2021年 04月(12本)
2021/04/07
或る夜の出来事
IT HAPPENED ONE NIGHT
1934年(日本公開:1934年08月)
フランク・キャプラ クラーク・ゲイブル クローデット・コルベール ウォルター・コノリー ロスコー・カーンズ アラン・ヘイル ウォード・ボンド
フランク・キャプラとコロムビア社を一躍一流に押し上げた大ヒット作。
ロマンチック・コメディの古典、元祖ツンデレ。
バスを降りてからの後半のテンポのよさ。いつ見ても、何回見ても面白い。
(そんなに本数多く見ていないけど)クラーク・ゲーブルは本作がいちばん格好良い。ゲーブルを真似てワイシャツの下にアンダーシャツを着ない男が増え、下着メーカーから苦情があったとか。ヒロインの父親(大富豪)が彼を気に入ったのと同じように、本作のゲーブルは男性客にも受け入れられた。
今回は、横顔は左側からしか撮らせなかったというクローデット・コルベールをチェックしながら見た。やっぱり左からの横顔が多い。が、右のカットも少しだけあった。
DVD特典に入ってたキャプラ・Jrの解説によると、ジェリコの壁は台本になく、コルベールが撮影中に出したアイデアだったという。
製作された1934年は「キング・コング」の翌年。
この映画でも背景に大恐慌時代のアメリカが描かれている。
70点
#ハリウッド映画の巨匠:フランク・キャプラ
#1930年代のロマンチック・コメディ
2021/04/07
オペラハット
MR. DEEDS GOES TO TOWN
1936年(日本公開:1936年05月)
フランク・キャプラ ゲイリー・クーパー ジーン・アーサー ジョージ・バンクロフト ライオネル・スタンダー ダグラス・ダンブリル メイヨ・メソット レイモンド・ウォルバーン ウォルター・キャトレット H・B・ワーナー
アメリカの良心と呼ばれたキャプラ&ロバート・リスキン・コンビの快作。
高級仕立てのスーツが似合う素朴な田舎者なんて難しい役をこなせるのは、ゲイリー・クーパー以外に誰がいる?
前半はスクリューボール・コメディ。恋愛が破局となる展開から、大恐慌時代を反映させた社会派タッチに切り替わる鮮やかさ。
権力者を寄ってたかって茶化して貶めるマスコミの行為は、いまも変わらない。
富める者が貧しい人々に手を差し伸べる行為が異常ととられてしまう状況は、いつの時代にもある普遍のテーマ。
久しぶりに見たが、やっぱりキャプラは良い。
テンポ早過ぎな気がしないでもない。
65点
#ハリウッド映画の巨匠:フランク・キャプラ
#1930年代のロマンチック・コメディ
2021/04/10
我が家の楽園
YOU CAN'T TAKE IT WITH YOU
1938年(日本公開:1939年04月)
フランク・キャプラ ジェームズ・スチュワート エドワード・アーノルド ジーン・アーサー ライオネル・バリモア アン・ミラー ミシャ・オウア スプリング・バイイントン ドナルド・ミーク ハリウェル・ホッブス ダブ・テイラー サミュエル・S・ハインズ ハリー・ダヴェンポート ウォード・ボンド
ジョージ・S・カウフマンとモス・ハートが合作した舞台劇の映画化。
脚色はロバート・リスキン。
木偶の坊ジミー・スチュワートとジーン・アーサーの恋愛をメインに置いたストーリーではあるけど、その周りを囲む騒々しく奇矯な人々が、めまぐるしく動き回り、特に序盤のバタバタした展開が呑み込みにくく纏まりが悪い。
風刺、恋愛、ギャグ、そのどれもがそこそこな仕上がり。キャプラの本音(理想)がそのままセリフになっている印象。全体の造りはあまり良い出来とはいえない。
