soe006 超個人的趣味の日本映画ベスト5

超個人的趣味の日本映画ベスト5

October 30, 2006

唐突ですが……超個人的日本映画ベスト5の発表です。

いったいこのサイトの作成者はどんな映画が好みなのか?
あれもこれもと(アマゾンで買わせようと)褒めまくって(リンクを貼りまくって)いるのだけど、実際はどうなのよ。
貴様の本音はどこにあるのさ?……と疑問をお持ちの皆さんに、ウソ偽りのない正直な嗜好を、素直にご披露しようというのが、本日の趣向であります(←シコウとシュコウをかけて、洒落てみました)。

とはいえ……何本観ているか、数えてないから分からないけど、たぶん膨大な数の日本映画の中から、ぽっきり5本を選出するなんてこと、出来るわけがない。

よく雑誌なんかで、「無人島に持っていく1枚のレコード」みたいなアンケートやってますでしょう。あれ、1枚きりなら何も持っていかないほうがマシなんじゃないかなあ、とか思っちまうんですね。
残してきた他のレコードが気になって、選んだ1枚を恨みたくなる。
なんでこんなの選んだろうって自己嫌悪に陥る。
だったら、なにも持っていかなくって、脳内再生でいろんな音楽を愉しんだほうが、精神衛生上よろしいんじゃないでしょうか。

で、ベスト5なんですが……

こんなもん、ぜんぜんベストじゃないっすよ。
黒澤だけで5本選んでも足りない。小津安二郎なら、サイレントで5本、トーキーで5本選びたいところ。
それに、溝口、成瀬はともかくとして、木下恵介も市川崑も、今村昌平も深作欣二も入ってない。
こんなベスト5、絶対に認められるかあー!

第1位 『丹下左膳餘話 百萬兩の壺』(1935年)
へっへっへっ、これが1位なら文句あるめえ。
クライマックスのチャンバラ場面がフィルム消失で見られないけど、それでも充分に第1位の面白さ。なんだかんだ理屈並べたって、これに敵う映画なんて(外国産を含めて)そうザラにあるめえ。
現存する山中貞雄監督の映画は3本だけですが、『河内山宗俊』(1936年)、『人情紙風船』(1937年)と比べて、アッケンカランとした明るさがあるのがいい。左膳(大河内伝次郎)とお藤さん(喜代三)のサッパリした男女関係もいいけど、沢村国太郎のノホホンとした人物造形もいい。『鴛鴦歌合戦』でも可愛かった深水藤子は、やっぱり可愛いし。テンポの良さ、語り口の巧さは、ハリウッド製コメディを凌駕していると思いますです。日本映画が、最もモダンなセンスを持っていた時代の作品ですね。
うららかな春のような映画。最高でございます。

第2位 『用心棒』(1961年)
お前は以前、黒澤の最高傑作は『どん底』だって言ってたじゃないか。
いや、あれはあれで素晴らしいと思いますよ。『七人の侍』だって『生きる』だって、なんなら『赤ひげ』でもいいし、『蜘蛛巣城』も勿論いい。
黒澤は傑作が多いから、1本だけ選ぶなんて無理。もっとも黒澤らしい映画、黒澤にしか作れなかった映画は『生きものの記録』だと思うし、だから、それでもいいんだけど。
後年の活劇映画へ与えた影響(その他、劇画などのサブカルチャー全般に与えた影響)の大きさから、今回は『用心棒』を選んでみました。カリカチュアライズされたヤクザたちの造形が面白いです。
明日になれば、『野良犬』を選んでいるかも知れませんけど。
シネスコの構図を使ってギャグをやってるところに、黒澤のゆとりが感じられます。

