soe006 絵に描いた餅について論じる

この日記のようなものは、すべてフィクションです。
登場する人物、団体、裏の組織等はすべて架空のものです。ご了承ください。

絵に描いた餅について論じる

May 7, 2006

「君子は怪力乱心を論ぜず」というけど……

バーナード・ハーマンとか、レオポルド・ストコフスキーとか、モーリス・ラヴェルとか。これにギル・エバンスを加えて……
私は魔術師と呼ばれている人が、つくづく好きなのだな。

ということで、
今日はファリャの「恋は魔術師」(指揮はもちろんストコフスキー!)を聴く……つもりだったのですが。

昨日、地元の画家・大石琢身さんの個展に行って来た母親が、
とても素晴らしい、感動した、描かれていた風景が夢にまで現れた。今日までだからあんたも行ってきなさい見てきなさい、すぐ行きなさい、今すぐ行きなさい、さっさと行きなさい……と何度もしつこく繰り返すので……行ってきました、永文堂ギャラリー。

大石さんの絵(油彩)は写実的で、素直な筆致が清々しく、奇を衒わない上品で鮮やかな色彩。大石さん御本人が「これ、家の近所です」と説明してくださった、真木天満宮の大藤の絵は、描かれた風景の向こう側から、爽やかな薫風が匂ってきそうな気配が感じられました。
母親の感想に付け加えることはありません。
美しいものを美しく描く。それをストレートに表現できる感性とお人柄に、感服いたしました。

もっと早くに知っていたら、単独サイトを立ち上げて、ネットで宣伝させていただいたのに。

で、帰り道、自転車を漕ぎながら、唐突にアタマに浮かんだ言葉が、
絵に描いた餅

見かけはどうあれ、しょせん絵に描いた餅。腹の足しにはならん、現実的価値はない。
ところが、これが狩野探幽が描いた「餅の絵」だったらどうか。
現実の餅よりも「探幽の餅の絵」のほうが、はるかに価値が高いのでは……という、河合隼雄先生の論。
最初から、食い物と絵を比較するのが間違っているわけで、それを違う土俵に置き換えただけの話。論点のすり替え、詭弁なのでありますが……このような比較すべきでないものを無理矢理に比較して、だから○○はダメなんだ、と単純に断定する場面は、現実に多く見受けられます。

「やっぱりドラマはドキュメンタリーには勝てないよ」

これは、某日本最大級放送局のプロデューサーのお言葉。
いま面と向かってそんなこと言われたら、逆さに吊して尻を剥き出し、菊の一輪挿しにして床の間に飾るところですが……当時の私は、お仕事欲しい症候群に冒されてまして、ゴキゲンを損ねたらさぁタイヘン、その場では何も反論しませんでした(出来ませんでした)。
そりゃ、某巨大放送局に限らず、公共の電波を使用するすべての放送局の本分は報道にあり、番組ランクは、報道(ニュース)>情報>娯楽(ドラマ)なのは重々承知しております。現実に、報道・情報番組は実用的で飯のタネになります。
一方、面白可笑しく描いた餅の絵は、世間話のネタにしかならない。

国政選挙があると全チャンネルが速報番組になるのが、その証拠。
なかには娯楽番組を放送したい民放局もあるかも知れませんが、それやると視聴者を他局に取られてしまう。いや逆に、政治無関心層がこぞって流れるので数字はあがるのでは? しかし脳天気なおバカ局と批判されてしまうのは必定。諸刃の剣。

そもそもフィクションの源流は……西のシェイクスピア、東の近松。更に聖書、仏典、コーラン、ギリシャ神話、古事記、日本書紀……文字さえ存在しなかった時代にまで遡ります。

昔々、中国偉人は言いました。「君子は怪力乱心を論じず」

しかしですね、先に挙げた数々の超古典は、奇跡、怪物、超能力、天変地異のオンパレード、作り話以外のなにものでもないではありませんか。
人類が実利だけで発展してきたのであれば、これら超古典は雲散霧消していてもよいはず。
なのに何故に、今日まで読み継がれ語り継がれてきたかというと……
面白いからに他ならないわけで……

ああ、本日もやっぱり長くなってしまった。
この続きは、また今度……

絵に描いた餅について論じる:補足

May 13, 2006

ずいぶん間が空いてしまって申し訳ございません。
前回ご紹介した大石琢身さんの個展の感想を、少しだけ補足。

この度の大石さんの個展は、原りょうさんをはじめとする、小学校時代の同窓生の方々が協力して開催されたもので、会場ではそれらしき年配の方が応援にみえられていました。
その雰囲気が、とてもいいんですね。
五十余年の歳月によって、育まれた人間関係。

この、幼なじみの友情ってやつに、弱いんです。
私には、小学校、中学校時代の人たちとの交流が、まったくありませんから。

原さんは、いつお会いしてもニコヤカで……
著書やプロフィールから、シリーズの主人公である沢崎とイメージをダブらせている人も多いですけど、気さくで人当たりは柔らかく……ああ、こんな人格者に、私もなりたい。

さて、ストコフスキーの「恋は魔術師」ですが……
パソコンの調子の良いときに、また改めて書くことにします。

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