しかしながら、ライオネル・バリモアとエドワード・アーノルドがハーモニカを吹く場面に、やっぱりキャプラは良いなぁと、しみじみ感動させられてしまう。
毎夜晩飯をたかりに来るロシア人バレエ教師役のミシャ・アウアが面白い。
計算係ドナルド・ミークが作ったウサギの玩具が可愛い。
タイプした原稿の文鎮代わりになってる子猫も可愛い。
他にも賢いカラスとか、子どもダンスのカードとか、花火とか。
小道具、ディティールが面白い映画だった。
65点
#ハリウッド映画の巨匠:フランク・キャプラ
#1930年代のロマンチック・コメディ
2021/04/10
スミス都へ行く
MR. SMITH GOES TO WASHINGTON
1939年(日本公開:1941年10月)
フランク・キャプラ ジェームズ・スチュワート ジーン・アーサー クロード・レインズ エドワード・アーノルド ガイ・キビー トーマス・ミッチェル ユージン・パレット ボーラ・ボンディ ハリー・ケリー H・B・ワーナー チャールズ・レイン ポーター・ホール ジャック・カーソン
「我が家の楽園」に続き、ジェームズ・スチュワート&ジーン・アーサー主演。その他、脇で出ている役者数名がカブっている。「我が家の楽園」と続けて見たから、政財界の黒幕を演じているエドワード・アーノルドに「あんた、さっき改心したんじゃなかったの」と言いたくなった。
義理と良心の板挟みに立ちながら悪役にならざるを得ないペイン上院議員役のクロード・レインズが抜群によい。議長のハリー・ケリーは儲け役だろう。
素朴な田舎の青年が都会に出て大恥をかき、誠実と良心を武器に大逆転するストーリー。
田舎者を馬鹿にしつつ、その無垢なる誠実さに惚れてしまう女性を「オペラハット」と同じくジーン・アーサーが演じている。前作で描かれた財界の舞台を政界に置き換えただけのようにも思える。
ユーモアと恋愛が少なくなって悪役の悪どさが強くなったぶん、シリアスな印象だが、「ポケット一杯の幸福」(「一日だけの淑女」)と同様、ありえない良心が唐突に現れて、どんでん返しのファンタジー。
とは言え、ご都合主義の一言で片付けるのは勿体ないと思わせるのがフランク・キャプラのマジック。斜に構えてバカバカしいと口に出す自分が嫌になる。
理想の夢を見ることの楽しさ、素晴らしさ。嘘話と分かっていながらも、心の底ではそれを欲している。まだそこまで自分はヒネてないぞ、いまでも何処かに純真なものを持っているんだぞ、と。
主人公の主張は真摯な正義のように見えるけど、一方大恐慌時代にあって、失業者雇用対策のダム建設が(悪役の私利私欲が裏にあるとはいえ)子どもたちのキャンプ場に潰されてしまうのは、それはそれで歪んでいるようにも思える。
政治が人情に動かされたら、やっぱりいかんでしょう。
わざわざ田舎から連れてきた伝書鳩は(編集段階でカットされたのか?)活躍の場がなかったね。
日本公開は日米開戦直前の1941年10月。
70点
#ハリウッド映画の巨匠:フランク・キャプラ
#1930年代のロマンチック・コメディ
2021/04/13
赤ちゃん教育
BRINGING UP BABY
1938年(日本公開:1939年08月)
ハワード・ホークス ケイリー・グラント キャサリン・ヘプバーン チャーリー・ラグルス メイ・ロブソン バリー・フィッツジェラルド ウォルター・キャトレット フリッツ・フェルド ウォード・ボンド ジャック・カーソン
なんともエネルギッシュな、ハワード・ホークス監督のドタバタ・ラブコメ。
キャサリン・ヘプバーンの狂騒的なお喋りと行動が、古代生物学者のケイリー・グラントとストーリーを引っ掻き回し、1時間42分を休憩抜きで突っ走る!
