になってるんだな。
玄関に着物姿の等身大のディスプレイが置いてある。リチャード・カーティス(脚本と製作)は日本贔屓なのか? CX「月9」に影響されているのか、「月9」が影響を受けてるのか? 日本のテレビドラマみたいな、安っぽい寓話。
「男はつらいよ」の車寅次郎は、木の実ナナ(松竹歌劇団の花形ダンサー「寅次郎わが道をゆく」)や都はるみ(演歌の女王「旅と女と寅次郎」)に恋をする。身分格差、生活環境の違いで恋愛劇の枷を作りたい脚本家は、とりあえず「男はつらいよ」を観ましょう。
60点
#1990年代のロマンチック・コメディ
2021/12/14
ブリジット・ジョーンズの日記
BRIDGET JONES'S DIARY
2001年(日本公開:2001年09月)
シャロン・マグアイア レニー・ゼルウィガー コリン・ファース ヒュー・グラント ジム・ブロードベント ジェマ・ジョーンズ サリー・フィリップス シャーリー・ヘンダーソン ジェームズ・キャリス エンベス・デイヴィッツ オナー・ブラックマン
ヒロインは出版社からテレビ業界に転職。好きになった男を追って下着姿のまま部屋を飛び出し、雪が舞うロンドンの街を探し回る。
勤め先の上司と有能な弁護士のふたりの男に口説かれ、男たちは彼女を争って殴り合いの喧嘩までしちゃう。
アラサー独身女性の等身大のラブストーリーというのが配給会社の売りだが、等身大なのは体重くらい。ヒロインの容姿以外はリアリティの欠片もない予定調和の寓話。
脚本が「ノッティングヒルの恋人」「フォー・ウェディング」のリチャード・カーティスなので、過度に個性豊かな脇キャラが配してあるものの、賑やかなだけで今ひとつ垢抜けない。ビジネスと割り切ってアイデアを切り売りしてる感じ。ポップスBGMもマンネリ。
60点
#2000年代のロマンチック・コメディ
2021/12/14
ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月
BRIDGET JONES: THE EDGE OF REASON
2004年(日本公開:2005年03月)
ビーバン・キドロン レニー・ゼルウィガー コリン・ファース ヒュー・グラント ジャシンダ・バレット ジム・ブロードベント ジェマ・ジョーンズ ジャシンダ・バレット サリー・フィリップス シャーリー・ヘンダーソン ジェームズ・キャリス
前作よりさらに一回り大きくなって迫力を増したレニー・ゼルウィガーが、垂れ流しされる安易な選曲のポップスをBGMに、堅物の弁護士コリン・ファースと軟派な浮気男ヒュー・グラントのあいだを行ったり来たりする。
スカイダイブやったり、スキー行ったり、マッシュルームでラリったり、コカイン密輸容疑でタイの留置所に入れられたり。行きあたりばったりのストーリー。人物が薄っぺら過ぎて、誰にも感情移入できない。第3弾も製作されたそうだが、もういいや。
60点
#2000年代のロマンチック・コメディ
2021/12/23
ラブ・アクチュアリー
LOVE ACTUALLY
2003年(日本公開:2004年02月)
リチャード・カーティス ヒュー・グラント リーアム・ニーソン エマ・トンプソン アラン・リックマン コリン・ファース ローラ・リニー キーラ・ナイトレイ ローワン・アトキンソン ビリー・ボブ・ソーントン ビル・ナイ アンドリュー・リンカーン マルティン・マカッチョン ジョアンナ・ペイジ マーティン・フリーマン トーマス・ブロディ=サングスター ルシア・モニス クリス・マーシャル グレゴール・フィッシャー ハイケ・マカチュ ロドリゴ・サントロ オリヴィア・オルソン クラウディア・シファー
「世界は愛であふれている」
プロローグとエピローグに、ヒースロー空港のロビーで再会を喜びハグする人々の姿。
「19人の男女が織りなす9通りの様々な愛の形」とビデオ・パッケージに書かれている。リチャード・カーティスの脚本は脇キャラが濃いから、もっといっぱい出ているような気もする。
