1900年のパリ、名物キャバレー「赤い風車」を舞台に、薄幸の踊り子と戯作者の悲恋を描いた、製作費5000万ドルの絢爛たる超豪華スペクタクル・ミュージカル。
豪華な上に豪華を重ねた超豪華な美術とデラックスな衣装、ヒット・ポップスで全編を賑やかに囃し立て、仕上げにデジタル合成のCGでゴテゴテ飾りつけた、これでもかっ!ってほど贅沢を尽くした、徹頭徹尾、まじで圧倒される悪趣味映画の決定版。
アレクサンドル・デュマの「椿姫」とプッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」をこねくり回してでっちあげた、古典的かつ安っぽいストーリー。エリック・サティやロートレックなど実在の人物も登場する。
以前、NHK-BSで放送されたとき、冒頭の20分くらいで(クラクラして)観るのをやめた。太閤秀吉の黄金の茶室なぞ鼻で笑う。吉原全部を貸し切って豪遊したという紀伊国屋文左衛門でさえ、もう少し分別のあるお金の使い方をしたのではあるまいか。
すべてにおいて過剰なあまり、世紀末のデカタンスなパリの香りも、薄幸美女の悲劇も、パーッと吹っ飛んじゃって、なにがなんだか分からんままに2時間が過ぎてゆく。
主演はニコール・キッドマン(踊り子)とユアン・マクレガー(戯作者)。歌は吹き替えでなく、本人歌唱を同時録音で収録したとのこと。ふたりともうまい。
しかし、ダンス場面は細かいカット編集で、さらにポスプロでCGなどの視覚効果を合成している。スピーディでかっこいいし今風なのは認めるが、ミュージカル映画は役者のダンス(芸)を楽しみたいという、昔ながらのファンには嫌われるだろう。
そのあたりはバズ・ラーマンもしっかり自覚したうえで、バッサリ切り捨てている。選曲されているのがMTV以降のヒット曲中心でしょ? 「愛と青春の旅だち」や「ボディガード」を観たことある人たち、その世代をターゲットに作った。MTVの懐メロ特集デラックス版だ。
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