脚本はダドリー・ニコルズとヘイガー・ワイルド。
1リットル缶に3リットル分のアイデアを注ぎ込んで、無理と無茶と無謀な試み。
見終わってヘトヘトに疲れてしまい、なにも書く気がしない。
豹(ベビー)をなだめる歌は「I Can't Give You Anything But Love, Baby」。
所有ライブラリを調べたら、ビリー・ホリデイ、ルイ・アームストロングから、コニー・エヴァンス、ソフィー・ミルマンまで、32曲も持ってたわ。
65点
#1930年代のロマンチック・コメディ
2021/04/13
ヒズ・ガール・フライデー
HIS GIRL FRIDAY
1940年(日本公開:1986年09月)
ハワード・ホークス ケイリー・グラント ロザリンド・ラッセル ラルフ・ベラミー ジーン・ロックハート ヘレン・マック クラレンス・コルブ ポーター・ホール ロスコー・カーンズ アブナー・バイバーマン クリフ・エドワーズ
ベン・ヘクト&チャールズ・マッカーサーの舞台劇「犯罪都市」2度目の映画化。
編集長と敏腕記者を元夫婦に設定変更して、ケイリー・グラントとロザリンド・ラッセルによるラブコメ要素を入れたところが本作のポイント。
名前のみ知っていたロザリンド・ラッセルをこの映画で初めて見た。
「赤ちゃん教育」と同様、過剰な早口の応酬でぐったり疲れる映画。
先にワイルダー版「フロント・ページ」が公開されたので、比較して見てしまうのは仕方ない。キレはとオチはワイルダー版が抜群に良い。
60点
#1940年代のロマンチック・コメディ
2021/04/14
フィラデルフィア物語
THE PHILADELPHIA STORY
1940年(日本公開:1948年02月)
ジョージ・キューカー キャサリン・ヘプバーン ケイリー・グラント ジョン・ハワード ジェームズ・スチュワート ルース・ハッセイ ローランド・ヤング ジョン・ハリデイ ヴァージニア・ウェイドラー メアリー・ナッシュ ヘンリー・ダニエル ヒラリー・ブルック
当時流行していたスクリューボール・コメディの1本。
コロムビアでもRKOでもなく、星の数より多いスターを擁していたMGMの製作。監督はジョージ・キューカー。
キャサリン・ヘプバーン、ケイリー・グラント、ジェームズ・スチュワートの豪華三大スター顔合わせながら、精彩に欠け、借りてきた猫状態。特にケイリー・グラントはなに演ってるのか分からん表情。この映画を見てグラントのファンになる人はいない。
作家志望の雑誌記者ジミーも前半は帽子で目線を隠しずっと俯いてばかり。
ヘプバーンは「赤ちゃん教育」の延長にあるような富豪令嬢役だが、あそこまでエキセントリックに弾けていない。3人共に、キャプラやホークスの作品に出演してたときのほうが、十倍活き活きしている。
やたらとセリフが多いのがスクリューボールの特徴だが、即物的なギャグに落とさず、ときおり訓話めいた方向に流すのがMGMらしい。
酔いつぶれたヘプバーンを抱っこしながらジミーは「虹の彼方に」を歌う。
ミュージカルでリメイクした「上流社会」のほうが(サッチモ、シナトラ、クロスビーの歌が聞けるぶん)楽しい。
恋愛ものはラストを結婚式の場面で締めると、それまで退屈だった映画もなんとなく気分良く見終えてしまう。これはシェークスピア時代からの定石。超古典的手法だがいまでも有効。
60点
#1940年代のロマンチック・コメディ
2021/04/14
毒薬と老嬢
ARSENIC AND OLD LACE
1944年(日本公開:1948年09月)
フランク・キャプラ ケイリー・グラント プリシラ・レイン ジョセフィン・ハル ジーン・アディア レイモンド・マッセイ ピーター・ローレ ジェームズ・グリーソン ジャック・カーソン
人情抜き、社会倫理抜き、フランク・キャプラのドタバタ爆笑篇。
原作はジョセフ・ケッセルリングの舞台劇。
コメディを得意としたキャプラの作品中、これが一番笑いが多い。
「我が家の楽園」と同じく変人奇人のオンパレード。
登場人物がやたら多い点が共通。
ギャグの発想も似ている。「我が家の楽園」では地下室の爆発で壁掛けが落ちたが、本作では2階のドアが閉まるたびに時計の針が緩み時報の鐘がなる。
「フィラデルフィア物語」では木偶の坊だったケイリー・グラントも、ここでは水を得た魚のように、縦横無尽の大活躍、変顔(寄り目)も連発。
いつもの3倍はあるだろうキスシーン。
相手はファニーフェイスのプリシラ・レイン。
結婚したばかりではあるのだけれど、顔合わせる度にキスしてる。
結婚反対論者だったグラントが、婚姻届を出しに彼女と役所を訪れている場面から始まる。いきあたりばったりで勢いよく話を転がしていくのがスクリューボールの特徴。結婚嫌いの設定はその場限りで、あとあとのストーリーに絡まない。
ボリス・カーロフそっくりにメイクされたレイモンド・マッセイとピーター・ローレの起用が成功。怪奇映画、サスペンス映画風に撮影された場面に(パロディで笑わせているわけではないのだが)大爆笑。
ジョセフィン・ハルとジーン・アディアの老姉妹が可愛い。
ジョン・アレキサンダーのルーズベルト大統領はちょっとしつこい。
ワーナー・ブラザースなので音楽はマックス・スタイナー。ミッキーマウジングでべったり劇伴を付けている。葬送行進曲と結婚行進曲(ワグナー)はよく似てる。
ファーストシーンが野球場の大乱闘。よく分からない。時事ネタだったのだろうか?