ロック・スター(ビル・ナイ)の間抜けなクリスマス・ソング。渡米でモテモテのクリス・マーシャル。英国首相(ヒュー・グラント)とメイド(マルティン・マカッチョン)は「ノッティングヒルの恋人」の男女逆転ヴァージョン。
米国大統領(ビリー・ボブ・ソートン)のキャスティングは、それだけで爆笑もの。エマ・トンプソンとジョニ・ミチェル(「青春の光と影」の新録音CD)、障害者の弟の面倒を見ているローラ・リニーの辛口エピソードが入っているのもいい。
裸でカラミの演技をしている若い男女(マーティン・フリーマンとジョアンナ・ペイジ)はポルノを撮影しているのではなく、大作映画のスタンドイン(ボディダブル)だと、DVDの音声解説で監督が喋っていた。
そして、アラン・リックマン! この人の声が好きだ。この人のセリフはシェークスピアの朗読のように深い。こんな素晴らしい声を聞かないなんて、日本語吹替で映画を見る人の気が知れん。
本作はカーティス本人が監督(初監督らしい)しているので、人物描写が(「ブリジット・ジョーンズ」などと比較したら)とても丁寧。
それぞれのエピソードはシンプルかつ月並みだけど、巧みな構成とバッチリ決まった配役と的を射たポップスBGMの選曲で、見終えたあとはほんわか幸福感に満たされる。クリスマスに絞り込んだ時間設定が決め手。パッチワークの妙技。繋がっているような、そうでもないような、その匙加減が丁度いい。群像劇の秀作。
70点
#2000年代のロマンチック・コメディ
2021/12/24
ホリデイ
THE HOLIDAY
2006年(日本公開:2007年03月)
ナンシー・マイヤーズ キャメロン・ディアス ケイト・ウィンスレット ジュード・ロウ ジャック・ブラック イーライ・ウォラック エドワード・バーンズ ルーファス・シーウェル ミフィ・イングルフィールド エマ・プリチャード
ロサンゼルスとロンドン郊外に暮らす失恋女子2人が、傷心を癒やすため、クリスマス休暇の間だけお互いの家を交換し、それぞれに異国で新しい恋人に巡り会うお話。
脚本・監督は米国のロマコメ・プリンセス、ナンシー・マイヤーズ。
(英国のロマコメ・プリンスはリチャード・カーティスね)
雑誌のコラムニスト(ケイト・ウィンスレット)とハリウッド映画の予告編制作者(キャメロン・ディアス)、ふたりのモノローグがそれぞれの職業に合わせた口調で語られる。泣いてばかりの女と涙を忘れた女の対比。いろいろ工夫されているけど、エピソードのひとつひとつが定番で浅い。ハリウッド業界人が書いたいかにもな軽薄ストーリー。未練がましく付きまとう元彼氏とかいらないだろ。
ケイトとキャメロン、各々の失恋模様を描いた最初の15分が時間の無駄。ライバル意識むき出しの過剰顔芸がウザったい。主演の男女4人が見ていてどうにも厭味ったらしい演技で好きになれない。二人の元カレは論外。ジュード・ロウはご贔屓の二枚目だけど、こんな安っぽい映画に出ちゃいけないよ。ジャック・ブラックはもっとハッチャケてなきゃブラック・ジャックじゃない。老脚本家役のイーライ・ウォラックが登場してなきゃ、途中で見るのやめたかも。ジュード・ロウの娘ソフィーとオリビアが可愛いので、ちょっとだけポイントアップ。
映画のウンチク。パジャマの上下で男と女がデパートで出会う映画は、ゲイリー・クーパーとクローデット・コルベールが出演したルビッチの「青髭八人目の妻」(脚本はビリー・ワイルダーとチャールズ・ブラケットの名コンビ)。ケイトが部屋で見ていたビデオは(ケイリー・グラントとロザリンド・ラッセルだから)たぶんホークスの「ヒズ・ガール・フライデー」。ルイス・B・メイヤーはMGMの社長。ビデオ屋の場面で「卒業」のダスティン・ホフマンがカメオ出演。
ハリウッドが舞台だし、古い映画のネタを埋め込みたい気持ちは分かるが、引用するのならそれらの映画に負けない脚本で作って欲しい。それに「カサブランカ」セリフの件、(ワーナーの許可は取ってあるとは思うけど)脚本家に無礼じゃないかね?
