soe006 「ワイルド・マン・ブルース」

「ワイルド・マン・ブルース」

September 25, 2003

ニューオーリンズ・ジャス・パンドを率いて23日間、ヨーロッパ18都市を巡る演奏旅行に出たウディ・アレンを追ったドキュメンタリー・フィルムです。

これが、アハハハ……いつものウディ・アレンの映画とまったく同じ。

神経質で挙動不審な身振り手振り、ペシミスティックな毒舌。
いつも彼が自作で演じているキャラクターと、プライベートのウディ・アレンが……

完全に同一人物なのが面白い。

欧州に向かう自家用機での、神経症的な「犬が嫌い」の会話から絶好調。アレン節が全開バリバリ!
最初の演奏会場はマドリッドなのに、いったんパリで一泊してヨーロッパの空気に馴染んでからでないと気分が悪いとか……ドキュメンタリーってこと忘れてしまうくらい、映画(フィクション)と同じ。<仕込みのネタだと勘ぐっちゃうくらいに同じなんですよ。
いや、キャタクターだけぢゃなくって……もともと彼の映画ってハリウッドの方法論に則していないドキュメンタリー手法で作っているから……短いエピソードの積み重ねを編集したこの記録フィルムも完璧なまでにウディ・アレンの映画になっちゃってるの。

監督はアカデミー賞の記録映画部門で2度の受賞歴があるバーバラ・コップルという女性。
(他の作品を観ていないのに結論だすのは乱暴だけど)
監督固有の視点とか個性とかは、ぜんぜん感じられない。
やっぱ、いつものウディ・アレンの映画なんだ。

このツアーに同行しているのは、ミア・ファローとアンドレ・プレヴィンが養子にしていた、あの問題のスン・イー・プレヴィン。
二人の関係は『マンハッタン』のアレンとマリエル・ヘミングウェイを思い出させるし、宿泊中のホテルに母親から国際電話がかかってきたときの表情&対応も『ニューヨーク・ストーリー』の第三話にそっくり。
演奏中に会場が停電して、ミラノの消防署から感謝状を貰うエピソードは『ラジオ・デイズ』みたいだし、ロンドンでの最終公演を前に風邪をひいてベッドでゴネる場面なんて、いままで何度も見せられてきた、あのお馴染みの神経症に悩むウディ・アレン。
ニューヨークに帰ってきてから両親にお土産を持参するエピローグ。母親のダイアローグでばっさり終わらせる手際もアレン映画そのもの。

肝心の演奏は飛び抜けてスゴイ、ってなものではないけど、
素人芸とは一線を画した立派なディキシーランド・ジャズでありました。少なくともミッキー・ロークのボクシングよりはプロフェッショナルな芸であります。

音楽は彼らの演奏の他に、『甘い生活』や『アマルコルド』などフェリーニ映画からニーノ・ロータの映画音楽を流用していて、もしかしたら、これはウディ・アレンの『8 1/2』なのかも……と思っちゃったりもする。

ウディ・アレンの映画が大好きで、いままで10本以上観ている方には、両手を拡げてお薦めできる面白さであります。

soe006 ウディ・アレン 関連ページ
ウディ・アレン 「マンハッタン」(2007年10月02日)
ウディ・アレン 「アニー・ホール」(2007年09月24日)
ウディ・アレン 「ボギー!俺も男だ」(2007年09月15日)
ウディ・アレンの音楽(2004年02月04日)
「ワイルド・マン・ブルース」(2003年09月25日)

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