第3位 『ああ爆弾』(1964年)
岡本喜八&佐藤勝による最高のミュージカル・コメディ。
この映画を(池袋文芸座のオールナイトで)初めて観たときの衝撃は、忘れられないっす。こんなにも面白い映画が日本にあったなんて、俄に信じられないくらいの驚きだったですよ。追いかけました。(「ぴあ」や「シティロード」で調べて)浅草東宝のオールナイトや都内の名画座で上映される度に、(仕事サボって)観に行きました。
原作はコーネル・ウールリッチのサスペンス小説「万年筆」らしいのですが、(けっこう探したのに見つからず)未読。でもいいんです。映画は、(黒澤の『天国と地獄』と同様)原作のアイディアだけを借用して換骨奪胎、まったく別物になっていると思いますから。
日本でミュージカル映画は無理、と決めつけている人の100パーセントが、この映画を観てないと思いますね。(興行は惨敗だったらしいし)
岡本喜八も好きな作品が多すぎて、『独立愚連隊』、『殺人狂時代』、『ダイナマイトどんどん』、『ジャズ大名』などなど……最後まで候補に残っていたのが『肉弾』と『日本のいちばん長い日』だったのですが、ユニークな作品揃いの喜八映画の中で、ダントツに奇抜だと思えたのが『ああ爆弾』でした。

第4位 『次郎長三国志』シリーズ(東宝版・1952〜1954年)
マキノ雅弘は、1955年に日活で2本(『次郎長遊侠伝』シリーズ)、1963年から東映で鶴田浩二版シリーズ(4本)、他に中村錦之助主演で『若き日の次郎長』シリーズなど、次郎長ものは何本撮っているのか数え切れないほど作っています。どれも快作ぞろいですが、やっぱり東宝版が活きが良くって味があって、キャスティングも完璧。素晴らしいです。喜八郎時代の岡本喜八が助監督を務めていたのがポイントかも。
村上元三の原作小説は、登場人物の名前を副題にした連作短編の作りになっていて、お話の結びに素敵な面々が一人、また一人と新しく登場。そいつが次のお話の中心となって活躍する、いわばリレー形式で次郎長一家28人衆が出来上がってゆく過程が描かれています。映画版もそれぞれ個性豊かな役者が次々と現れて、大活躍。飽きさせません。皆さんそれぞれに愉快で魅力的、素晴らしいのですが、やっぱり、ももも、もも、森繁の、い、いい、石松が一番人気。だから、原作をはなれてオリジナル脚本で作られた第8部『海道一の暴れん坊』は、森繁石松が主役になっちゃった。この頃の森繁久彌は絶妙に巧いっす。
浪曲師の広沢虎造扮する張り子の寅は、映画のオリジナルで、ちょっと余計かなと思うんだけど、当時の人気は絶大だったから出さざるを得なかったんでしょうね。シリーズ後半になると出番はほとんどありません。
(ああ、マキノの『次郎長』シリーズについて書き出すと長くなるわ。続きはまた改めて……)

第5位 『天空の城ラピュタ』(1986年)
宮崎駿の作品でストーリーが破綻していないのは、『カリオストロの城』と『ラピュタ』だけ。どっちにしようか、3秒ほど迷ったけど、キャラクターがオリジナルで、空想趣味が濃厚なこちらを選びました。
冒険また冒険、血湧き肉躍るノンストップ大活劇。
テレビアニメ『未来少年コナン』の焼き直し?
そりゃまあ、そうなんだけど……いいじゃないですか、面白いんだから。

次点 『生まれてはみたけれど』(1932年)
なんで小津が宮崎駿の後なんだよ。なんで『生まれてはみたけれど』なんだよ。なんで『東京物語』じゃないんだよ。なんで木下恵介が挙がってないんだよ。なんで市川崑を無視すんだよ。なんで?
なんで? なんで?
なんで?

こうやって並べてみると、どうも日本映画っぽくない映画ばかり選んでしまったような気がします。
そのうち機会を改めて、もう一度選ばせてください。

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丹下左膳餘話 百萬兩の壺
用心棒
ああ爆弾
天空の城ラピュタ
生まれてはみたけれど
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