台本書きの鬱

この日記のようなものは、すべてフィクションです。
登場する人物、団体、裏の組織等はすべて架空のものです。ご了承ください。

台本書きの鬱

June 27, 2003

台本書きって、けっこう孤独を強いられる作業みたいで、特に制作されるアテもないオリジナルをシコシコ書き続けていると次第に「鬱」になる人、多いみたいです。

台本書きに限らず、何らかの創作をやっている人は、「無」から自分自身の才覚一つを頼りに「価値あるモノ」を創り出そうとしているわけで、いわば現代の錬金術師と呼んでもいいかも知れません。
ちょいと視点をズラすと、山師とか詐欺師とあまり変わりないようにも思えます。
シナリオや小説などの創作は、元手のかからない「言葉」を使って「価値あるモノ」を創り、売り込んでいるわけで、ほとんど詐欺師みたいなものです。
(実際は参考資料を買ったり取材に出掛けたりと、けっこうな時間と銭を注ぎ込んだりしてますけど)第三者的な視点で距離をおいてみると、そういう捉え方もできると思います。
衣食住に必須なモノを創っているわけではないですからね。

「無」から「価値あるモノ」を創出させる、しかも言葉を使って……これはやってみるとすぐに分かりますが、自分がすべての創造主=神となってはじめて出来る行為なのであります。
原稿用紙に、「広大な宇宙空間」と書きます。するとそこには広大な宇宙が現れます。 「純子は潔を殴る、潔の鼻から血が流れ出る」と書きます。すると登場人物は書かれた通りの行為を行います。
場所も人物もその行為も、己の思うがまま。
この場面は宇宙空間ぢゃなくてアパートの一室のほうがいいな、と思ったら、書き直せばその場所が設定されたことになります。天上天下唯我独尊。作者=神の誕生です。
しかも、それがドラマや映画、舞台の台本であった場合、スタッフによって実際に宇宙空間が作られ、生身の役者さんが実際に書かれている通りの言葉を喋りったり、行為を行ったりするのです。
かなりの快感が味わえます。 無意識に、自分を神と勘違いしてしまう人も出てきます。
なんとかと作家は三日やったら止められない。
(長くやっていると錯覚だってことに気付きますけどね)

それと、これはコンクール出身の作家さんに多いのですが、
数多くの応募者の中から私だけが認められた。自分は選ばれた人間なのだ。他の落選した人よりも私は優れているのだ。みたいなエリート意識を持っている人、多いです。
さらに、それが下積みが長かった人の場合は、
作品が評価されているのを、自分(個人)が誉められているのと勘違いされるようです。

コンクールの審査をしている人は、応募してきた作品でしか作者を見ることができません。
応募作を書き上げるまでの苦労や努力なんか、分かりようがありません。
時折、登場人物=作家自身がモデルと分かる私小説的な作品もありますが、それとて評価の対象となるのは作品であって、応募した人ではありません。
(審査員と応募者が個人的に親しかった場合を除く)

常識に欠け、社会適応性のない人であっても、作品が優れたものであれば、それは正当に評価され、コンクールでも入選するでしょう。

太宰治が評価されているのは、太宰という作家が書いた作品が評価されているのであって、彼の人生が評価されているのではない。

下積みの長い作家志望者には、太宰治のファンがけっこういらっしゃるようです。
幾度となく心中・自殺を図り、紆余曲折の人生を送った太宰の姿に、苦労に努力を積み重ねて日々物書きに精進し続ける自分の姿をダブらせて、自己陶酔されているような人が、大勢いらっしゃいます。
自殺未遂や心中未遂を頻繁に繰り返している人は、うんざりするほどいます。
家族から勘当されたり、獄中生活を経験した作家さんは数え切れないくらいです。
その中から太宰治がクローズアップされるのは、彼が書き遺した小説が評価されているからでしょう。
結局は作品なのです。

この作品への評価と、作者個人との距離感のバランスが取れていない人は、周囲に迷惑を及ぼすことが多々あります。

本質的に、モノ書きやっている人は、
(個人の創作物を不特定多数の人たちに提示するという行為でも分かるように)
自己顕示欲の強い人であり、
(他者からの評価を日常的に気にしている)
自意識過剰な人でもあります。
(また他の作家と比較されることが多いことから)
常に特別な存在(ワン・アンド・オンリー)であろうとしています。

これらのことは、作家なら誰にでもあることで、それ自体が悪いことではありません。
創作意欲を高揚させるためにも不可欠だと思われます。
問題なのは、作品を離れ個人として他者と接する場合にも、そのような自己中心の考え方しか出来ない困った人も多いということです。

久しぶりに青っちょろいこと書いて、とても恥ずかしい。それに……
俺自身、もう飽きちゃったので、これでおしまい。

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