1969年7月16日、人類初の月面歩行を果たした宇宙飛行士ニール・アームストロングの半生を、1961年(ジェミニ計画)から1969年(アポロ計画)にかけてのNASAのミッションをとおして描かれる。 ジェームズ・R・ハンセン原作「ファーストマン:ニール・アームストロングの人生」の映画化。監督は「セッション」「ラ・ラ・ランド」の(どことなくインチキ臭い)デイミアン・チャゼル。
娘の死をきっかけに月へ行くことに執着するようになったニールの静かな狂気が、暗いタッチで地味に、ひたすら地味に描かれている。
特撮に大金をかけ凝った絵作りしているわりにスペクタクルの高揚感はなく、「ライトスタッフ」や「ドリーム」のようなカタルシスは味わえない。
娯楽性を排した哲学アートな仕上がりは、やっぱり(どことなくインチキ臭い)デイミアン・チャゼルらしい。
もうずっとむかしに立花隆の「宇宙からの帰還」(中公文庫)を読んで、それが強く印象が残っていたから、宇宙から帰還した飛行士たちが精神的・心理的に変調をきたし、退役後に宗教やスピリチュアルなものにのめり込んでいったりするのは目新しくもなく、素直に納得できるものの、それを何故、いま映画化するのか?
アメリカで興行がコケたのは、多かれ少なかれ国民が誇りに思っている20世紀の偉業を、個人レベルの心理ドラマに矮小化したためだろう。
月面に星条旗を立てるショットを意図して外したり、悲観的な(帰還後に奥さんと対面する)ラストシーンで映画を締めくくったり、この監督、若造のくせに思い上がりも甚だしい、といったところ。
映画作りは上手いけど、テーマの掘り下げ、題材の捉え方が薄っぺらい。
点