深く静かに潜航せよ|映画スクラップブック


2020/06/14

深く静かに潜航せよ

深く静かに潜航せよ|soe006 映画スクラップブック
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RUN SILENT, RUN DEEP
1958年(日本公開:1958年05月)
ロバート・ワイズ クラーク・ゲイブル バート・ランカスター ジャック・ウォーデン ブラッド・デクスター ニック・クラヴァット メアリー・ラロシュ ドン・リックルズ

第二次大戦中の豊後水道。日本軍の駆逐艦に自艦を撃沈されたリチャードソン海軍中佐(クラーク・ゲーブル)が、新たな潜水艦ナーカ号の艦長として就任。しつこいくらいに戦闘訓練を強いて乗務員たちに不満が募るものの、副艦長ブレッドソー大尉(バート・ランカスター)が間を取りなして叛乱に至らず。遺恨残る敵艦目指して豊後水道へ向かい、激しい戦闘を経て勝利する。

米海軍中佐エドワード・L・ビーチの体験にもとづく原作の映画化ということだが、この映画で描かれたような海戦は戦史になく、完全な創作。悪役の「秋風」は実在した帝国海軍の駆逐艦で、たしかに潜水艦に撃沈されているのだが、場所は南シナ海だった。そもそも米海軍の潜水艦が豊後水道に潜入して戦闘したことなど、あったのだろうか?

軍法会議は覚悟の上、軍の司令を逸脱して、復讐心で第7エリア(豊後水道)へと進路を取る艦長とか、まるで「白鯨」のエイハブ船長で、漫画みたいに嘘くさい話だ。乗務員たちが副艦長を立てて謀反を企むあたりは「バウンティ号の叛乱」からの借用じゃないの?
クラーク・ゲーブルの艦長がどうにも煮えない役どころで、乗組員たちの不信感やバート・ランカスターの副艦長に同調して良いものかハッキリしない。結果、敵の駆逐艦や潜水艦をやっつけてしまったから、彼の行動は正しかったって事に落ち着くんだけど。どうもスッキリしない。
そもそもなんで艦長は正面から艦首を狙う攻撃にこだわるんだ? 当たりにくいし、逸らされやすいし、外したら即時反撃されるのに。

まず冒頭の負け戦で、自艦を大破されたリチャードソンが、捕虜にもならず、豊後水道からパールハーバーまで、どうやって逃れられたのか分からない。そのことがずーっと気になってた。何か裏設定が(脚本に)仕掛けてあるんじゃないかって。

映画は米国海軍の協力を得て製作されているので、潜水艦内部のセットは本物の潜水艦を使ったと思われる。ローキーでモノクローム撮影された艦の機械や設備はメタリックな実在感があってよかった。戦争映画はこういった細部のリアリティも大事です。
船が爆破炎上沈没するところなど海上の戦闘はミニチュア撮影。敵の駆逐艦が日本海軍の船に見えないデザインだったり、その乗組員が中国人のような日本語発音だったりするのはご愛嬌。
監督がロバート・ワイズということで期待したが、ストーリーがご都合主義に過ぎるし、米海軍ばかりヒロイックに描かれているのが癪に障る。戦時中に製作された国威発揚プロパガンダ映画みたいに、日本軍を卑怯野蛮に描いていないだけマシか。

出撃時にピンナップ・ガールのお尻を触るオマジナイが、いかにも米国海軍らしくておもしろかった。

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