65点
#ハリウッド映画の巨匠:フランク・キャプラ
#1940年代のロマンチック・コメディ
2021/04/22
サリヴァンの旅
SULLIVAN'S TRAVELS
1941年(日本公開:1994年06月)
プレストン・スタージェス ジョエル・マクリー ヴェロニカ・レイク ロバート・ワーウィック ウィリアム・デマレスト エリック・ブロア ロバート・グリーグ ジミー・コンリン アル・ブリッジ フランクリン・パングボーン ポーター・ホール モンテ・ブルー チェスター・コンクリン
大恐慌時代のアメリカ。娯楽派監督サリヴァン(ジョエル・マクリー)は、暗い世相を反映した社会派映画を作りたいと製作会社の重役に駄々をこね、失業者に変装して貧民層の取材旅に出る。「乞食と王子」の映画業界版みたいなアイデア。
序盤はスラップスティック・コメディで、スピーディなカーチェイス、ドタバタが楽しい。旅の途中で女優志願のブロンド美女(ヴェロニカ・レイク)と知り合ってからはロマンチック・コメディ。
クールブロンドのレイクが浮浪者に男装。とても可愛い。一発でファンになっちゃった。
旅先で浮浪者たちの生活が写実的にスケッチされ、身分証明不能でサリヴァンが強制労働所に収容される後半の流れは社会派コメディ。
結局、不況で暗い時代に必要なのは深刻なドラマではなく、貧しい人々に笑いを提供する娯楽映画なのだとサリヴァンは悟る。
脚本のキレが良いから、一時たりとも弛緩する間がない。ホークスのスクリューボール映画ほどの狂騒感はないが、キャプラとは一味違った社会派コメディの快作。
プレストン・スタージェスが突如として脚光を浴びたのは1990年代になってから。
それまで「結婚五年目」(日本公開1948年)と「殺人幻想曲」(日本公開1950年)くらいしか日本で公開されてなかったと思う。
70年代から映画を見ているが、そんな監督さんがいらっしゃったとは知りませんでした。
「サリヴァンの旅」が戦後すぐに公開されなかったのは、不況下の貧困層がリアルに描写されていたから。アメリカの恥部としてGHQが見せたくなかったからでしょう(たぶん)。
長い歳月を経て、パブリックドメインになったP・スタージェス映画が何本もDVDで出ている。素直に嬉しい。
70点
#1940年代のロマンチック・コメディ
2021/04/22
モーガンズ・クリークの奇跡
THE MIRACLE OF MORGAN'S CREEK
1944年(日本未公開)
プレストン・スタージェス エディ・ブラッケン ベティ・ハットン ウィリアム・デマレスト ダイアナ・リン ブライアン・ドンレヴィ エイキム・タミロフ ポーター・ホール アルミラ・セッションズ ジミー・コンリン チェスター・コンクリン
プレストン・スタージェスらしい強引な展開の狂騒コメディ。
騒動の発端が自己中娘(ベティ・ハットン)の無軌道妊娠というのに引っかかって、素直に笑えない。第一ベティは未成年女子に見えない。
偽装結婚がバレて警察沙汰に発展するあたりから、ストーリーは加速する。
クリスマスに六つ子が生まれて、ムッソリーニは退任、ヒトラー激怒の大団円。
馬鹿娘に結婚を強要された挙げ句に無実の投獄、出所してみればいきなり(自分の子種ではない)六つ子の父親になってしまう、悲惨な草食系青年をエディ・ブラッケンが好演。短気な父親役のウィリアム・デマレストとズッコケ芝居を競い合う。
大袈裟に「奇跡」を煽るオープニングは、あざとくて思慮が浅いように感じた。
60点
#1940年代のロマンチック・コメディ
2021/04/29
群衆
MEET JOHN DOE
1941年(日本公開:1951年06月)
フランク・キャプラ ゲイリー・クーパー バーバラ・スタンウィック ウォルター・ブレナン エドワード・アーノルド スプリング・バイイントン ジェームズ・グリーソン ジーン・ロックハート ロッド・ラ・ロック アーヴィング・ベーコンレジス・トゥーミイ
純情素朴な田舎者が権力に利用され、不正に気づき、抵抗したため窮地にたたされる。
「オペラハット」「スミス都へ行く」と同工異曲の社会風刺コメディ。
全米から集まった群衆の前で暴かれる偶像崇拝の虚偽。
混乱する雨の会場、マイク・コードを切断され声を失う主人公。絶望。
自殺予告したクリスマスの深夜、雪が舞う市庁舎の高塔に現れる主人公。
フランク・キャプラのフィルモグラフィでは最も「怖い」作品。
このあとキャプラは第二次世界大戦に従軍して記録映画を撮り、スタジオに戻ってからは社会風刺抜きのドタバタ、ファンタジー、人情喜劇しか撮っていない。
この路線を続けていたら、もはや喜劇にならないと気づいたのだろうか。
英雄にでっちあげられる浮浪者(元野球選手)を「オペラハット」のゲイリー・クーパーが演じる。
これまでジーン・アーサーが演じてきた相手役の新聞記者には、今回はバーバラ・スタンウィックをキャスティング。彼女が捏造する演説原稿が、亡父が遺した日記を下敷きにしていたことで(クーパーと父親のイメージが重なり)恋愛感情に変化がついた。
新聞社を解雇されゴミ箱を蹴飛ばすアクションの素晴らしさ。
個人的な好みは断然スタンウィック!