60点
#2000年代のロマンチック・コメディ
2021/12/26
誘惑のアフロディーテ
MIGHTY APHRODITE
1995年(日本公開:1996年12月)
ウディ・アレン ヘレナ・ボナム・カーター ミラ・ソルヴィノ マイケル・ラパポート ピーター・ウェラー クレア・ブルーム オリンピア・デュカキス ジャック・ウォーデン F・マーレイ・エイブラハム
「アニー・ホール」以降のウディ・アレンはどれもこれも全部好き。
とりわけ本作は、ウディ・アレンのベスト5に入れたい。
まったく人生とは皮肉なもの。
信じがたく、奇想天外で、悲しくて、素晴らしい。
どれも真実。
だからこう言おう、あなたがニッコリ微笑めば、世界中が微笑み返す。
忘れないで、あなたがニッコリ笑えば、太陽はいつも明るく輝く。
だから、いつも微笑みを。
70点
#1990年代のロマンチック・コメディ
2021/12/31
ニューイヤーズ・イブ
NEW YEAR'S EVE
2011年(日本公開:2011年12月)
ゲイリー・マーシャル ヒラリー・スワンク ロバート・デ・ニーロ ハル・ベリー ジェシカ・ビール ジョン・ボン・ジョヴィ ミシェル・ファイファー アビゲイル・ブレスリン クリス・“リュダクリス”・ブリッジス ジョシュ・デュアメル ザック・エフロン サラ・ジェシカ・パーカー アリッサ・ミラノ ジェームズ・ベルーシ ペニー・マーシャル
タイムズスクエアのカウントダウン・イベントを主軸に、2011年12月31日のニューヨークを描いた群像劇。メインキャストだけで18名、ワンシーンだけのチョイ役でジョン・リスゴーとかマシュー・ブロデリックまで出ている。NYCのロケ場面多いし、エンドクレジットは10分! よくまあこんな映画作れたなあと、観るたび感心してしまう。
ひとつひとつのエピソードはおざなりだけど、9.11の悲劇を踏まえたうえで、ニューヨークをハッピーな都会に描いたところがポイント。
監督は「バレンタインデー」のゲイリー・マーシャル。
サラ・ジェシカ・パーカーだけは勘弁。
65点
#2010年代のロマンチック・コメディ
2021/12/31
大脱走
THE GREAT ESCAPE
1963年(日本公開:1963年08月)
ジョン・スタージェス スティーヴ・マックィーン ジェームズ・ガーナー リチャード・アッテンボロー チャールズ・ブロンソン ジェームズ・コバーン デヴィッド・マッカラム ハンネス・メッセマー ドナルド・プレザンス トム・アダムス ジェームズ・ドナルド ジョン・レイトン ゴードン・ジャクソン ナイジェル・ストック アンガス・レニー ロバート・グラフ ジャド・テイラー
第2次世界大戦中、ドイツ軍の収容所から連合国軍の捕虜が大勢脱走する話。
最初の出会いは 1971年10月テレビのゴールデン洋画劇場。前後2回に分けての放送で、独立記念日の芋焼酎で賑わっている最中にストーブの下に隠していたトムが発見されアイヴスが射殺される場面で来週に続くという絶妙の構成だった。1973年の大晦日に前後篇が一挙放送された。我が家は紅白歌合戦にまったく興味がない家庭環境だったので当然「大脱走」を楽しんだ。その後もテレビで放送されるたびに観ていたが、銀座文化のスクリーンで観たときに本作がシネスコだったことを初めて知った。レーザーディスクが発売されると「大脱走」は大晦日の恒例行事となった。午前10時の映画祭も行った。これまでに何回観たのか分からない。いま所有しているDVDは6回目の再生になる。
マイ・フェイバリット・ムービー。
75点