さらに、ふたりの間に現実派のウォルター・ブレナン(クーパーの浮浪者仲間)を置き、浮世離れした善意と同情のドラマにシニカルな視点を加えたのが巧い。
ストーリーを転がす手際の良さは、あらためて書くまでもない。
キャプラ&ロバート・リスキン・コンビ最高の仕事じゃなかろうか。
クーパーを利用して大統領選挙の立候補を企む悪の総元締めに、キャプラ映画の常連エドワード・アーノルド。体格と役柄が似ているチャールズ・ダーニング、ブライアン・デネヒーより頭一つ抜けた存在感がある。知性ある風格を感じさせるところが良い。
メディアの捏造と暴走はシドニー・ルメットがテレビ業界に舞台をかえて70年代に撮った「ネットワーク」でも扱っていた。インターネットでも(たぶん)同じようなネタの映画がゴロゴロ作られていることだろう。
キャプラはクリスマス映画の王様だな!
75点
#ハリウッド映画の巨匠:フランク・キャプラ
#1940年代のロマンチック・コメディ
2021/04/29
素晴らしき哉、人生!
IT'S A WONDERFUL LIFE
1946年(日本公開:1954年02月)
フランク・キャプラ ジェームズ・スチュワート ドナ・リード ライオネル・バリモア ヘンリー・トラヴァース トーマス・ミッチェル ボーラ・ボンディ フランク・フェイレン ウォード・ボンド グロリア・グレアム
宇宙の彼方、なんとか星雲がチカチカ瞬いて会話している幼稚なオープニング。
ある男の自殺を止めるべく、まだ翼を取得していない2級天使(ヘンリー・トラヴァース)が派遣されることになり、主人公(ジミー・スチュワート)の生い立ちが紹介される。
人生の転機でいつもツキに見放され、それでも誠実に生きてきた主人公に最大級の不幸がやってきたクリスマス・イブ。
大金を置き忘れた叔父(トーマス・ミッチェル)を罵倒し、悪役(ライオネル・バリモア)に平身低頭で借金を請い、断られると、まだ幼い子供たちに八つ当たり、学校の先生にも八つ当たり。パブで酒に酔い喧嘩沙汰。飲酒運転で他所様の松の木に車をぶつけ、家主に注意されると悪態をついて逃げ去る。みっともないったらありゃしない。
にっちもさっちもいかなくなり、投身自殺を考えているところへ、先の2級天使が現れる。虚構の世界をみせられて現実のありがたさを認識した主人公は現世に戻り、最後はキャプラ十八番、善意のオチでハッピーエンド。
テーマは「情けは人のためならず」。
少年時代の主人公が薬屋の親父に(耳から出血するほど)殴られるシーンがリアルに撮られていて痛々しい。青年時代のパートがけっこう長くて、ジミーが大学進学を志す年齢に見えないのがつらい。
良妻賢母なドナ・リード(好演だけど)は都合よく配置されたキャラクター。
展開がどうにも野暮ったい。
2級天使を狂言回しに置いているせいで、主人公への共感、感情移入が希薄になった。
脚本はフランセス・グッドリッチ、アルバート・ハケット、フランク・キャプラ。
やはりキャプラは、リスキンとのコンビで撮っていた時期がピークだったろう。
キャプラのキャリアにあって、出来は中の下あたり。
それでも、見たあとしばらく幸せな気分になれるのはクリスマス映画だから。
「オールド・ラング・サイン(蛍の光)」の魔法です。
友のある者は敗残者ではない。翼をありがとう、クラレンス。
キャプラはクリスマス映画の王様だな!
65点
#ハリウッド映画の巨匠:フランク・キャプラ
#1940年代のロマンチック・コメディ